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"農長者"への道あり、ファーマーズマーケットなど、地元の講演会--街に活力を(9)

(「鐘の声 ブログ」記事マップ)

2007/03/21
"農長者"への道あり、ファーマーズマーケットなど、地元の講演会--街に活力を(9)

日本の農家は、国策が変化するごとに翻弄され、その対応に追われてきたといわれている。確かに、そうだろう。しかし、この10-20年、近郊農地は、それ以上に、後継者難、経営難に苦しみ、その挙句に土地バブルとその後遺症に激しく翻弄されてきたともいえる。
わが街には、東京近郊にも係わらず農地が多い。1箇所に1万数千ヘクタールに及ぶ農地がまとまっているところもある。東京から千代田線または常磐線で江戸川を渡ると、すぐに目に飛び込んでくるのが、松戸の豊かな緑である。この広大な緑の一帯が矢切耕地である。線路の足下から広がる農地の東の奥に小高い森がある。農地からこの森へ向かう途中には斜面を競りあがってゆく林(斜面緑地)が広がる。東京の隣町に良くぞこのような緑が残っていると驚かされる。矢切ネギの産地として知られるが、寅さんの柴又から矢切の渡しを渡し舟でわたった土地でもある。伊藤左千夫の小説「野菊の墓」で政夫と民子の悲しい恋の舞台にもなって、その記念碑も立っている。戦国の時代には激戦場にもなり、数千人の兵が死んだところでもある。観光客もやってくるが、休日には緑の中を市民が散策する姿が良く見られる。なぜ、このような緑がいまに残されているのかといえば、この地が市街化調整地域だったという理由が第一に挙げられる。しかし、そればかりではない事情もあった。
この耕地を巡っては、土地バブルのころからきな臭い話が絶えなかった。農家も、まだら模様になり、後継者難、経営難から土地を手放したい方、ネギなどで収益を上げてゆきたい方、先祖から受け継いだ土地を緑のまま残したいが、高齢化のために自分では耕作が困難とする方が入り混じっていた。とくに、バブル崩壊の前後に矢切の台地に鉄道の駅ができるかもしれないという可能性を信じて地元が誘致活動に専念した時期もあった。周辺の宅地化を期待してのことである。しかし、誘致運動は事実上失敗のまま終焉した状態である。バブル崩壊後、日本中に、地上げされたまま放置された土地が多数残されている。これに見られるように宅地は過剰供給状態になり、良いことか悪いことか、その後日本の人口は減り続けているのである。近年、世間はそれほど新しい宅地を求めていなかったということである。
駅誘致運動の主役だった「矢切耕地の将来を考える農家組合」はその後、「いろり端会議」と名前を変えて、有志だけで、耕地の未来を議論する会として続けられていたようだが、最近になってまた活動を再開した。いろいろな願いが交錯していることは間違いがない。従来どおり宅地化を願う者。宅地化の後のマンション建設の受託を狙う者、首都を取り巻く環状線の建設の進展を見込んで、ここからの道路引き込みの工事を受託したい者、数万坪の流通センター用地をここに確保したい者、この地に温泉を掘って観光地にしたい者など、農家というよりも、周辺の思惑が先行していて、農家の心を騒がせたことも事実だろう。これらに期待する農家もあったかも知れない。これらを嫌って農業の継続環境の整備を強く願っている農家もあったかもしれない。
いま、振り返れば、政治・経済・社会の環境は、宅地化ではなく農の近代化を求めるようになっていた。日本を含む世界が根こそぎ市民参加型社会に移行しつつあることが、食の安全と安定を求める市民の強い声になり、農の重要性に目覚めさせるエネルギーになっているようである。
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補:私は、システム屋であるが、世間が「高度情報化社会」と言うことに大変違和感を感じてきた。「高度情報化社会」といわれるものは、市民参加型社会への変貌期を意味しているに過ぎないというのが私の実感である。情報システムはその道具として発達してにすぎない。本質を忘れた議論は私は嫌いである。このことは、1980年代のマイコンブームのころから私はずうっと言い続けている。この話題は数日前大阪で行われた研究会でもお話してきたので、また後日触れることにする。
