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夜明けの散歩、巨大犬との遭遇--我が家の愛犬様(9)

2005/12/11
夜明けの散歩、巨大犬との遭遇--我が家の愛犬様(9)

今日も朝は冷え込んだ。
愛犬様は朝の5時ころから落ち着かない。「オサンポ!」という声を待っている。夏は5時の散歩、さすがに最近の5時はつらい。5時半、愛犬様がキューン、キューンとご主人様を呼ぶ。
5時45分、「オサンポ!」という掛け声をかけると、愛犬様はパッと駆け始める。我が家の愛犬様とのお散歩の開始である。愛犬様は、最初から疾走を求めている。私は昨夜のアルコールが頭を締め付けている。まて、まてっ、と心で叫びつつ、私も走る。ままよ、汗でもかけば体からアルコールが抜けるかなと考える。周囲はまだ漆黒の闇。近隣はまだ寝静まっている。空気は冷たい。身が引き締まる。
愛犬様が好きな鉄塔通りのグリーンベルトで、密集する草の上を行ったりきたり、土のにおいをかいだり、おしっこをしたり、ときには仰向けになって背中をこすり付けたりとうれしくてたまらない! を全身であらわしている。
グリーンベルトに飽きると、次の大好きスポットである町の公園に走る。ここは、地元の農家が、耕作しきれなくなった広い広い土地を町会に貸し出しているところである。周囲が木立に囲まれて房総大地のおもかげの残る一帯となっている。昼間は子供たちの野球場やサッカー場になっている。道路から一段と高くなっている入り口をすばやく駆け上がり駆け抜けて中に入ると、そこは、いっそうの暗闇である。足元の霜柱がひどく深いことに驚かされる。足をとられないようにと走る。
公園の中のグラウンドの半ばまで走り進むと、愛犬様がビタリと動作をとめた。何かを警戒したらしい。闇の向こうの木立の中で、なにやら白っぽいものがかすかに動いている。愛犬様は、やや身を沈めて、少しずつ、ゆっくりと進む。白っぽいものはどうやら軍手らしい。人がいる。そして、目を凝らすと、わが愛犬様の3倍はあろうかという巨大な犬がいる。まだこのお犬様はこちらに気づいていない。愛犬様は、獲物に忍び寄るライオンのように頭を低くしたままゆっくりと進む。足音はしない。ついてゆく私は愛犬様ほど巧みではない。足元ではガサコソと霜柱を踏み敷く音がしてしまう。闇の向こうの巨大な犬がはっとしたように振り返ると、いきなり、猛然とうなり始めて、地面を掻き立てて襲い掛かろうと走り掛ける。あちらの飼い主さんは必死だ。身を反り返らせて、ツナを引く。わが愛犬様も同じくらいのうなり声を上げて、地面を掻き立てる。私も必死だ。ツナを引き締める。愛犬様の足元のグランドの泥は、周囲に一気に跳ね上がる。相手の犬の周囲からは、猛烈な土煙が立ち上がる。私は、ゆっくりと、愛犬様を誘導しながら、右手に回り込むように移動する。相手のお犬様が、やや左向きの位置にいたからである。右手に回り込めば相手のお犬様は左手に逃れてゆくだろうという計算である。お相手の飼い主様も私の動きを察して、すぐに左へお犬様を誘導し始めた。こうして、両者は一定の距離を保ちつつ、巧みにすれ違うことに成功した。どちらかの飼い主が犬に負けていれば、壮絶な死闘がそこでは繰り広げられることになったに違いない。やれやれ。
わが愛犬様は、お相手のお犬様がいたあたりに到着すると、お相手のお犬様のにおいを打ち消そうとばかりに盛んにおしっこをして、最後には特大のウンコもした。愛犬様は得意げに私を見上げる。私がウンコの後始末をしている間、愛犬様はおとなしく待っている。しばらく公園の中を散策すると、愛犬様は満足して、公園の出口に向かう。足取りを緩めて、私の速度に合わせてくれる。いつもならば、まだまだ元気をもてあまして、どこかに飛んで行きたいとばかりに走るのに、今日はややおとなしい。巨大なお犬様との遭遇で、少しはエネルギーが発散できたのかもしれない。夜はしらじらと明けるつもりの時刻になる。自宅からはずいぶんと東のほうにやってきていた。「オウチ」と私が小声で言うと、愛犬様は、すなおに自宅に向かう道に入ってゆく。帰宅を承諾したのである。愛犬様は並足である。西に向かう道を私は大またかやや小走り程度で進んでゆく。帰路、日の出を迎えた。愛犬様が、においをかぐために脇にほんの少しの寄って立ち止まったあたりに、地元ではジジヒゲ(正式名称不詳)と呼ばれる蘭科の密生する自生植物が見えた。キラキラと凍り付いている。手に触れると固くもろくなっている。冬では当たり前の光景である。なおも進むと、陽の光に当たって、ジジヒゲは表面の氷が解けかけている。
 朝陽注ぐ、ジジヒゲの凍てつくや、蘇る (琵琶)
愛犬様は、もうすっかり、私の足の速度に合わせている。やっとお散歩に満足したのだろう。我が家は目の前である。
愛犬様は、私の体と心の健康のもとである。酒はすっかり抜けたようだ。

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琵琶

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