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「障害者自立支援とIT教育」:第52回SH情報文化研究会の開催--感性的研究生活(23)

2007/05/26
「障害者自立支援とIT教育」:第52回SH情報文化研究会の開催--感性的研究生活(23)

5月26日(土)、私と家内が主催するSH情報文化研究会の第52回研究会が開催された。
この日は、なんと女性が60%という、このSH情報文化研究会の歴史始まって以来の華やいだ会となった。
会場は、初めてお借りした早稲田奉仕会のセミナー・ルームである。
主たるテーマは「障害者自立支援とIT教育」で、またしても、世間の目からみれば、異色研究会となった。
発表者は3名である。発表者の人々は、それぞれ肉体労働を主たる仕事にしている日本で最大の規模を誇るボランティア団体ワーカーズ・コープ(労働者協同組合)、身体障害者の自立支援を手がけて40年以上の実績のある(福)東京コロニー、IT教育の専門家集団の(有)グレイスである。これらの人々は、たまたま私が知り合ったというだけで、互いには全員初顔合わせとなるのである。
私と家内は、会場に向かう道すがら、かなり心配していた。これらの人々は、その業界ではみな著名人である。背景にあるものも歴史も深くて重い。会の成否が気がかりだった。まず聴衆がそれほど集まらなかったら、・・・、お互いに利害の対立する部分があったら、・・・、否、思想信条にかかわるフリクションがあったら、・・・、と心配のタネはいくらでも思いついた。
開場15時、開始15時半であった。幸か不幸か、私はこの日出講予定の大学が麻疹(はしか)の流行のため閉鎖となり、開場の時間にも間に合った。開始時間が近づくと、人々は続々と集まって来た。前回は聴衆がひどく少なかったのに、今回は会場はほぼ満席となってしまった。
発表順をやや変えて、(有)グレースの服部恵社長、労協の鈴木晴彦理事、(福)東京コロニーの堀込真理子課長の順にご発言していただいた。実は、売れっ子の堀込女史が別のお仕事の関係で、会場到着がやや遅れれることが判明したからである。
(有)グレースの服部恵社長は、提携先の(有)アンクオル(伊藤敏子社長)に所属する身体障害者向けのIT教育プログラムの概要を紹介して、教育の内容によっては身体障害者であっても効率の点で健常者に負けない人材の育成ができるだろうという説明をした。
熱い質疑が続いた。そして恒例の出席者全員の自己紹介が行われると、互いの予期せぬつながりがあることが次々に明らかになった。たとえばNECソフトウエア(株)のマネージャが一人聴衆として来場していたのだが、NECソフトウエア(株)は、身障者雇用では先進企業として知られる会社である。(福)東京コロニーで教育を受け、(福)東京コロニーの就業支援でNECソフトウエア(株)に就職した人材もいた。(有)グレースは、身障者案件とは別のIT教育事業での取引がNECソフトウエア(株)には存在した。聴衆の一人は、そのご子息が労協センター事業団に就職活動を仕掛けていた。自己紹介の前には、やや硬い表情だった皆さんの顔は一気に親しみに満ちたものに変貌していた。心配は、まったくの杞憂に終わった。
労協の鈴木晴彦理事は、これから取り組もうとしている身障者就業支援事業の計画のあらましを紹介した。来月の全国大会に報告される内容ということなので、きわめて異例な事前発表ということになる。鈴木晴彦理事は厚生労働省のご出身ということで、制度についての知識が豊富で、組織の豊富な人材と資金力を持ってすれば、成功間違いなしと思われた。
(福)東京コロニーの堀込真理子課長は、もっとも地に付いた実戦経験にあふれる内容だった。NECソフトウエア(株)に就職を仲介することに成功した事例については、NHK総合テレビで報道されたことがあり、その映像も映写された。3分半という簡潔な映像でありながら、わかりやすく、希望に満ちた内容だった。一方、現実は、それほど甘いものばかりではないということもリアルに説明された。手が不自由な方が、全身を使って、特製の操作ボールとペンとキーボードを操る様子が映し出され、この過酷な作業がこの方の股関節に負担をかけて故障を引き起こして、今は休養しています、との説明があった。続いて、口にくわえたペンで、器用にすばやくキーボードをたたく青年の映像が流れたあと、この方は映像でも明らかなようにクビの筋肉に負担が大きくて、体を壊されてしまいました、と説明がされた。身障者にとっては、残された身体的能力を最大限利用して、少しでも効率よく、良い仕事をしたいという気持ちが高いこともヒシヒシと伝わる映像だったが、そのことがかえってご本人の身体・健康を害してしまうこともあるという事実は、私にはひどくこたえた。また、(福)東京コロニーのIT教育コースでは、重度身障者に限って、1学年当たり5人を限度に2年間にわたる教育が実施されるが、その間にお亡くなりになってしまう方も後を絶たないという厳しい現実も明らかにされた。長く実践にかかわってきた方だけが語りうる真実ではあるが、心臓がえぐられるような思いで、私は聞き入っていた。

