教員資格認定にメンタルテストを--心理、教育、社会性の発達(30)
2006/11/20
教員資格認定にメンタルテストを--心理、教育、社会性の発達(30)
4年前、私は頼まれてある大学の新設の通信教育部の指導を担当していた。社会人が圧倒的に多く、中でも高校情報の教師の資格を目指す学生が多いという事前説明があった。この年は通信添削の指導に夜を日に継ぐ多忙さで睡眠時間は極端に短かった。夏にはスクーリングで、40-50名ずつに分かれた5クラスを受け持った。
前半は2クラスだったが、スクーリング初日の授業から暴力的な大学の専任××教授(新任)に困惑させられた。「学習しなくとも単位をよこせ」と主張する学生ら数名(社会人、××教授の知り合いたち)を引き連れて私の教室に乱入し、持ち込んだハンドマイクで「学習しなくとも単位をあたえるべきだ」と激しくアジテーションし、私を教室の片隅に追いやるや、授業を中断して一般の学生を一人ずつ呼びつけて「自分は、学習なしに単位をもらいたい」と強制的に言わせるというとんでもない事件がおきたのである。この事件は、古くから居る他の専任教授らの応援を得て一応の沈静化を見たが、この××教師はお咎めなしに終わっていた。彼の主張では、授業料を払った時点で学生に単位をやるのが平等の精神から正しいということになるのである。教員が課題やペーパーで学生の学力を判定するのは絶対反対だというのである。私は次の講義時間には直ちに私の教室ポリシーを発表し、従えないものは即刻退出を命ずることもあると宣言して授業を再開した。その後も××教授の過激さは驚くばかりだった。私のクラスの学生からの課題提出物を事務から次々に横取りすると半年も隠匿してくれたので、私は長く執拗に繰り返し学生からの提出物を引き渡すように要求せざるを得なかった。直属上長が××教授を呼びつけて直接指導してくれたおかげで、大半は後日彼の手元から発掘することができた。ここで、この事件についてこれ以上詳しく述べるのは目的を外れるので、控えさせていただく。
後半の3クラスはこれに加えてさらにいかにも異様だった。
クラスには、学内徘徊学生(一見する服装からヤクザの師弟と推定)、白昼堂々他の学生の答えを強奪して歩く者、統合失調、欝症状、記憶障害、妊娠幻想や知覚障害を持つ者、性同一性障害者などと推定される者が多数集められていた。各クラスともにそれぞれ半数を越える学生にただ事ではない雰囲気があった。これらの学生の多くはベルが鳴るとうつむき加減で上目遣いに教師を眺めている。教師の話や指示に対して著しく反応が鈍い者が目に付く。1-2名は近づいて語りかけても、黙って下を向くばかりで教師と会話が成立しない。他の学生はちぐはぐでもかろうじて会話はとりあえずできるという程度だった。特にひどかったのは課題が出ると授業時間には、教室内を小走りに走り回って、答えを教えろと他の学生に強要して歩く者(筋肉質でいかにも体育教師という風貌の男で、後で実際に高校の指導力不足体育教師と判明した)などがいた。TAが制止すると足払いを受けて、転倒しそうになるなどの被害もうけた。これらの学生の間に、ちらほらと正常な学生らも同席していた。正常な学生の多くは、デザイナとして数年以上社会で活躍してきた者たちだった。正常な学生らにとっては、とてつもなくひどい学習環境だったと思う。
正常な学生を除く問題の学生らは、実は、いわゆる「要再教育教員」であった。ある都道府県の教育委員会が預かっていた現役の(問題を抱える)高校教師の皆さんだったのである。彼らとは別に、一部には、教員ではないが精神に障害のある方もいた。障害者団体から来ているのではないかと推測された。真偽は不明だが、これらの学生らを集めたのは××教員で、学生をたくさん集めた功績で教授に就任したのだと伝えられていた。私が担当しなかった隣の教室では、何も知らない教師が作品をかき進めようとしない学生に声をかけたとたんに叫びだして鉛筆様のとがったものでいきなり教師を刺し、さらには自傷行為に及んだため、教員が止めに入って周囲が血みどろになるという惨事もおきた。
答え寄こせと強要して歩いた学生教師は、課題提出もろくにしておらず、ペーパーテストの成績も極端に悪かったので、さすがに単位は与えられなかったが、他の学生らには繰り返し教えて何とか及第点に持ち込んだ。私の単位を得るのが情報教師の資格をえる必須条件ということであった。
しかし、要再教育教員のうち単位取得したこれらの者がすべて教壇にもう一度立てるかといえば、別の意味できわめて困難と言うべきである。果たしてこの教師らのすべてが生徒に正常に語りかけることができるのだろうかと心配した。ましてや、多くは、生徒と心を通わせるのはきわめて困難に違いないということが容易に推測されるものだった。
初日から乱暴を働いた専任××教授はその後もさまざまなことをしでかしてくれた。おそらく、通念の上では教室に戻すことが困難とされるに違いない、これらの「要再教育教員」の多くを無条件に教室に戻すことや精神障害者に無条件に大卒の資格を与えることを思想信条として狙って活動されたいるものと推測された。当該教育委員会は、こうして情報教員の資格を得た教師たちを、そのまま教室に戻したのだろうか。教室に戻った時点で突然に正常に立ち直ってくれるのであれば問題はないのだが、・・・。かれらの教室の子供たちはどうなるのだろうと暗澹たる思いだった。私の責任ではないものの、ひどい不安を覚えたものである。
