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「脳内汚染」を読んで--心理、教育、社会性の発達(16)

2006/1/17
「脳内汚染」を読んで--心理、教育、社会性の発達(16)

私は、少し前の記事「ゲーム・オタクへの心配--心理、教育、社会性の発達(13)」で、ゲーム起因性のパンチドランカーのことを警告した。10月31日のことだった。
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2005/10/12_b2a7.html
それからしばらくした12月15日に、下記の書籍が刊行された。
岡田尊司、「脳内汚染」、文芸春秋(2005)
岡田氏は、1960年生まれというからかなりお若い。奥付の略歴にによれば東大哲学科を中退して、京都大学で医学を学び医学博士号を取得し、精神科医となったという異色の経歴とのこと。現在は京都の医療少年院に勤務されているという。
目次を見るといかにもジャーナリスティックなタイトルが並ぶ。タイトルは、文春の編集者(とりライターたちの)の作品に違いないと思う。このタイトルでは正しくその内容を伝えるとは思えないが、列記してみる。
----------------------
今、すべての人を襲う危機
頻発するゲーム型犯罪と損なわれる現実感
書き換えられる禁止プログラム
高まる攻撃性と暴力への礼賛
メディアが心のスキーマを変える
子供部屋に侵入した麻薬
十代で燃え尽きる脳と無気力な若者たち
中毒になりやすいタイプと危険因子
発達障害の子を直撃する影響
損なわれる心の発達と押さなくなる現代人
サイコパス化する若者の脳
模倣する脳と巻かれた灰汁の種
脳に仕掛けられた時限爆弾
脳の中で起こる公害
脳内汚染は回復できるのか
子供たちの笑顔を取り戻すために
----------------------
重要な指摘は、ゲームなどの映像メディアによる前頭葉機能の低下が起こっているということである。精神科医らしく、さまざまな事例を組み合わせての説明で、説得力がある。前頭葉の各部位を交通事故などで物理的に損傷した人の症例を取り上げているが、まさしく問題ゲーム少年たちの行動とそっくりである。
ゲームが麻薬的で、中毒症状を引き起こすという指摘もあり、私が指摘しているところとも重なるようだ。我が意を得たりという部分でもある。
「イギリスの研究者らは、PET(陽電子放射断層撮影)という測定方法を用いて、ビデオゲームをプレイしたときま、脳内(線状体)のドーパミン放出を調べ、それが顕著に増加することを報告した。ドーパミン・レベルの上昇は快感を引き起こし、それによってその行動を強化する。つまり、その行動をもっとしたいと思うようになるのだ。その結果、依存形式にも関与することが知られている。たとえば、コカインや覚醒剤の投与はドーパミン・レベルの上昇を引き起こすのである。この実験が示していることは、そうした麻薬の投与を行わなくとも、麻薬を投与したときと同じ現象が、脳に起きたということなのである。・・・毎日長時間にわたってゲームをすることは、麻薬や覚醒剤などへの依存、ギャンブル依存と変わらない依存を生むのである」(pp.86-87)
この記述は、M.J.Koepp et al.,,"Evidence for striatal dopamine release during a video game," Nature,393(6682),May 1998.などに依拠しているらしい。
人間の進化史の中で予想もしなかった刺激に脳がさらされているという警告が岡田氏の主張の中心である。脳には刺激的過ぎる情報に対する免疫力はないという指摘と、したがってこの刺激(脳内の公害)に対するワクチンもないのだという指摘がなされている。なるほどそうなのかと私は感じた。
発達障害は原因ではないという主張も私の意見とほぼ同じである。発達障害とは多く家族性もしくは遺伝子起因性と考えられてきた概念なので、私は発達阻害という言葉を選んでいる。発達障害とはいえないが社会性の発達阻害は結果であって原因ではないと私は思う。岡田氏はテレビゲームが主因であるとしているが、私は原因はたくさんあり、中でもテレビゲームは劇症となる原因のひとつであると認識しているという程度の違いはあるようだ。とはいえ、ひとまず、私は素人であり、岡田氏は専門家である。岡田氏の説に心を傾けてみたい。
一度、汚染された脳の回復は大変困難だが、「手作り体験」が心を育てる、というくだりには救いを感じる。すでに多くの現場では、「手作り体験」を実行して、この子達の回復のための悪戦苦闘をしているからである。
大学でも、実習の教科を扱うこともある私などには、これも我が意を得たところだった。成田山近くの芝山でニート塾に取り組む塾の先生たちもそうである。これらは五里霧中の中で行われていて、教師は自分に間違いがないかどうかを日々問いかけながらの悪戦苦闘になっている。この日々の活動に論理的裏づけを与える良い本であると思う。
「ゲーム脳」の書籍のようにもてはやされてはいないが、私としては多くの人に勧めたい本の一冊である。
ちなみに、「ゲーム脳」は、問題のありかをその間近かまで明らかにしたという功績があったものの、多くの人が指摘するように学問的裏づけに乏しく、説得力も発展性も乏しかったが、今回の岡田氏の書物はまったく異なる地平に立っていると思う。引用されている研究論文のうち、岡田氏ご自身が筆頭オーサとなっいるものが少ないことには少し違和感があるが、よい解説書であるとは思う。この分野の言論をめぐる困難な状況を示しているものだろう。
異論のある方もいらっしゃるだろうから、反論も聞いたり読んだりしてみたいと思う。

ところで、2/18になって「おやこdeてらこや」さんから、この記事に対するトラックバックをいただいた。この記事に対するいろいろな意見の中で、比較的近いご意見のようである。まずは、トラックバックに感謝いたします。

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琵琶

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