第52回SH情報文化研究会「障害者自立支援とIT教育」………………………◆
【日時】5月26日(土) 15:30~18:30
【場所】早稲田奉仕園セミナーハウス
【発表内容】
・重度障害者にたいするIT教育(グレイス代表 服部恵)
・障害者就労と社会的協同組合(労協連合会理事 鈴木晴彦)
・身体障害者の就労支援(東京コロニー職能開発課長 堀込真理子)
【懇親会】18:45~ 会場近くの居酒屋にて
研究会会費 無料(いつも無料)
懇親会会費 実費3000円くらい(学生半額) 発表者は無料。
……………………………………………………………………………………◆
懇親会は、近くの小さな居酒屋さんに飛び込みで入って行った。お忙しい方々は帰られたので懇親会では女性4名男性4名の8名になったが、議論風発、にぎやかなことになった。
店は、早稲田大学のゼミのグループらしい6名と我々8名で、満杯という状況で、後からくる客はすべてお断りとなった。
うれしいことに、予期を裏切って、出てくるお料理はどれも素朴でおいしくて、びっくりするようなものばかりだった。お店の主人の言うままに、"お任せ"にしたのだが、フキとタケノコのあわせ煮(あっさりしていておいしい)、お刺身盛り合わせ(新鮮、うまい)、えんどう豆(どうしてこんなに味が違うの!)、フキノトウの味噌和え(お酒が進む~~)、・・・、極めつけは山菜のてんぷら(岩塩でいただく、思い出しても、ついつばが湧く)。思わず訊くと、ご主人は山口県の秋芳洞に近い山深いあたりのご出身だそうで、山菜は地元のおばさんたちに山で取ってもらったものだそうである。いくつか見たことのある山菜もあったが、まったくお初にお目にかかるものもあって、驚きと感激の連続だった。食いしん坊の私だけではなく、参加者の皆さんの話題も次第においしい食べ物の話題に移って、お開きになった。
研究会では、頭と胸がめまぐるしくいっぱいになった。懇親会の前半は続く議論で熱く熱くなっていった。懇親会後半はお腹と心が満たされた。
また、お会いしましょうと何度も言い合って、名残惜しくも皆さんとお別れした。いや、本当にまた皆さんが集まれるような会を企画しようと心に決めた。


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琵琶

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第2回「新・田園構想」研究会への参加--感性的研究生活(22)

2007/05/23
第2回「新・田園構想」研究会への参加--感性的研究生活(22)

5月23日(水)、千葉大学園芸学部(千葉県松戸市)で、第2回の「新・田園構想」研究会が開かれた。開始直前までは「田園都市」というテーマだったが、終わる頃には、「都市開発」という言葉はやめようという事になっていた。とりあえずここでは「新・田園構想」ということにしておく。
出席者は、お忙しい古在先生が欠席されたほかは、第一回のメンバーは全員参加していた。大学院生も含めて20名ほどである。私は慶応大学日吉に出講する日と重なったので遅れて参加した。
相変わらずかなり内容の濃いものであった。