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3月16日、この矢切耕地に係わる講演会が開かれた。都市整備本部長の峯岸氏のお誘いで、私も聴衆の一人として参加した。
講演会の名称は「第一回矢切耕地の将来を考える農家組合協議会による講演会」である。
参加者は、矢切耕地の将来を考える農家組合のメンバーらしい農家が20数名、都市整備本部の峯岸本部長、勝間氏や上野氏など都市整備本部のメンバー数名、農家組合の事実上のまとめ役である深山市議、中川元市議会議長、澁谷市議、松戸都市総合開発山田社長、など顔見知りのかたがたが参加しており、その他の人を入れて約50名である。講師派遣団体関係者も数名来場していた。
司会は、深山市議(深山建設社長)が勤め、冒頭に、農家組合協議会の会長高安勇氏、都市整備本部長峯岸氏が挨拶し、(財)都市農地活用支援センター尾崎莞爾氏が市街地の農地政策と講師山本雅之氏の紹介を行った。今回の講演は、国の予算によるアドバイザ派遣事業の一環ということである。
講師山本雅之氏は(社)JA総合研究所に属しており、東大工学部建築学科卒という。工学出身で、農の仕事をされてきた珍しい方である。
講演の趣旨は、市街化調整地域では宅地化せずに農地の保全と活用を図ることを基本に儲かる農業経営を行わなければならない、という基本方針を説明し、その具体化のために、「ファーマーズマーケット戦略」(JA千葉など19箇所の実施例)と「体験農業戦略」(練馬の例など)を組み合わせるべきであるとした。具体的な事例を詳細に紹介した。彼の解説は国策そのものである。
この施策は、農家やJAの自助努力を促す方針であり、以前のように直接補助金をちらつかせるような方針ではない。国家は、小泉政権成立時以降、軍備増強と自立支援、多額納税者優遇に転換しており、補助金や福祉によるいわゆる国民買収政策をやめているのである。
そういえば今年の国会では、農地法および関連法案の改訂が予定されており、市街化調整地域の宅地化に対する制限が厳格化されることになっている。それらの施策と対応する農業振興策なのである。
この講演は、レクレーション施設建設や宅地化推進、マンション建設などの考えを、すっかり破壊しつくすほどの破壊力のあるものだった。
国の方針は数年前からこちらに向かっていたのである。峯岸本部長ら市役所サイドが根回しして実現したこの講演会は、矢切耕地の開発の方向性に急カーブをきるためのためものだったであろう。
会場の農家は一切意見を述べなかった。今月26日に農家組合協議会を開いて検討すると深山市議は述べていた。農家組合協議会での苦渋の議論が予想に難くない。地元農家の同級生も多い私は、その苦悩をおもいやると、言葉も出なかった。なによりも農家の皆さんでの十分な議論が必要だろう。
そのうえで、山本講師がいうように、農家が、生産ばかりではなく販売の主導権をも握るファーマーズマーケットや体験農業に希望を持って取り組むのは悪くないと思われた。千葉大が推進する土地あたり生産量40倍にはなる植物工場なども取り入れれば、"農長者"への道も開かれるのではないだろうか。私のような市民も、これらの方策には力の限りご協力を惜しまないつもりである。
さて、一部にはすっかり不機嫌で、イラついた質問をして、帰りがけもご立腹のご様子のまま急いで帰ってしまった方もいた。
峯岸氏は、農の活性化に体験農園などのリクレーションも取り入れることで温泉施設は入れられないにしてもリクレーション導入派などの支援は取り付けたい意向のようである。
講演者の山本氏とは名刺を交換し、後日、改めてご連絡させていただく約束をした。千葉大学長の古在先生が会長を務め、私が事務局を務める「学術の森松戸(準)」と協調しうるお考えの持ち主と見えた。
まだまだ紆余曲折はあるだろうが、わが街の農業の行くべき方向性については、バブル期の大きな迷走以来、ようやくその方向性を見出す時期に到達しているようにみえる。

△次の記事: 街に活力を(10)
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琵琶

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