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スタグフレーションを乗り越える産業改革を--情報社会学、予見と戦略(21)

2008/07/25
スタグフレーションを乗り越える産業改革を--情報社会学、予見と戦略(21)

日銀の否定にもかかわらず、現在の日本経済はスタグフレーションに突入し始めており、これからの回復には、大幅な産業改革が必要になるだろう。
このシリーズの趣旨からからは少し逸脱するが、自己欺瞞と慢心のままでは、われらはそろって座して死ぬばかりである。あえて、私の見解を述べることにした。

アフガン開戦からイラク侵攻に進んだアメリカは、そのころから抜き差しならぬ泥沼に突入していた。
アメリカは人口にすれば1%内外のお金持ちから買いたたかれているのである。1%内外のお金持ちにおもねる以外にアメリカは国家としての成立は危ういのである。1%内外のお金持ちが「税金が高い」「自分たちのために軍隊を使わない」という不満を抱けば、別の国にさっさと出てゆくことになるからである。国家は世界のお金持ちからもはやコケにされているのである。
この現象は、アメリカばかりではなく、カナダ、ユーロ、日本など主要国家すべての状況である。

国連大学の研究所の報告によれば、世界の1%の金持ちが世界の40%の資産を握る時代である。資産所持額が少ない人口の50%では、全部の資産を合わせても世界の資産の1%にしかならないのである。
世界の富の集中と格差拡大、国民国家の命運--情報社会学、予見と戦略(8)
このお金持ちの1%のうちの9割が、北米、ヨーロッパ、日本などの主要10か国に集中している。この人たちの税金をあてにそれぞれの国民国家はその国家財政をまかなっていると言って過言ではない。国税は多かれ少なかれ累進課税になっているので、この人々の納税が、各国の財政の過半を占めていることは想像に難くない。どの国も、これらの人々にそっぽを向かれたら国家が成立しなくなるのである。
アメリカは、必然的に石油利権を求めてイスラム圏に大軍を送ったのである。単なるブッシュの思い付きではない。

そもそも、国家の軍隊はその国民のためにこそ力を発揮するが、国境を越えてお金稼ぎに血道をあげる世界的お金持ちの思惑のためには、力は発揮できないものである。アメリカは、アフガンでもイラクでもイランでも敗れるだろう。
アメリカ・ブッシュの思惑は外れて、原油が値上がり経済が減速を見せると、右肩上がり経済をあてにしたサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)は破たんした。続いてプライムローン(優良所得者向け住宅ローン)も事実上破綻に向かってまっしぐらである。この破綻は世界の金融システムに大きな負担となっている。

原油が値上がりすると自動車用のガソリンが上がる。これは、すでに日本でも身近な困難として湧き上がっている。現在、値上がりは一段落したかに見えるが、行き過ぎた先物取引が一時パンクしただけで、原油の国際取引のひっ迫状況が変わったわけではない。
原油が値上がりすると、バイオ燃料のために小麦などの食料品が原材料として奪われて、値上がりした。といわれている。しかし、実態はもっと複雑で、バイオ燃料のために小麦などが値上がりしている部分もあるが、アメリカ国内では、小麦生産量が減少傾向にあるのではないかと推測されるところである。このあたりの正確なデータは今のところ存在しないので推測の範囲を出ないが、ロッキーの地下水脈を収奪し使い尽くして小麦を増産してきたアメリカの小麦農家がもうこれ以上深く井戸を掘ることができなくなっているのではあるまいか。掘れたとしてもそのコストはすべて小麦の価格に転化されなければならない。深い井戸から水をくみ上げるためには大量の油も必要である。小麦が値上がりすれば、パンも麺も値上がりする。
小麦などの穀類が値上がりすれば、小麦などの穀類を食べて育つ牛などの家畜類の値が上がる。これも当然の帰結である。日本の店頭の肉類の価格もじわじわと値上がりしている。
魚類は、中国やヨーロッパでも大量に消費されるようになって、すでに値上がり傾向にあった。中国やヨーロッパで大量消費されるようになれば日本以外の漁船が安い人件費を武器にどんどん活躍する。資源は減少し、日本の漁船はその生存を脅かされてきた。そこにきて、原油の値上がりは、赤字操業を余儀なくされる臨界点に達してしまった。漁業関係者は、操業停止とデモで政府の無策に対して抗議の意思を示し、流通に値上げの圧力をかけた。

