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「コラボレイティブ・マネジメント型情報教育」最終発表会兼コラマネフォーラムへの参加--感性的研究生活(16)

2007/02/26
慶応大学SFC「コラボレイティブ・マネジメント型情報教育」最終発表会兼コラマネフォーラムへの参加--感性的研究生活(16)

前回の記事「「民学コラボレーション学習」鮮烈デビュー、SH情報文化研究会&次世代大学教育研究会--感性的研究生活(15)」で、私と私のゼミの学生たちが民間と学生の共同作業を通じた学習実践についての報告を行ったことに触れた。1月31日に行われた次世代大学教育研究会とSH情報文化研究会の合同研究会のことであった。
さて、私は知る由もなかったがこの研究実践と平行して慶応大学SFCで「コラボレイティブ・マネジメント型情報教育」が行われていた。文部科学省が億単位の予算をつけたプロジェクトである。

私が、「「民学コラボレーション学習」の発表を意図して周囲に根回しをしているさなかに、上記のプロジェクトが進行しているとの情報がもたらされた。中心メンバーの指導教授は大岩元教授、実際の推進役は博士課程4年目の松澤芳昭君であ。大岩元教授は私の大学の敬愛する大先輩、松澤芳昭君はかつて学生ベンチャの一員として、私の会社と共同で一緒に困難な仕事を仕上げたいわば「戦友」である。偶然とはいえ、似たような経験をしていると同じような考えに到達するものらしい。
大岩研究室の試みと私の試みの違いは、たくさんある。その違いはこの後の表ににまとめる。
まずは、共通する点についてのべる。
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共通点    慶応大学          私のゼミ
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・情報系人材の育成に民間(産業界)と大学の教員が協働して教育に当たっている。
・プロジェクトチームといういわば学習共同体を構成して学習効果を高めている。
======================================================