思い当たる教育委員会の皆様のその後のフォローアップ情報とご意見をいただきたいと密かに願うものである。
もちろん、私は精神科の医師ではない。私に、彼らを診断する資格はない。ならば、彼らに専門家の診断が必要なのではあるまいか。
少し前、「イジメ教師の状況証拠--心理、教育、社会性の発達(27)」という記事を書いた。ここでは、イジメを幇助した教員自体に反社会性または回避性の(仮性の)人格障害がある危険性を指摘した。(仮性の)反社会性人格障害と(仮性の)回避性人格障害はまるで別の人格障害であるかのような印象があるかもしれないが、両者は社会性の発達不全という共通の性格を持っているのである。前者はイジメを積極に行うが、後者はこれに追随する傾向があるのである。両者ともに正常な社会的生活のコンピテンシーを持っていないのである。学校で生活科の授業が失敗したのは受験戦争のせいだという人が多いが、実は、多くの教師が社会性を持っていないので教える教科内容が理解できなかったというのが正確なところだろうと思われる。実は、今の教師は、とんでもないことに「社会性発達支援」という使命があることを知らなくとも、その資格が得られるのである。教員養成のコースの大半には、「社会性発達」を教える部分が欠落しているのである。教員養成で「社会性発達」を教えている大学もまれにはあるが、ごく少数ですぐれた教員の個人の努力にゆだねられているにすぎない。
教育界は、安定を好み、古き規範を守るところである。時の政権の思惑や目先の利害で教育の基本方針をコロコロと変えられてはたまらない、という考えの方が多いのだろう。それはそれで正しいとも思う。しかし、今、噴出している問題に対する緊急の対策は、教育百年の計に照らしてどうしても必要である。今、噴出している問題は、どう考えてみても、数日前に国の委員会を通過した「教育基本法の改訂」によっては、なんら解決しないのである。解決すべき事柄は別のところにあると思うのである。
ここに、私のひとつの提案がある。
教員資格認定にメンタルテストを必須とするという考えである。「メンタルテスト」というのは意味が広くて漠然とし過ぎているというなば、「精神鑑定と人格検査」ということにしたい。
教師は、社会通念上は、正常にして優れた認知能力を持ち、人格高潔なる者であると考えられている。しかし、必ずしもこの条件に当てはまらない教師は少なくないという事実はとうに広く知られてしまった。
なぜであろうか。ここに重大なヒントがある。
教職資格の認定条件は、「教育職員免許法」に書かれている。ここに「業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者は、免許を与えない。」または「・・・免許を与えないことがある」ということは明記されているのだろうか。実は、なんと、書かれていないのである。
他の資格はどうかと言えば、たとえば、「言語聴覚士」の資格では、「業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」には「免許を与えないことがある」と明記されている。
この事例を含む以下の情報源は、主として「くちコミ 資格制限情報」のサイトを参考にした。
-------------------------
・言語聴覚士法 第4条第3号
心身の障害により言語聴覚士の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるものには、免許を与えないことがある。
・言語聴覚士法施行規則 第1条
厚生労働省令で定める者は、視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により言語聴覚士の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。
を必要とするという考えである。
-------------------------
同等の資格制限は、次のような職種にも定められている。
上記参考資料によれば、32の業種がこれらの制限を取り入れている。
-----------------------------------------
・救急救命士
救急救命士法 第4条第3号
救急救命士法施行規則 第1条
(視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により救急救命士の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者)
・船員
船員法 第83条第1項
船員法施行規則 第二号表 健康検査合格標準表
(・・・作業を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができないと認められる者)