値上げラッシュはまだ続くと思うのが当然の予測である。しかし、日銀総裁の白川氏は、便乗値上げを警戒してか、まだ慎重な発言に終始している。

TBS News
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白川総裁、スタグフレーションを否定
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3900677.html
2008年7月15日(火)
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日銀の白川総裁は、日本経済の足元の状況について景気が悪化する中で物価が上昇する「スタグフレーション」の状況にはないとの認識を示しました。
「結論から言いますと、スタグフレーションの局面に入ったとは判断していません」(日銀・白川総裁)
日銀の白川総裁は会見でこのように述べ、日本経済は物価の上昇と景気の後退が同時に起こるスタグフレーションの状況にはないとの認識を示しました。そのうえで日本経済は「物価安定のもとで持続的な成長を続ける可能性が相対的に高い」と強調し、消費者物価の上昇率についても「当面やや高まった後、徐々に低下していく」との見通しを示しました。
一方、アメリカ政府が住宅金融会社に対する救済策を打ち出したことについては、「アメリカの住宅市場、金融市場の安定に資することを強く期待している」と述べました。(15日17:47)
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しかし、白川総裁は、就任直後の2008年5月27日に開かれた参議院の財政金融委員会で日本がスタグフレーションに陥るおそれがあるという認識を示しているので、7月15日の会見はこれを鎮静化させようとしたもののように見える。
このような会見は、スタグフレーションにまっとうに立ち向かうべき政財界の姿勢を忘れさせるもので、私は賛成できない。
私は、今日本経済はスタグフレーションに突入したか、突入直前の踊り場にいる、と断定すべきであると思うのである。
スタグフレーションとは、原材料の値上がりによって、物価は上がるのに雇用や賃金は減少するという現象なのである。これらよって預貯金などは減少に向かう。物価は上がるとインフレーションではないかといわれるが、インフレーションの場合、物価は上がるのにつれて雇用や賃金も増大するのである。なぜ、スタグフレーションのような現象が起こるのか、それは需要が高まっていないのに輸入原材料の値上がりのような外的な要因で物価が上がっているからである。今回の現象も、需要が高まって物価が上がっているわけではないことを見れば、明らかにスタグフレーションなのである。
今は少なくとも、スタグフレーションに立ち向かう視点が必要である、と私は主張する。
省エネと技術革新による安価な消費製品の提供が解決策である。
今回、問題になっているのは工業製品の値上がりというよりも農産物と魚類の値上がりである。ここに、もし安価な農産物と魚類の供給が可能になれば、その業者も大きく利益を上げるだろうし、国民経済にも大きな貢献をすることになる。農業と漁業の画期的な転換が必要である。政府は、そのための誘導策と支援策を早急に策定して、実施に移すべき時であるとわたくしは思う。まだ、スタグフレーションという段階ではない、などと、自己欺瞞で自らを慰めているだけではこれから巻き起こる不況の嵐を乗り切ることはできない。

1.農業は、生産を工場化すべきである。
2.漁業は、養殖にシフトすべきである。

1.農業の工場化
葉物は植物工場が既に実用になっている。植物工場は露地栽培の40-50倍の生産性がある。汚い、キツイ(中腰作業)から農家は解放される。
空いた土地は、太陽電池を設置してもよいし、他の農業用地としてもよい。
穀物や根菜類はまだ研究途上である。研究助成を強化すべきである。

