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無駄なことにも価値がある--社長の条件(10)

2005/10/21
無駄なことにも価値がある--社長の条件(10)

今日(10/21)のヤフーニュースには「ネット発信する郷土――コスプレも農家もこなす41歳女社長」という元気おばさん(女社長)の記事が載った。このおばさんは桁外れの元気さだ。
http://www.bcac.jp/company/index.html
記事冒頭の紹介では、「岩手県のローカル情報をまったりと紹介するストリーミング番組「ガチャダラポン」。銀髪カツラと派手な衣装で踊るキャスターの「ノンナちゃん」の“中の人”、畠山さゆりさん(41)は、女医やウエイトレスの格好でNHK盛岡の番組に出たこともあり、なんちゃってアイドルとしてDVD出演の経験もある2児の母。しかしただのコスプレイヤーではない。」と書かれている。「ガチャダラポン」や「ノンナちゃん」は岩手人ではない私にはさっぱりだが、とにかく目立つ存在なのだろう。
http://www.bcac.jp/company/index.html
この中に彼女の心意気の一端が紹介されていた。これは、なかなか感動的である。

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 「盛岡じゃないと無理」「せめて大通り沿いに会社を作らないと」――花巻の田舎の農家での独立は、誰もが成功を疑った。「でも『作れば来る』と思ったんです。自分が本当に必要とされているなら、ここまで来てくれる人もいるだろうと。“実験クン”でした」
 実験クンは見事に成功。次々に生んだ「お金にならない無駄なもの」が広告代わりになった。
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次々に生んだ「お金にならない無駄なもの」が、客に花巻まで足を運ばせる原動力になったというのである。

もちろん、本当に無駄なものならば、人も寄ってこないが、人を楽しませ、新しい時代の息吹を伝え、ネットの威力を教えたのがこの人のやってきた「お金にならないもの」だった。確かに、これで稼ぐことは出来ないが、これをしていたから客が来たのである。そして、事業も成功したのだ。

次の社長を引き受けてくれるだろう若者が学ぶものがここにあると私は言いたい。
経営や営業の現場では、「無駄なこと」が「成功の母」になることは、枚挙にいとまがないほどである。
今取引が成功しなくとも、交渉の場に呼んでくれたお客さんは、次の機会に本当に発注してくれる可能性が高まる。実感で言えば、他の新規顧客の10倍は可能性が高い。
今、お金がいただけないからといって、ふてくされたり、不遜な態度をとったり、「発注しないんなら、客じゃねぇ」などという態度や暴言を吐いたら、一生涯、そのお客さんからは口もきいてもらえないだろう。無駄に見える商談も「あきずにやる」のが「商い(あきない)」なのである。最初は断られて当たり前、次の機会に続くように、何かのよい思いを互いに残すように、終わる交渉ならば、なおのこと、何なく出来なければならないのである。
さて、開発の現場はいつも忙しい。新しい技術とITトレンドを試す実験システムを作る作業は滞りがちである。いつものスタッフだけでは手が足りなくなるので、腕の立つ他社の技術者やフリーランサを雇うこともある。これを「無駄な給料を払う」と言うなかれ。花巻の元気おばさん社長がやった「実験クン」とはまさしくこのことなのである。もちろん、お金を払って新しい技術とITトレンドを試す実験システムを作りたいという顧客がいれば、大変幸せなことである。予算を確保して実験ができる。しかし、新しい試みであればあるほど、意欲的なシステムであればあるほど、われわれが成功を強く確信していても、顧客は警戒して寄っては来ない。出来上がった「実験クン」を見て、「うんまぁ、すばらし。オレらもやってみんべ」となるはずなのである。人は聞いただけでは同意しない。見て、触って、動かしてみて、やっと納得するのである。
かつて、Web-DBシステムというものを発案し、顧客に説明に回ったころを思い出して見てほしい。図を描いて、文章で説明して、パワーポイントで説明しても、顧客たちは「それって、HPビルダーとどこが違うの?」と真剣に聞いてくる始末だった。やむなく、当時の優れものの中国人技術者L君に頼んで、お客さんのホームページをお借りして改造を加えて3日でサンプルを作った。顧客のホームページのトップの文字を、手元からデータ入力するだけで書き換えるデモをやって見せた。実際、そのサンプルシステムではその部分のテキストが一行分書き換わるだけだったが、顧客は目をむいてびっくりした。「えっ、HTMLライタに頼まなくともホームページの修正が可能なの?」---それから、われわれの受注は急拡大した。何事にも最初はあったのである。その最初は、あくまでも「実験クン」だったのだ。ホームページの自動書き換え処理などは、Web-DBシステムの能力の小さな一部に過ぎないが、画期的なパワーをデモンストレーションするには格好の「無駄なもの」だった。これに要した予算は標準的な派遣社員の3人日分だけである。その後の繁忙を考えればずいぶん効率的な投資だった。
今は一時のブームこそ去ったが、安定した顧客の何割かは、わが社にこのWeb-DBシステムを頼りにしてやってきたお客様である。
一時のブームが去れば、また、新しい時代の風をつかんで、新しい「無駄」に取り組まなければならない。「実験クン」を、自分たちこそ、やってやらねば、誰がやる、と思わねばならない。新しい時代の風をつかんでいれば、「無駄なもの」は、決して「無駄」にはならない。
社長は、資金繰りなどで明らかなように、今をしっかり生きていなければならないことは明らかだが、近未来のための「無駄なもの」にも果敢に挑戦していなければならないのである。
新しい時代の風をつかんでいない、トンチンカンな挑戦はしてはならない。周囲の「必ず儲かるから」などの甘言に踊らされてはならない。まずは、花巻の元気おばさん社長のように「時代の風」、すなわち「時代の潜在的要請」をいち早くつかむことである。そして、狙いが定まれば、一気に、果敢に挑戦するのである。
「時代の風」、すなわち「時代の潜在的要請」をいち早くつかむことの出来るものは社長になる可能性が高い。「無駄なもの」を無駄にはしないからである。「時代の風」、すなわち「時代の潜在的要請」を正しくつかむことが出来ない者は、価値を生まない無駄をしているのである。このような人は社長になってはならないのである。
次期社長になる人たちよ、「無駄」にはならない「無駄なもの」に大いに取り組んでほしい。また、仲間たちの「無駄にはならないはずの無駄なもの」を大いに推奨してほしい。これを「無駄」と毛嫌いする者は社長にはふさわしくない。

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琵琶

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