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企業理念と8原則--社長の条件(2)

2005/02/27
企業理念と8原則--社長の条件(2)

「社長の条件」といえば、この種のセミナーは多いし、書籍も多数存在する。
内容は重複しているだろうが、私が思うところの「社長の条件」を列記してみよう。
当社のような零細な企業を継承する社長という前提があるので、一般的ではないかもしれない。ままよ、思いつくままに、書くことにする。ここに書くことは、後で訂正したり削除したり追加したりすることにもなるかもしれない。
1.当社の企業理念を継承する者であること
当社は、設立に当たって「最新の科学技術を万人のために」というスローガンを掲げた。生意気なスローガンだが、ささやかとはいえ、その目的に沿った活動をしてきたと自負している。このスローガンは当社の企業理念を示している。この理念を継承する者は、手段方法が違っても当社の社長になる資格の一つを持っていることになるだろう。
逆にこの理念以外の企業理念を持つものは、別の新会社を設立すべきだろう。よくも悪しくも、当社はこの理念の下に顧客も協力会社も支援者も集まっている。企業理念を変えれば、これらの資産を活用することは困難であり、むしろイメージを一新した新会社を立ち上げるほうが有利となるに違いない。従来の企業理念をよりよく実現しようとするならば、現有の資産(顧客、協力会社、支援者、・・・)は大いに役立つに違いない。
該当者が多ければ、よりよく実現する者が後継者に選ばれる公算が高くなる。
2.人品高潔なる者であること
「人品卑しからざる者であること」と言い換えてもよい。私生活と公的活動の全体にわたって、教養に満ちていて、品性があり、私利私欲に堕することなく、社会と集団に貢献することを優先する者であることである。品性は「人望」にも通じるが、腕力が強く、私利私欲のために他人に服従を強いることがしばしば「人望」と間違われる。声が大きく腕力が強いだけでは、一時的な発展は望めても、たちまち世論に押されて社会から抹殺される。これからの時代の経営はますます民の声を大切にしなければならなくなる。人品高潔にして人望のある者はもっと望ましい。
該当者が多ければ、人品においてより優れた者が後継者に選ばれる公算が高くなる。
3.人の心を理解する者であること
企業である以上、営業は大切である。営業のできないものは社長の条件を満たさない。
営業の極意は、小手先の駆け引きにあるのではない。顧客の話を理解する能力にあるのである。しかし、「顧客の話を理解する」だけでは営業に成功しない。顧客は、専門用語を正しく操ることはできないので、事柄を正確に表現していることはほとんど皆無である。したがって、「顧客の話を理解」しただけでは、顧客の望むことは何も分かっていないのである。営業の現場で、「お客さんがこう言ったから、そのようにしました」と説明して顧客が怒り狂う場面は多い。顧客の思慮の不足、途中での心変わりも大いにありうるが、顧客が希求することを聞き手が理解していないため発生するトラブルは多い。顧客の話を理解するだけでは不足である。顧客の心を理解しなければならないのである。顧客の心を理解していれば、顧客がいつ、何をきっかけで心変わりするかも事前に予想できるものである。顧客の思慮の不足を顧客の望むことに沿ってそれとなく補って理解を助けることもできるようになる。結果として、顧客の希望しないものを作ってしまうというトラブルをかなり減らすことができる。
「人の心を理解する能力」は、仕事に関わるすべての場面であまねく必要である。社内の同僚や部下の話(言葉尻)だけを捕らえて行動を起こせば期待はいつもうらぎられるだろう。社内の同僚や部下の言っている言葉の影にある本当の心を捕まえられなければ社長の条件を満たさない。社長に必要な能力として「人心の掌握」をあげる人は多い。人心の掌握とは、「人の心を理解する能力」によって始めて実現できるのである。「クビ」や「賃金切り下げ」などの権力を振りかざす脅しや、言葉の暴力や、社内いじめによって他の役員や社員を服従させようとする経営者も世の中には多いが、これらの経営者は、いずれ惨めなクーデターに遭遇するだろう。
