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学習の社会性について--心理、教育、社会性の発達(18)

2006/4/16
学習の社会性について--心理、教育、社会性の発達(18)

以前、「記憶の社会性」に関する記事を書いた。これは、多くの賛同を得ることができた。社会性の発達阻害の現状についても書いて、多くの方から同感するという感想をいただいた。
私の一貫した問題意識は、近年10-20年ほどに限って日本で大量に発生している「ニート」と「知性なき丸暗記学生」という双子の現象の原因解明と予防法である。
教育学部の先生方のお叱りを覚悟で、教師を育てる大学教育にも原因の一端はあるということも取り上げた(1,2)。「教育心理学」の多くが「社会性の発達」を扱っていないという事実を指摘したのである。教員になるためには必須の「教育心理学」で、子供には「社会性の発達」という大切な成長があることがネグレクトされているという、事実であった。もちろん、すべての教育学の教師がこのことに気が付かなかったわけではない。希望の持てる優れた教育に取り組む先生方も少なくはない。しかし、いずれにしても少数派であることを述べた。その後、これを改善しようとする動きも文部科学省などの一部では生まれているようだが、教職教育の現場に浸透するには至っていない。と思う。
さて、学習過程において社会性はどんなかかわりを持つのか、について、先行する研究がなされている。これらの成果を知ると、私が「記憶の社会性」で問題として取り上げたことがらの、もう一つの説明が読み取れる。社会性をもつ知識が獲得されるプロセスが解明されている。
(1)正統的周辺参加
Jean Lave & Etienne Wenger 著, 佐伯 胖 訳, 「状況に埋め込まれた学習―正統的周辺参加」, 産業図書, 1993.(アマゾン
社会的な組織に参加しようとするものは、通常ただちにその組織の中核に躍り出ることはなく、その周辺位置に参加して、その組織のメンバーの振る舞いや考え方を模倣するところから学習する、というのがその考え方である。「門前の小僧、習わぬ経を読む」というが、「門内の小僧」は、まずは、見よう身まねでもっと学ぶということだろう。
この理論によれば、社会的貢献度の高いすぐれた知性を獲得するのも、非行や犯罪行動を学習するのも、参加しようとする社会的組織のよしあし次第ということに納得が行く。
非行や犯罪を学習する過程を取り上げた研究には、長谷川いずみ,"現代の少年非行と親子関係"などがある。
(2)行動変容法、行動療法、作業療法
社会性を獲得できなかったり、誤った社会性(非行傾向など)を獲得してしまった場合に、これに有効に対応できるのは、いわゆる作業療法である。土と植物に接する協同農作業、手工芸品をつくる手作り協同作業などが効果を揚げている。就労体験で成果を上げているところもある。ほかには、民間療法ではあるが神経症に対応する森田療法なども有名である。
協調学習、参加型学習、グループ学習などの教室における「行動療法」が効果を上げるのは当然のことである。言うまでもないが、私は、これらの学習方法の実践に取り組んでいる一人である。
行動変容法を簡潔に解説したものには、次のものがある。
岡山大学,"ミニマムサイコロジー",学習(第三段階),電子媒体(2006.04.17確認)
(3)社会的学習の理論
社会的学習の理論を体系的に構築したのは、アルバート・バンデュラ(Albert Bandura)である。
http://www.okayama-u.ac.jp/user/le/psycho/member/hase/education/2003/_3seminar/Bandura.htm
http://saido.at.infoseek.co.jp/bandula.html
社会的学習理論の中には重要な学習過程として観察学習(モデリング、モデル構築)があるが、その下位には「注意過程」「保持過程」「運動再生過程」「動機づけ過程」という4つがあるとされている。これは、教室で観察される学生の挙動によく合致している。とくにグループ活動を指導すると、顕著に見られるところである。
また、山本五十六の言葉として伝えられる「やってみせ 言って聞かせて させてみて 褒めてやらねば 人は動かじ」も、またこの原理に沿っていると見ることもできる。
バンデュラの理論には、「自己効力」に関する明快な説明があり、ニートの前駆症状である自己効力感の喪失という社会的アパシー状態を解明する手かがりもあるようだ。
また、人間行動を決定する3要素(自己、環境、行動)が相互に関係しあうという三者相互作用説なども提唱している。彼以前の説では「自己または環境の1つずつが独立に行動を決定する(独立因子、一方向性)」、またはその際に「自己と環境が相互作用する(2因子相互作用、一方向性)」であった。バンデュラの「三者相互作用」の理論は、私の「影響関係モデル」に発展的につながる原始的な仮説を含んでいるようで興味深い。私の「影響関係モデル」は彼のこの理論を含んで完全に乗り越えているのだが、古い理論と私の「影響関係モデル」の仲介をしてくれるようである(1,2)。
さて、このように見てくると、知性の発達は、社会とのかかわりによって促進され、獲得された知識は社会性を保持しているということになる。
実は、行動心理学には見るべきものが少ないと感じていたが、認知心理学との境界領域で、最近はこのような成果(社会的学習理論)を上げていることを知り、大いに見直している次第である。
大学の教員ばかりではなく、小中高の教師の皆さんも、ぜひとも、この「社会的学習理論」をじっくりと読んでみていただきたい。

たくさんの方のご意見をいただければ幸いです。

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琵琶

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