第2回「新・田園構想」研究会…………………………………………………◆
【日時】平成19年5月23日(水)18:30-22:30
【会場】園芸学部事務棟2階第2会議室
【出席者】菊池、飯箸、丸尾、斎藤(雪)、木下(剛)、櫻井、田代(順)、大石、萩野、植栽研4年生、藤井
【研究会構成】
1.E.ハワードの田園都市論の哲学と日本における展開:斎藤雪彦氏
2.新田園構想の理念と模式図:萩野一彦氏
3.計画策定の基本方針:大石武朗氏・植栽研4年生
4.整備手法の検討:萩野一彦氏
5.今後の日程など
……………………………………………………………………………………◆
報告内容の詳細を明かせないのが残念だが、力の入った報告が続いた。特に、萩野氏の報告は相変わらずメリハリの利いた内容であった。菊池学部長のコメントは的を射た的確なものであり、藤井教授の司会は手際よかった。私は、地元の動きや、国の政策の転換などについて説明した。

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「自律的相互学習」を聴く、第13回次世代大学教育研究会--感性的研究生活(21)

2007/05/19
「自律的相互学習」を聴く、第13回次世代大学教育研究会--感性的研究生活(21)

5月19日(土)、早稲田大学で、第13回次世代大学教育研究会が開かれた。
参加者は十数名だったが、最近数回は参加者が数名というややさびしい状況だったので、かなりの賑わいにかんじられる。
私は、駿河台の授業の後、タクシーで駆けつけた。
主催挨拶が始まるちょうどそのときに会場のドアにたどり着いた。私の主たるお目当ては、早稲田大学の原田教授の講演(「自律的相互学習の実証を目指して」)である。
原田教授のお話の順番は最後となっていたので、最後のお楽しみということである。
まずは、大阪経済大学の家本教授の「大学教育の終焉と創造」を聴く。過激な家本節を心地よく聞いているうちに、家本教授が「大学の卒業資格」を提唱していることに話題が及び、実は私学大学協議会の多くの皆さんから、頑強な抵抗にあっているのだということが語られた。抵抗の理由は「国家の統制」になる危険性ということにあるらしい。ならば、第三者機関を大学関係者や財界人らで作ったら、良いのではないか、と内心思ったが、質疑の時間になると常連ではない他の方の質問が続いたので、常連である私は遠慮することにした。しかし、後で思えば発言しておいたほうが良かったかもしれない。
次は、eLerning専門企業の一つ、eエデュケーション総合研究所の井上社長の「教育情報化進展プロセスの日韓比較」である。ネット文化の先進国、韓国のネット活用教育の現状を伝えた内容である。実際、日本ではかなり華々しいマスコミ報道やネット大学院などの話題にもかかわらず、ネット活用教育が教育現場にはそれほど浸透しているとはいえないのが実情である。井上氏によれば、「通信教育の電子化」と「対面教育の電子マネージメント支援」ははっきり区別されるべきであり、先進国勧告ではすでにそうなっている、ということであった。日本では、対面教育を通信教育化して行くような話題ばかりが先行しており、本来対面教育の良い点である、人格が介在するという教育のあり方がともすればネグレクトされてしまうことに強い懸念が表明された。同感であった。
さて、休憩を挟んで、(私にとって)お待ちかねの原田教授(早稲田大学)による「自律的相互学習の実証を目指して」であった。同一のテーマで科研費をいただく研究をされているようで、その中間的な発表のようだった。英会話をパソコンとネットを活用して教えようというものだが、注目されるのはクラスの学生を3人一組のグループにして、発表し、英語で対話させるという点である。教室風景のビデオも映写されたが、英語の言葉が思い当たらずに立ち往生する学生仲間がいれば、すかさず、他の仲間が英語の言葉を補足しようと声をあげるという状況が随所に見られていた。最近、この研究のために各学生の顔の映像と音声がCCDカメラとマイクで集められるようになったのだが、データの解析は膨大すぎるので到底追いつかないということだった。しかし、CCDカメラとマイクを前にすると学生らが日本語を避けて楽しげに英語で語ろうとしている様子が見られると言うことだった。若者は人に見られることで進歩するのである。原田先生はそこまで言及はしなかったが、私の経験では若者の特性なのだと確信している。グループの活動は自律的に進み、教師はお膳立てをするだけで学習効果が向上するというもので、一見、教師のための手抜きシステムかとも見えるが、この授業をあらかじめ企画し、お膳立てし、授業中もその後もフローすると言うのは大変な労力が必要であることは容易に推測できる。こともなげに授業の様子を語る原田先生に驚嘆しながら、お話を聞き終えた。質問の時間がやって来たので、いくつか質問した。その結果、グループの人数は3名に限定していること。毎回メンバーはランダムに入れ替えていることなどが説明された。この点は、私のグループ学習とやり方が異なるので、今後よく比較検討をしてみたいと思ったところである。私は、3人から7人までのグループを学生が自発的に構成するように促し、入れ替えや解体、創生は自由という原則にしている。私が聞いてみたかった最重要の質問は、「私の授業では、グループ活動に落ちこぼれる学生が1-2%あり、この学生らは、著しく成績の伸びが悪く、単位を落とす傾向がある。原田先生の実践ではいかがでしょうか」という点であった。原田教授のご回答は「自分(原田教授)の授業でも、グループ活動に乗り切れない学生はいて、この学生は明らかに落ちこぼれてゆく傾向が見られる」というものだった。学生の社会性を伸ばしつつ、学習効果も高めて行こうという私の教育実践の手から漏れてゆく学生が実際のところわずかにいるのである。悔しくてならないのだが、原田教授のような大ベテランの先生においても同じであることがわかった。ここは、一工夫すべき何かがありそうである。いまだに解答は見つけられないが、私一人の問題ではないことがわかれば、教員の個性の問題ではない何かがあるということになるのである。