・あん摩マッサージ指圧師 はり師 きゅう師
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第3条第1号
理容師法施行規則 第1条の2
(・・・業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者)
・医師
医師法 第4条第1号
医師法施行規則 第1条
(・・・業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者)
・歯科医師
歯科医師法 第4条第1号
歯科医師法施行規則 第1条
(・・・業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者)
・保健師 助産師 看護師 准看護師
保健師助産師看護師法 第9条第3号
保健師助産師看護師法施行規則第1条
(・・・業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者)
・歯科衛生士
歯科衛生士法 第4条第3号
歯科衛生士法施行規則 第1条
(・・・業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者)
・水先人
水先法 第6条第3項
水先法施行規則 第15条
水先法施行規則 別表第一
(心臓疾患、眼疾患、精神の機能の障害、言語機能の障害、運動機能の障害その他の著しい疾病又は身体機能の障害)
・・・
・・・
・・・
-----------------------------------------
いずれも精神の障害による必要な認知、判断及び意思疎通困難な者を資格の対象外とするまたは対象外とする場合があると規定している。
教員の職は、これらの職業に比べて、精神の障害をあえて許容しうる職業だろうか。いずれの職よりもいっそう厳格に制限されるぺき職種ではないかと思われる。
また、人格においても正常高潔であることも当然教員には求められるべきことなので、人格障害もあわせて厳格に制限されるべきである。確かに正常な教師のほうが多い。多数の正常な教師が、精神や人格に障害を持った少数の同僚教師にどれほど苦しめられているか、現実を知る者には胸の締め付けられる状況である。精神や人格に障害を持った者が教育の現場に混入すれば困難は著しく増加する。彼らが混入しなければどれだけ多数の正常な教員にとって幸せなことかわからない。
そのためには法律の改正も必要である。個人的意見としては、この法改訂は教育基本法よりも先に実施してほしいことであった。
いずれにせよ、教員資格の授与および再登録時にメンタルテスト(精神鑑定と人格検査)を厳格に実施すべきである。私立小中高校では、採用試験にメンタルテスト(精神鑑定と人格検査)を実施するのは現行法の今でも可能なので、公立高校と差別化を図り、上質の教育を謳うための経営方針としてこれを採用することも良いことではないかと、密かに思うものである。
こうして、資格の条件に精神鑑定も人格検査も加われば、教員養成教育における社会性育成の欠落という大きな問題も自然と解消に向かうであろう。教育学部はこれらに関連する教科をコースに加えるであろう。また、教育委員会預かりとせざるを得ない「要再教育教員」の多くも そもそも教員にはならないはずなので、ご本人の精神的負担も少なく、児童生徒たちも幸せで、学校や教育委員会の負担にもならないはずである。
さて、大学ではどうか。東大では、昔の私の記憶では入学時に学生全員を対象に心理テストを実施していた。周囲を見渡すと、(ごめんなさい、、、)、今は教員にもメンタルテストが必要とされる環境になりつつあるようである。それは大学によらない現象だと思う。小中高の教師のメンタルテストともに併行して考慮すべきことと考える。
幅の広い議論が必要であると思うので、たくさんのご意見をいただければ幸いです。
次の記事: 心理、教育、社会性の発達(31)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2006/11/29_8799.html
前の記事: 心理、教育、社会性の発達(29)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2006/11/29_e566.html
琵琶
(補1)「鐘の声 ブログ」はリンクフリーです。ただし、「鐘の声 ブログ」の記事の一部または全部を引用または翻案して、公的に発言または発表される場合は、事前にメール等でお知らせください。[→連絡先]
(補2)この記事が含まれるシリーズの記事の一覧は下記(別サイト)のとおりです。
心理、教育、社会性の発達シリーズの記事一覧 (GO!)
(補3)ブログ「鐘の声」には、10個ほどのシリーズとシリーズ以外の一般記事があります。シリーズの全体構成やシリーズ別の記事一覧は下記(別サイト)にあります。
☆「鐘の声」の全体構成(「鐘の声 ブログ」記事マップ)☆ (GO!)
| 固定リンク


コメント