人の心を理解する人は、職場に向かない人に向かって「あなたは別の職場を探したほうがよい」と語っても本人から反発を受けることは少ない。逆に人の心を理解するところが少ない人が、同じように語りかけたら、本人からは大反撃を受けることになるだろう。
社長になる人は、顧客だけではなく、同僚や部下の心も理解することが必須である。もちろん社外の協力会社や協力者の人の心についても同じである。
該当者が多ければ、人の心を理解するところがより多い者が後継者に選ばれる公算が高くなる。
4.「入りを増やして出るを減らす」者であること
当たり前のことであるが、企業は利益を出さなければ存続しない。理念を守るためには利益を確保しなければならない。利益のために理念を曲げることは本末転倒であるが、理念ゆえに利益が出ないならば、その会社の歴史的使命は終わったのである。会社を解散して、別の理念のために別の新しい会社を創出したほうが良い。
理念のために、会社の利益をよりよく確保する者が社長になりうる大切な条件であることは言うまでもない。利益をだすには、古来「入りを増やして出るを減らすこと」であるといわれてきた。単純明快である。売り上げを伸ばして、コストをぎりぎりと下げ続けることである。油断すればコストは上昇し、顧客はいなくなる。たちまち会社は経営難となる。たとえば、雑用係や下働きを必要以上に身の回りに配したがる経営者もかつてはいたが、人件費の無駄遣いである。有能な社長は自分のことは何でも自分でやってのける。中小の優良な企業では便所掃除もお茶汲みもやる社長が多い。営業に努めて顧客を増やさなければ、顧客は年々減少する。サービス業においては、年度を越えて継続して顧客となる相手は努力しても平均して8割程度である。ほうっておけば、3年で売上げは2分の一になってしまう。新規顧客の獲得ができなければ経営者として失格である。「入りを増やして出るを減らすこと」は、日常的な経営活動そのものである。「入りを増やして出るを減らすこと」ができることは社長に選ばれる条件である。
該当者が多ければ、よりよく「入りを増やして出るを減らすこと」ことのできる者が後継者に選ばれる公算が高くなる。
5.技能と職務に精通している者であること
当社は情報サービス業に属している。明らかに専門職の集団である。技能の劣る者は、部下をもてない。技能が抜きん出て優れていなければならない。もちろん、すべての分野の技能に優れるのは神ならぬ身では不可能である。せめてその主要に分野のいくつかでは、他を寄せ付けないくらいの技能が必要である。専門職人の尊敬を集めなければ、指導者たる社長は務まらない。
該当者が多ければ、よりよく「技能と職務に精通」している者が後継者に選ばれる公算が高くなる。
6.社会通念に限りなく近い行動様式を守れる者であること
演技でも良いが、身なりは普通のビジネスマン、遅刻や欠勤は少なく、言葉遣いも正しく丁寧であることが条件である。私生活においても、近隣や友人たちと礼儀正しい交際ができ、肉親や親族にも礼儀を欠かさない者が望ましい。業界によっては、Tシャツ・ジーパンが格好がいい、ともてはやされる場合もあるが、情報サービス業(サービス業の一部)なので、周囲から要らぬ誤解を受けるのは致命的である。礼儀正しいサービスを提供する者として、日々自分をアピールしていることが大切である。社長は会社の顔である。会社の顔が社会的規範に反しているようでは、会社の事業自体が大きく疑われる。
人は人ごとに違う性格と嗜好を持っている。それらは個性というべきであり、個性を発揮するのは大いに結構である。しかし、会社が疑われるような行動様式は社長にはふさわしくない。社長になる人は本心でなくとも社会通念として許される行動様式が取れなければならない。どうしても社会通念に近い行動様式が取れるようにならない人は、人間としての尊厳は少しも損なわるものではないし、大いに共感もするが、少なくとも社長にはふさわしくない。
社会通念に限りなく近い行動様式を守れる者が多ければ、よりよくそのことができる者が後継者に選ばれる公算が高くなる。
7.個人資産が多い者であること