2.漁業は、養殖へ
牡蠣やエビ、フク、ハマチ、 についてはよく知られているが、フィリピンに進出した日本人によるマグロの養殖も年々大規模化している。天然カツオに近いものを目指すと養殖はコスト高でビジネスにならないがハマチにすれば手ごろな価格になったように、マグロも天然もの本マグロを目指すのは必ずしも有利ではない。本マグロの子供「めじ」を目指せばもっと普及するかもしれない。
サバなども実用段階なので、マグロの子供を産ませる借腹用にも、食用にもなるだろう。
ガソリンを使う漁業はもう転換を迫られている。

農業と漁業に技術革新の余地は大きい。国民経済を救うのは農業と漁業の技術革新であると思う。

さて、これらの事業は市民参加社会にふさわしく、農業や漁業を志す人々の創意工夫を結集し参加者によって導かれるべきである。政府は、側面援助に徹して、彼らの発意を尊重すべきである。参加者を規制するのではなく、規制を緩和して他産業からの参入を促進し、最初の一歩を援助したら、あとは市場原理に任せて業態の変化を市民・農民・漁民を信頼してゆだねることが肝要だろう。
事業主体としては農協、漁協ばかりではなく、株式会社、NPO、労協、有限責任事業組合なども考えられる。

さてさて、ご同輩。一歩進めて、市民参加社会にもっとふさわしく、国や行政のお声かがりを当てにせず、我々だけで、これらの産業改革に取り組んでみてはどうだろうか。いまこそ、工場農業と養殖漁業である。若者も退職団塊世代も、我こそはと思う者は、手を組んで、最新の科学技術を投入し新しい時代を創りだしてしまうのも悪くはないのではないだろうか。事業形態は、農協、漁協、株式会社、NPO、労協、有限責任事業組合など、それぞれが取り組みやすい、動きやすいものでよい。運営の方法は「社会的企業」だろう。

もう、躊躇はいらない。走りながら考えよう。

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琵琶

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たまさかのこと--人生に詩歌あり(4)


2008/07/23
たまさかのこと--人生に詩歌あり(4)

7月22日
葛飾柴又の夏花火大会あり。たまたま列車にて通りかかる。

 鉄橋に 迫る花火に 沸く車中 たまさかのこと 妻と分かちぬ

琵琶

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「知能を育てる」再見--独創力の創り方(15)

2008/07/15
「知能を育てる」再見--独創力の創り方(15)

このシリーズでは独創性の創り方を取り上げている。
実はこのシリーズをはじめる前、別のシリーズ「心理・教育・社会性の発達」を書いていた。「心理・・・」のシリーズは今も書き継いでいるので、「独創力の創り方」のシリーズと並存していることになる。
シリーズ「心理・教育・社会性の発達」の中に、次のようなミニシリーズがある。当時、もし、「独創力の創り方」シリーズが始まっていたら、これらの記事は「独創力の創り方」シリーズの一部になっていたかも知れない。しかし、今は昔、そのときは、そのときの必要があって書かれたのである。いまさら、過去の経緯を消すことはできない。
一方、そこで書いた記事は、並存するこちらのシリーズにも関連が深い。
ここに再度同じことを書くのは気が引けるので、紹介するにとどめることにした。

ミニシリーズ: 心理、教育、社会性の発達「知能を育てる」(全6回)
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1."スキルvsナレッジ"でもなく"知vs識"でもなく-「知能を育てる(その1)」
2.楽しく越える「知性なき丸暗記」の限界-「知能を育てる(その2)」
3.人工知能に見る知能の構造-「知能を育てる(その3)」
4.ヒトの知能の構造と知能教育-「知能を育てる(その4)」
5.レインマン(サヴァン症候群)に見る小脳の能力と大脳の能力-「知能を育てる(その5)」
6.個性もいろいろ知能もいろいろ-「知能を育てる(その6、番外編:)」
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それぞれを、簡単に紹介すると、次のようになる。
1."スキルvsナレッジ"でもなく"知vs識"でもなく-「知能を育てる(その1)」
新設大学が増加し、既存の大学も学部や学科を次々に増設してきた。大学がやや過剰供給状態となり、ほぼ全入時代を迎えている。学生の確保が難しい大学は次第にその存続が危くなる。昔はエリートだったはずの学士様の権威も地に落ちている。実際、昔の学士に求められた天下国家を論ずることのできる学生がどれほどの数いるのだろうか、と考えると実に心もとないというのが大学の教員たちの実感である。
いっそのこと、「学問の府となる大学」と「スキル教育のための専門大学」に分けてしまえという議論も根強く続いている。しかし、待てよ。果たして、スキルとナレッジは別物だろうか、知と識が違うのか、議論の発端をこの記事は紹介している。

