本業こそ社長の仕事、ライブドアは本業赤字--社長の条件(19)
2006/02/05
本業こそ社長の仕事、ライブドアは本業赤字--社長の条件(19)
ライブドアの堀江前社長ら4名は、本業の粉飾決算の容疑で再逮捕となり、さらに10日間の拘留が決定した。つまり、予想通り、ライブドアは本業では赤字だったのである。彼らは、あたかも本業で大きな黒字が出ているかのように装うことによって、自社の株価を吊り上げていたことになる。
私は株をやらない。株の主流は博打だからである。博打が好きな人はいるもので、法の範囲であればやめろというつもりもないが、私自身はやる気が起こらない。だいたい、まじめな企業活動を博打の対象にするなとど言う心根がわからない。競輪選手が流す汗は、博打の対象としてハナから承知の上だから問題はないが、真剣な企業活動が博打の対象にされるのは、よほどの対価がない限り、どこか納得が行かない。多くの企業は上場もせずに賭けごととは関係無しに企業活動に邁進している。上場したら考えが変わるかもしれないが、私のこの地味な会社に上場する機会は当面なさそうだ。
それはさておき、本業の業績を見ずに株を買う素人に対して、よく「株は業績を見て買え」と説教する人がいる。しかし、ここまで粉飾されては、業績を見たつもりでも、それは枯れ尾花である。もっとも、目先のお金に魂が奪われてしまった人には、何を説明しても「俺の儲けに難癖をつけるのか」と思うらしくて、聞く耳を持たない。その結果が、ライブドア株一株100円割れという事態である。これから、持ち直すかも知れないという期待で、安値買いに走っている人もいるようなので、とめたりはしない。私にそんな止めたりする権利はないと思う。しかし、「浮ついたマネーゲームの部分を切り捨てれば、本体は磐石だから大丈夫」と太鼓判を押していた人は、今、なんと言うつもりだろうか。本体が磐石ではなかったから、「浮ついたマネーゲーム」で赤字を補填し、ごまかしていたのではないのか。
ライブドアと私たちの生業(なりわい)は、あまりにも違う。彼らは、多数の人の目をごまかしてお金を得て、銭ぶとりしていたとしか思えない。われわれは、たとえ他人にだまされても、誠実に仕事をする以外に対価をいただけない職人の世界にどっぷりとつかっている。
あまりにも違うのに、ライブドアのような企業がIT企業だと自己主張していたので、われわれのようなシステムハウスも近い存在だと勘違いした人は多かったようだ。これにまつわるいくつかの例を以下に紹介する。いずれも人物を特定できない程度には脚色したことをご了解いただきたい。
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(1)まず、学生たちは、大いに勘違いした。
近鉄球団の買収のころ(2004年6月)
私が教えている工学部の男子学生が私に「ライブドアのような会社を興したいんです。やり方を教えてください」と言ってきた。「ライブドアは、本業で正しく利益を上げて社会貢献していない会社だ。水鳥のバタ足というたとえがあるが、ライブドアは病原菌一杯の泥水の中で足をバタつかせている状態だと思ったら、近いだろう。やがて、蛭やマムシに食いつかれて、自滅する。別の会社を見習うほうが良い」と私。
フジテレビの買収騒ぎの直後(2005年6月)
同女子学生が2名、休み時間、教壇に近づいてきて、「私たちモデルクラブでバイトしたりしているんですけれど、将来はホリエモンのフジテレビのアナウンサになりたいんですけれどなれるでしょうか。ホリエモンにも遭いたいし」と言う。なるほど、顔とスタイルは並以上、活舌も良く、好感度とは見て取れた。レポートの成績もいい子達である。ホリエモンは買収には失敗したが、一時フジテレビの筆頭株主ではあった。「がんばればなれる。先生が保証する。しかし、この授業の単位を取っただけではアナウンサにはなれないよ。アナウンサになりたいならば、アナウンサ養成学校などの専門学校にダブルスクールしければ無理だね。それに、もう一つ、その世界は、残念なことに実力だけでは入れないし、入った後もやってゆけない世界だ。どの大学にも放送研究会というようなサークルがあるはずだ。そういうものに入って、放送界の人たちとコネを作らないと無理だろうね」と私。彼女らの顔は真剣。「うちの大学にも放送研って、ありますヨ。ヤッパ、ハインナキャダメッスよね。情報処理の試験も受けたいし、どっち優先したらイインでしょ」と彼女らはついタメ口になる。「情報処理の試験は1年と2年で目標達成する。その後、アナウンサを目指して勉強と活動をする。という方針などがありうるね。しかし、その頃まで、ホリエモンがフジテレビといい関係かどうかも、そもそも健在かどうかも疑問だがね」と私。「エッ、ナンデ、ナンデ」と彼女ら。「本業で正しく利益を上げて社会貢献していない企業はやがて社会から見捨てられて破滅するんだよ。株主の利益のために公共の電波を買い取ろうと主張した時点で、バツだね。株主の利益とは公共の利益ではないだろう?。彼は自分の利益ではなくて株主の利益が目的だと言い換えたつもりだろうけれど、公共の利益でなければ社会は納得しないものさ。それにしても、株主の利益という彼の主張も本音かどうかも疑問視されてしまっている現状ではだれも彼を助けないだろう」と私。