第13回次世代大学教育研究会………………………………………………◆
【主催】次世代大学教育研究会 http://groups.yahoo.co.jp/group/next-edu/
【共催】早稲田大学総合研究機構情報教育研究所 http://www.decode.waseda.ac.jp/reloaded/index.html
【後援】明治大学情報基盤本部http://www.meiji.ac.jp/isc/
【日時】2007年5月19日(土)
【時限】15:00~18:00(有志の懇親会を企画しています)
【教室】早稲田大学西早稲田キャンパス8号館
15:00-15:05 主催挨拶 家本修(大阪経済大学)
15:05-15:10 後援挨拶 原田康也(早稲田大学)
15:10-15:50 「大学教育の終焉と創造-かすかな光を求めて-」、家本修(大阪経済大学)
15:50-16:00 Q&A
16:00-16:10 休憩
16:10-16:50 「教育情報化進展プロセスの日韓比較」、井上博樹(eエデュケーション総合研究所)
16:50-17:00 Q&A
17:00-17:10 休憩
17:10-17:50 「自律的相互学習の実証を目指して:英語授業デジタル化プロジェクト中間報告」、原田康也 :早稲田大学法学学術院教授・情報教育研究所所長
17:50-18:00 Q&A
18:00-18:10 移動
18:10-20:00 懇親会(早稲田大学大隈会館1階の楠亭)
……………………………………………………………………………………◆
懇親会では、阪井教授と家本教授の楽しくて鋭いお話を聞き、よった勢いでいろいろとチャチャを入れたりしたが、その傍らで英語教育のベンチャー企業を立ち上げた人々(もともと日航の客室乗務員の方たちが中心)との会話も進んだ。
良い気分になったところで、一次会は散会となった。二次会に向かう方たちも多かったが、私は、おいとまを請うて、会場を後にした。
実は、次週に予定している第52回SH情報文化研究会の会場(日本キリスト教団早稲田奉仕会のセミナー・ルーム)が、早稲田大学の近くにあり、下見もしていなかったので、様子を見ておきたかったのである。馬場下町交差点を少し上って、右手にそれはあるはずである。ほろ酔いかげんで、交番のおまわりさんに会釈して、ゆるゆると坂道を登って会場を確認した。

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TRIZの雄と再会、会談と会食--交友の記録(16)

2007/05/07
TRIZの雄と再会、会談と会食--交友の記録(16)