2.楽しく越える「知性なき丸暗記」の限界-「知能を育てる(その2)」
ヒトは、すべてのことをあらかじめ体験することはできない。未来に起こりうるかも知れぬことを遊びや芸能の中で仮想的に体験して、現に出現した場合によりよく対処しうるように備える生き物である。ヒトはあらゆる生物の中でもっともよく仮想現実を楽しむ動物であるに違いない。大人はすでに現実世界での体験から多くを学んでいるので仮想現実を求める度合いは少ないが、成長期にある青少年は、まだ見ぬ現実を仮想体験しようと本能が要求する。ママゴトなどの「~ごっこ遊び」はその典型である。古くは昔語り、芸能、演劇などがあり、近世以降は黄表紙などの文学、旅行記、現代は文芸、芸能、映画やビデオ、マンガ、さらにゲームが加わった。以前は「ろくでもない小説にのめりこむ青年」や「ろくでもない映画にのめりこむ青年」、「ろくでもないマンガにのめりこむ青年」がいた。いまは「ろくでもないゲームにのめりこんでしまう青少年」が大量にいるのである。青少年を待ち構える未来に備えるための仮想的現実の体験を求めるのはヒトの子供の本能である。それ自体は決して悪いことではない。良い悪いを言っても本能は変えようがない。
しかし、ゲームで大儲けをたくらんでいる大人が与えている仮想的な現実は、本当に子供たちの将来に役立つ正しいものなのだろうか。これこそが検証される必要があると私は思うのである。
たとえば人を次々に殺すと高得点でほめてくれるゲームがある。子どもたちは夢中になって遊んでいる。"人を次々に殺すとほめてくれる"というシミュレーションが繰り返し子供の柔らかい頭脳に刷り込まれる。もちろん"人を次々に殺すとほめてくれる"という現実もないではない。戦争である。しかし、それは、極めてまれな事例であり、限定された条件下でしか起こりえない。そのゲームは、その制約を教えているだろうか。否、その前に、「ヒトは殺すな・ヒトから殺されるな」という肝心な大原則は教えているのか。今の街中で当たり前にウサギやイノシシを狩るかのように人を次々と狩ルという設定でゲームは進行する。反社会性人格障害者の心象(心の中の風景)そのものがそのゲーム世界に展開されている。その刷り込みは正しいのだろうか。通常の現実は"人を次々に殺すとほめてくれる"はずがないのである。土浦の連続殺人事件、秋葉原の連続殺傷事件で犯人らの示した反社会性人格障害の兆候に世間は驚愕したが、かれらは"大人が与えた未来の練習問題=仮想的街中殺人ゲーム"で洗脳されてしまっていたと推定できるのではないだろうか。
ゲーム全般を禁止するのは無意味である。青少年が本能的に求める未来的現実のシミュレーションが、ウソかマコトかは別として、ここにあるからである。もしも、ウソと背徳とは無縁な、本来、成長して社会に暮らす正常な大人になることに必要なシミュレーションがふんだんに提供されているならば、これほど役立つものもないだろう。変化の兆候は表れ始めているがゲーム業界はむしろ率先して変わるべき所に来ている。
さて、人は楽しくなければ一生懸命になったりはしない。「知性なき丸暗記」は小中高の教育の抜き差しならぬ欠陥である。最近では大学生になっても自分で考える力のない学生がほとんどというとてつもなくつらい状況になっているのである。小中高校で不足しているのだから、と言って放置することもできない。やむをえない。えいっ、やっ。いっそのこと大学でクイズやゲームを授業に大幅に取り入れて、楽しい思考実験を学生に堪能してもらいつつ社会性と知性とを獲得してもらおうというのが私のがんがえである。こういうと、謹厳実直な諸先生からは授業中に遊ぶなとしかられそうであるが・・・。楽しくなくっちゃ授業じゃないというのがわたくしの考えである。