他にも学生たちからは、たくさんの相談があった。いろいろあっただけ書ききれない。
(2)企業家も大いに勘違いした
競馬場買収のころ(2004年10月)
仙台球団を買収に失敗すると、ホリエモンは高崎競馬場の買収に名乗りを上げた。競馬場はサンザン待たされたあげくすっぽかされたのだが、じらすのがホリエモンらの買収交渉の手口である。ある著名なリクレーション施設の経営者たちから、私は執拗にライブドアとの接触を要請された。経営が苦しくなった自社を買い取ってほしいというのが彼らの狙いである。「IT企業だから、何とかルートがあるでしょう」とかれら。「知り合いというわけではありませんから、そうそう巧く引き合わせることができるとは限りませんよ」と私。「お願いします。堀江さんは、馬に関心があるようだし」と彼ら。「博打に興味はあっても、馬が好きとは限りません。御社の乗馬施設は一日に何億も何千万も荒稼ぎするわけではないでしょう」と私。「私も競馬好きですけれど、競馬好きはたいてい馬好きなんです」と社長。やれやれ、「彼は、競馬さえ好きかどうか分かりません。彼は"お金のなる木"が好きなだけだと思いますよ」と私。後日、業界団体の幹部を通じてライブドアに連絡をすると案の定「多忙につき面談不能」というニベもない返事が返ってきた。当該の業界団体の幹部さんが言うには、「とにかく、とにかく、ライブドアはやめたほうがいいですよ。ひどいメに遭った会員さんがたくさんいるんです」ということだった。リクレーション施設の経営者たちには、「多忙につき面談不能」と伝えて、誰が言ったとは言わずに「ライブドアはお金が惜しくないのではなく、逆にお金がほしいのです。近寄らないことをお勧めします」と説明した。この施設は、その後自助努力して、経営は上向きつつあるので、あの時、売らなくて正解だったのだ。
このほかにも、いろいろあったが、いまだに話すと支障のありそうなものが多いので、ホリエモンに接触せずに無事に収まった上記のケースだけにとどめたい。
(3)政治屋さんも勘違いした
国会議員さんの件は、マスコミでも取り上げられていて、民主党の鳩山氏が、うそかまことか「J党の議員らの秘密を握っているぞ」と追及の予告をしているのは良く知られている。私が体験したものは、地方の議員さんの取り巻きの話である。私とその議員は旧知で、私が貧乏経営者であることは良く知っている。後援会費を免除する代わりに、時々地方行政に関するレクチャーをしてくれという虫のいい申し出をしただけでそれ以上の期待はしていないらしい。ところが、その議員の取り巻きたちは別である。あるとき、私を講演に招いた席で、後援会の幹部の一人が、「ライブドアとかは、大もうけしているらしいじゃないの。先生の所だって、裏で大金を稼いでいるンじゃないの。隠していないで、1億でも2億でも献金してよ」と大声をあげる。そうだ、そうだとダミ声が広がる。「待て待て、この人の会社はそんなんじゃないんだ。額に汗しないとお金はもらえないという考えなんだから、ちっとも儲からないんだ」と議員先生。「裏で稼ぐような会社は、いずれつぶれます。世間が許さないでしょう」と私。「バカジャネェの、俺にはやり方がわかんねぇケドヨ、ホリエモンみていに巧くやれば、がっぽがっぽだべ。法にだって穴も裏もあんべ。あんた、やれよ。その金、俺らに回せ」と取り巻きたち。「あなたたちは、心正しく社会貢献したいという議員を担いでいるんでしょ。そんな人が法の裏で稼ぐことを要求するんですか。私はお断りです」と私。「まぁ、まぁ、ヒトはそれぞれって言うこと。お互いに考えがあるんだから、この話はこれでおしまい」と議員。それ以上、言い合ったら大変なことになりそうだった。
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ホリエモンのように金持ちになりたい、ライブドアのように有名になりたい、という気持ちは分からないではない。しかし、独居房で麦飯を味わいたい社長候補のヒトはどうぞ、と言いたい。私は、いやである。そんな社長候補がいたらノッケからから私の後継からは除外する。幸い、私たちは、本業で、まじめで親切丁寧しかも作ったものの出来がいいと世間から評価をいただいて、お仕事もその対価もいただいている。身入りは少ないが、おてんとう様は味方である。胸を張って世間を渡ってゆけるというだけの自信と実績はある。本業大切が基本である。
それにしても、あんなに持ち上げておいて、今ごろホリエモン批判に転ずるヒトが多いのはどういうことだろう。あきれるばかりが、その一方で、その当時から「大きな声ではいえないが、やめておいたほうがいいよ」と、心ある市井の大人の男たちには、親愛なる学生たちやお仲間のために個人的な防波堤になっていたヒトも少なくはなかったはずである。余計なお世話とたたかれても、私も、その大勢の男たちの一人だったことを誇りにしたい。
君たちも、同じ思いだと思う。
参考:「戦略的情報組織学」
http://www.sciencehouse.jp/research/20050423strategy_info.pdf
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琵琶
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