異なる点は次のとおりである。
まず、規模が違う。一方は潤沢な予算を用いて、多彩な人材を活用している。私のほうはポケットマネーで細々と取り組んでいるのである。
また、このプロジェクトをロールプレイとみなすと、学生か果たしている役割が明らかに違うことが分かるはずである。実は、教えている内容がかなり違うのである。
======================================================
相違点      慶応大学          私のゼミ
------------------------------------------------------
(構成員)
要求主体     顧客            学生
顧客        学内外5組        当社スタッフ
システム構築   学生           当社スタッフ
PM         システムハウス社員  当社スタッフ
------------------------------------------------------
(教育および責任内容)
学生      「システム構築」     「要求定義」
PM       プロジェクト管理     コーディネイト
------------------------------------------------------
(詳細)
予算         多額            私のポケットマネー
将来教育対象   社会人           学生
現在教育対象   学生            学生
個別プロジェクト数  5              1
学生の企画提案   1              5
顧客の企画発注   4              0
参加学生数    15名             5名
PM人数       5名             1名
評価委員      4名             私+α
PM指導員     松澤君            私
指導教員      大岩教授          私
------------------------------------------------------
(支払い)
民間人PMへ     有償           無償(当社のボランティア)
の支払い 
======================================================
教育の狙いとスタイルは1000通りも2000通りもありうるものであり、「システム製造スタッフの育成(慶応大学)」も「要求定義のできるシステム部員の育成(私)」も決して間違った方針ではない。「システム製造スタッフの育成」は古くからあるシステム教育の流れであるが、「要求定義のできるシステム部員の育成」は必要とされながらどこでも行われていない初めての試みであるという違いがあるに過ぎない。前者が古すぎるとか後者が新しすぎるとか、議論しても始まらない。両方ともに必要なだけであると私は思う(関連記事12345)。
報告会は、午前10時から午後5時半までの長時間にわたった。会場には、前回(1/31「SH情報文化研究会&次世代大学教育研究会」)の私のゼミの発表を聞いた人々も私の呼びかけで10名程度来場していた。
会場では、私は後ろのほうに陣取って、学生らのために優しく手厳しい質問をした。私の質問に、いちいちうなづいたり小さく拍手する参加者は多かった。PMの一人にも質問を試みたが、たまたまこの民間現役SEのPMさん(有償勤務)は質問に耐える人材ではなかったらしく、返事がなかった。代わりにプロジェクトメンバーの女子学生が返事をしてきた。若手の現業SEよりも学生たちの方が優秀だったのである。
質問「既存システムの改修というプロジェクトでは、要件定義の後、実際のプログラム改修に取り掛かる前に、既存システムの解析というフェーズがあるはずだが、書かれたスケジュール表にはこのフェーズか見られない。これがその後の失敗手戻りの原因だったのではないか(私)」 「・・・(沈黙)・・・(PM)」 「あっ、はい。PMさんは、既存システムをよく調べろと言ってくれたんですが、私たち学生の方は、あぁ動いているな、という感想を得たぐらいで、いきなり改造や追加コーディングをしてしまったんです(女子学生)」 「・・・(私は、PMの口が開くのをやや待ったが、沈黙が続いたので、やむなく) ありがとうございました(私)」と打ち切る発言をした。部下にあたる女子学生にフォローされるPMはリーダー冥利に尽きるともいえるが、もっとしっかりしてほしかった。こんなやり取りになったためか、会場からは、別の、(大岩教授に親しい)企業関係者から、堰を切ったようなPMに対する指摘や質問が飛んだ。見ていて大変気の毒だったが、PMこそ教育すべき対象だったようだ。有償で出してくる人材にしてはお粗末であるし、そのような人材を提供する企業側の社内教育の質に問題があるように感じられた。また、このPMは、会場の別の人物から"このプロジェクトが自社で請け負うとしたら、いくらぐらいで請け負えるか"の見積もりについても質問を受けて、しどろもどろで答えられなかった。現場の技術者だから、知らなくても仕方がない、と心優しい大岩教授がフォローしたが、実際問題としては現場こそコスト意識を持たなければ、良い仕事はできないのである。
発表会は次第に進んで、会場からの発言は、「現在の大学の教育においては、システムの製造工程がこなせる人材ではなくて、要件定義("超上流"とも言う)ができる人材育成が求められているのではないか」という発言が多くなった。最後のパネル討論の質疑の時間では、私も最初からずうっと手を上げ続けたが、大岩先輩は、私を嫌ってか、なかなかさしてくれない・・・。おそらく、大岩先輩の良い点も悪い点も熟知する私の不正規発言を警戒したのだろうと思うが、・・・、私は大岩先生大好き後輩の一人である。そんなことをするはずがない。大岩教授の業績の優れていることは誰にも否定し得ないものであり、今回のような発表会があること自体がゆるぎない評価なのだ。最後のほうになって、他に発言者もいなくなったころ、見るからに仕方なさそうに(なんで?! プンプン!)私を指名してくれたので、私の「民学コラボレーション学習の実践」をかいつまんで会場に披露した。私のゼミの実践は、製造人材の育成ではなく、明らかに要求定義を書く人材育成教育であった。会場では私よりも先に発言した多くの人や評価委員の皆さんたちによる「(システムの製造工程がこなせる人材ではなくて)要件定義のできる人材育成を」という発言が続いた後だったので、会場はシンとなって私の話を聞いてくれた。大岩先生は、すぐに私に発言を打ち切るように指示してきた。先輩の指示ではやむなしと私はさっさと打ち切ったが、少なくともIBMをはじめとするシステム企業の多くは、私のささやかな実践にも強い関心を持っていただいたという手ごたえを感じた。
大岩先生、ずうずうしくもでしゃばりましたこと、お詫びします。ごめんなさい。
大岩先生は、次年度からは本年度までのプロジェクトの成果を生かして企業の技術者教育に主眼を置くプロジェクトをはじめる目論見で、予算もほぼ確定しているようである。「今回のプロジェクトは大学では冷淡に扱われた。もう学生の教育はあきらめて、企業の技術者の育成のほうに転換する」と会場のマイクでも力説していた。引き続き成功をお祈りしたい。これまでもいろいろな困難を乗り越えてきた方なので、基本的には心配はないと思っている。
懇親会では、「(システムの製造工程がこなせる人材ではなくて)要件定義のできる人材育成を」と発言した私以外の人たちや、私の発言に共感したと言う人が次々に近寄ってきて、名刺を交換することになった。新しい広がりが生まれそうである。
しいて、特別な感想を言えば、今回のプロジェクトを仕切った松澤芳昭君(博士課程4年目)は、すばらしかった。このプロジェクトのコーディネートと社会人であるPMたちへの指導を決して威張ることなく、控えめな態度で淡々と進めていたことか良く伝わってきた。個別の実施プロジェクトが隘路に陥ると、ときには顧客に会いに行き、「使えないものは使えないと言ってあげてください」と一見過激に見えるアドバイズをしたりもしていたようである。「ダメなものはダメ」といわれないと、製造者(この場合、学生)は「ものづくりの快楽」におぼれているので、顧客に使っていただけるものはいつまでも作れないという真実を彼は知っていたのである。彼は、かつて所属していた学生ベンチャ(システム製造会社)では、誰もやれないことを会社として引き受けてしまったのだからとあっけらかんとニコニコしながら、キチンの仕上げてくれたことを思い出した。学生ベンチャという集団でもまれたことも大変よかったが、元々備えていた責任感の強さと、人間や社会に対する天性の嗅覚、心配りが、その後順調に実を結んでいることが感じられる。彼のような人材ならば、どんな過酷な企業の現場であろうと、大学の教授会の一員であろうとも、立派にこなすことができそうである。改めて男としてほれてしまった、・・・。早く博士号を取って、もっと広い場所で活躍してほしいと自然に願わざるをえなかった。
ところで、この会のおかげで、大岩研の旧知のメンバーたちともしばらくぶりで再会し、旧交を温めることができた。中鉢欣秀君(現産業技術大学院大学準教授)、海保研君(現(資)ニューメリック社長)、岡田健太郎君(現慶応大学博士課程最終学年)などである。みな、立派になった。それぞれの分野で大きな活躍している。うれしかった。

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琵琶

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