3.人工知能に見る知能の構造-「知能を育てる(その3)」
私は、人工知能に関係する実際的なお仕事をいくつもこなしてきた。人工知能の仕事にとりくむということは、ヒトの知能のモデルを作って実地に検証するということでもある。その結果到達している知能モデルは大脳生理学や心理学のモデルによく適合し、より広くてより一歩根源に迫るものがあるように感じられてならない。人工知能のモデルを使って、ヒトの知能を解説したのが、この記事である。
(イ)Q&Aインターフェイス/(ロ)推論エンジン/(ハ)知識ベース(知識のデータベース)/(ニ)知識獲得部/(ホ)知識獲得インターフェイス など。

4.ヒトの知能の構造と知能教育-「知能を育てる(その4)」
記憶の分類にラリー・スクワイアの表がある。現在ではもっとも権威あるテーブルである。一方に日本人の手になる、そのラジカルな改良版である「スクワイア・飯箸モデル」がある。「スクワイア・飯箸モデル」を基にして、知能教育の着目点を解説するのがこの記事である。ラリー・スクワイアの記憶の分類に「階層構造」を持つものはないが、「スクワイア・飯箸モデル」にはこれがあり、それらは人工知能における「フレーム理論」や「予期駆動型フレーム」などに対応付けられている。「スクワイア・飯箸モデル」は、現実のヒトの記憶を説明する場合にその説明能力が極めて高いもので、一歩真実に向かって進んだものと考えられるのである。

5.レインマン(サヴァン症候群)に見る小脳の能力と大脳の能力-「知能を育てる(その5)」
「スキル」の実態は、大脳の働き〔特にネットワーク型の知識の連結〕に大きく依存することななく小脳をよく働かせるものであり、知能は小脳の働きよりも社会脳獲得後のヒトの大脳の持つ能力をフルに活躍させることであることを示すものである。レインマン(サヴァン症候群)は、大脳の働き〔メタ概念とネットワーク型の知識の連結〕が弱くても、場合によってはヒトのスキルには影響がないという事実を示している。大脳の働き〔メタ概念とネットワーク型の知識の連結〕が弱いからいって、その人を無能呼ばわりにしたら間違いであるということである。
他方、ヒトの知能を育てるということは、スキル教育のような反射的な小脳的能力を強化する丸暗記だけでは到達できないこと。大脳の働き〔メタ概念とネットワーク型の知識の連結〕を促進する行為がなければ知能は育たないことが説明される。メタ概念とネットワーク型の知識の連結は、実は、社会性の獲得とほぼ同義であり、社会性と知能は表裏であることも語られる。

6.個性もいろいろ知能もいろいろ-「知能を育てる(その6、番外編:)」
神様のいたずらだろうか、かけっこの早い子も遅い子もいるし、オリンピックで柔道の優勝を狙える身体能力のものもいる一方にどんながんばっても町の道場の白帯以上になれないお兄さんだっている。知能にも、ノーベル賞をとれる程度のヒトもいれば、どうがんばっても小学校低学年のわが子の先生にしかなれないよいお父さんもいる。
個性もいろいろあるから面白い。身体能力にもバライティがあるから興奮して面白い。知能にもいろいろあるということを理解して、各自それなりの進歩を各自楽しむことを貫けばよいのではないかと思う。君も私もすべてがノーベル賞を取れるわけではないというわけである。いろいろな知能の種類と程度はそれぞれに個性と考えるべきではないだろうか。人々は、同じ個性の集まりを好まず、いろいろな個性の集まりを楽しむものである。