5月5日(土)、連休後半の一日、中川徹先生(大阪学院大学情報学部教授)とお付き合いすることになった。20数年ぶりの再会だが、まったくそんな気はしない。髪の毛はさすがに白くなっていたが、やさしげなまなざしと物腰は昔のままである。
中川徹先生といえば、「発明問題解決の理論」として国際的に有名なTRIZの日本における紹介者・研究者としてたいへんに名高い。当然、ご存知の人も多いだろう。
彼は、私の大学の先輩で当時は助手をされていた。物理化学の専門家である。その後、私が化学の専門出版社に編集部員として勤務していたころ、「化学者のためのFortran入門」という書籍の執筆をお願いした。我田引水だが、この本の出版が、"情報科学の"中川徹先生誕生のきっかけになったのではないかと密かに思っている。中川先生はその後富士通総合研究所に研究員として勤務され、海外研究者との交流も大きな仕事の部分にしていたが、そこで遭遇したTRIZの研究者の話に感銘してTRIZに取り組むことになったのだそうである。
彼の実家は偶然にも私の町の隣町であり、この連休は帰郷されていたのである。連休初日に突然メールが届いて、会おうということになった。
松戸の駅で待ち合わせたが、私には一抹の不安があった。私の体型はかなり変化している。以前お会いしたときには、どちらかといえば細かった。しかし、今は、かなりのデブである。彼に私が発見できるだろうかということがかなり心配だった。私は、彼が来そうな方向に眼を凝らしていた。私のほうが先に発見しないと再会できないに違いないと思ったからである。しかし、それは杞憂だった。私の背後から、いきなり肩をたたく人がいる。振り向くと懐かしい中川先生の顔があった。うれしかった。
彼は、TRIZの新しい本の翻訳出版を計画していた。私に協力を求めるというのが今回の面会の趣旨だった。お会いして、駅前近くの喫茶室に入ってお話をうかがった。当社の出版は、当社にとって主たる事業ではなく、システム開発のサイドワークであり、版元として名前のつく出版事業以外はしていない。出版は社内では私の(つまり社長の)道楽と見られている。しかし、社名が明記される出版であれば、システム開発会社としても名誉に直結する事業なので、システム開発だけをもっぱらにしている社員らにも理解が得られる範囲である。一方、彼は、当社のテクニカルエディティング能力だけを活用したいという意向だった。彼には民間でコンサル業をしているパートナがいて、そのパートナのビジネスを尊重しなければならない思いも強いのである。彼の頼みなので当然無碍にはできないのだが、私は厳しい社業を継承してもらおうとしているさなかに、私が社業優先の点で社員の範にもとるような行為を行うことはできないのである。私は恐縮して、事情を説明して平にご容赦をとお詫びした。彼は快く了承してくれた。
やがてころあいも良い時刻となったので、かねて、めぼしをつけていた「歌行灯」に出かけて、夕食となった。お話は進んで、TRIZに取り組むことになった経緯や世界的な研究の動向、これから出版が予定されているいろいろな書籍など、わくわくするようなお話が続いた。研究の最先端にいるということは本当に楽しいだろうな、とうらやましくも感じている自分がいた。私からは、自分が担当している「問題発見ゼミ」のいろいろなどを説明し、TRIZのホームページを学生らに紹介しているなどの事柄をお話した。
彼はビールを中ジョッキで1杯、私は焼酎をロックでいただいた。すぐに食事(釜揚げうどんのセット)が来てしまったので、お強いはずの中川先生もそれ以上は飲まれなかった。注文の仕方を失敗した、と内心猛省したが後の祭りだった。やや心残りだったが、ひとまず再会を期してお開きとなった。
支払いは私が済まそうとすると、中川先生は「ボクのほうがたぶんお金持ちだから、払わせて」といって譲らない。まぁ・・・、確かに中川先生のほうが私よりもお金持ちだろうし(^^;、と躊躇するとすかさず「ボクのほうが先輩なんだから、言うことを聞きなさい」とやんわりと一喝されてしまった。ずるいよ、先輩、まいりましたァ、と内心叫んで、お支払いは先生がすることになってしまった。
次の機会には、もっとじっくりやりたいものとこころに誓った。この次は私に払わせてください。

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