実際のところ、日本の企業は適度の借入金によって日常的な運転資金を得ている。中小零細企業に運転資金を貸す金融機関は、ことごとく、社長の連帯保証を要求する。当該企業のもつ社会的価値や将来性にかけて運転資金を貸す金融機関は皆無である。「社長の連帯保証」を求めるということは、社長の個人資産を担保にするということと同義である。24年間の会社経営で、私は結果として親から受け継いだ個人資産のほとんどを金融機関に貢いだことになるが、すくなくとも私が会社の借入の連帯保証ができたから、この会社が存続しているともいえるのである。
なぜ、そのようなことになるのかについては諸説があるが、税制上、運転資金として自前資金を蓄えると高い税金を払うことになるので、もともと利益率の高くない中小零細な企業はたちまち運転資金を税金として吸い上げられてしまうという現実があるのである。金融機関からの借入金については数%から10数%の利息の支払いが必要だが、数十%から60%に上る税金に比べればある意味ではマシという「毒マンジュウ」にも似た社会的経営慣行があるのである。これを避けるには、無借金経営、すなわち、「税金の高額納税企業」になることである。事実上、これは大変に難しいのである。
後継者の人は、連帯保証はしても資産を失うようなヘマはやらないだろう。私が経営した過去には、信じた顧客が倒産したり、経営難となって支払いが不能となったケースがあり、その都度、社員の給与や外注さんへの支払いのために個人資産を提供してきた。「井戸塀政治家」という言葉があるが、私は「井戸塀経営者」だった。その意味で、その結末は経営者としてはあるまじき不覚だった。もって他山の石として、後継社長は「豊な社長」となってほしいものではある。いずれにしても、個人資産がなければ運転資金を確保できないという現実がある。
該当者が多ければ、より多くの個人資産を持つ者が後継者に選ばれる公算が高くなる。
8.人を育てられる者であること
能力が高く人柄もよい人を活用することのできる人は多い。能力が高く人柄もよい人を活用できない経営者は反社会的な経営者であって、問題外である。能力が高く人柄もよい人を活用できるのは最低の条件である。しかし、それでは実際のところ足りているわけではない。
ところで、能力が高く人柄もよい人を育てられる人は少ない。中小零細な企業では、端(ハナ)から有能な人材が集まることは少ない。採用しえたとしても、それはきわめてまれである。荒削りの若い人材を集めて、有能で人品高潔なる者に育てることが経営者には課せられる。そして、社会通念をよりよく守る人になるように指導することが求められる。極端な場合には、企業は、脱法青年を社会復帰のためのリハビリとして預けられて受け入れることもあるほどである。このような例には、社会が企業に求めていることの深い意味を垣間見ることができる。荒削りの若い社内の人材が、いつまでたっても荒削りのままになっていれば、その会社の社長の資質か問われる。経営が疑われる。営業成績が落ちてゆくのである。
人を育てられる人が、社長になる人の条件の一つである。
該当者が多ければ、よりよく人を育てられる者が後継者に選ばれる公算が高くなる。
続く。(情報収集能力、先見性、決断力、深謀遠慮など)
補足: 実際のところ、これらの条件のすべてを満たす人はいないだろう。しかし、これらの条件の少しでも多くを満たす人が後継者となることは疑いがない。

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琵琶

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コメント

はじめまして。kahoと申します。
どのワードでひっかかったのか・・・管理者様のブログとは思いがけない素敵な出会いでした。
管理者様の「社長の条件」シリーズのブログは、とても好きで、興味深く拝見させていただきました。
とても、感動・共感してしまい、コメントさせていただきました。

日頃、自分が心がけていただいたこと、気にとめず通り過ごしていたことなど、改めて考えさせていただきました。

2005年のブログなので、随分と時が経ってしまっていますが、御社はきっと管理者様のもとで育った後継者の方運営しているのでしょうね☆

ブログ内で大病をされたとありました。
どうかご自愛ください。
感謝の気持ちを込めて。

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