関心がもたられたら、それぞれの記事を読んでいただければさいわいである。

△次の記事: 独創力の創り方(16)
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琵琶


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関一彦氏のご逝去--交友の記録(33)

2008/07/14
関一彦氏のご逝去--交友の記録(33)

名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻(化学系)教授の関一彦氏が、亡くなられた。
最初に転送されてきたメールの文面は下記のとおりである。
--------------------------
本学理学研究科 関 一彦 教授(60歳)におかれましては,かねて病気療養中の
ところ,平成20年6月30日(月)ご逝去されましたので,ここに謹んでお知らせ
いたします。つい先週までメールでのやり取りをさせていただいておりました。研究
室をお預かり申し上げる身として、これほど辛い・悲しい出来事はありません。
(後略)
--------------------------

私にとっては寝耳に水だった。ごく親しい人には昨年の暮れから白血病の治療をしていると打ち明けていたようだが、私は知らなかった。
私たちは歳をとったので、確率的には誰かの訃報が聞かれてもおかしくないのだが、心の中では、なぁに、同級生の連中はいつも元気で活躍しているのさ、と高をくくっていたところがある。
こうして、また一人欠けると内心がっくりとしてしまった。目ざとい私の妻は、どうしたのかと何度も訊ねてくるのだが、自分でもうまく説明できないような空虚な感覚があったのである。
彼と特に親しかった二人と私は、同級生らにあわただしく連絡した。
関一彦君は、東京大学理学部化学科で私と同級生であった。頭の良い友人たちの中でも、ひときわ光っているひとりだった。一時期は、物覚えの力に溺れてものを考える力が足りていないとご本人が嘆いて、猛烈に雑多な本を読みあさっていたこともあるが、そもそもそんな心配もないくらいの能力を備えていた。要するに、自己を評価するには常に謙虚、繊細で用心深い性格だったともいえる。常に自己研鑽を怠らず、努力する人だった。父親も著名な物理化学者だったので周囲の期待という重圧もあったと思う。
同級生といっても、破天荒な人生を送ってきた私とは一番遠い、正統派の学者の道を彼はまっしぐらに進んでいた。
本人が残したホームページの記事から彼の略歴を引用する。最終更新日は、昨年(2007年)の5月30日である。このホームページもいつまで残っているかわからないので、ここに転記しておきたいのである。
http://mat.chem.nagoya-u.ac.jp/info/sekihomepage/indexseki.html
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氏名  関一彦
本籍地 奈良県
生年月日 昭和22年11月7日
年齢   満59歳
学歴 
昭和41年3月   私立灘高等学校卒業
昭和41年4月   東京大学理科 I 類入学
昭和43年4月   東京大学理学部化学科進学
昭和45年3月   東京大学理学部化学科卒業(指導教官 赤松秀雄教授)
昭和47年4月   東京大学大学院理学系研究科化学専攻修士課程修了(指導教官 井口洋夫教授)
昭和50年3月29日 東京大学大学院理学系研究科化学専攻博士課程修了(指導教官 井口洋夫教授)
昭和50年4月1日 日本学術振興会奨励研究員採用 (指導教官 東京大学物性研究所 井口洋夫教授)
昭和51年2月29日 同上終了
昭和51年3月1日 日本学術振興会特定領域奨励研究員採用(指導教官 分子科学研究所 井口洋夫教授)
昭和53年9月30日 同上終了
昭和53年10月1日 分子科学研究所物性化学部門(井口洋夫教授)助手(発令者 文部大臣)
昭和56年4月14日 岡崎国立共同研究機構分子科学研究所物性化学部門(井口洋夫教授)助手(発令者 岡崎国立共同研究機構長)
昭和61年8月1日 広島大学理学部物性科学科非金属物性講座(太田俊明教授)助教授(発令者 文部大臣)
平成3年4月16日 名古屋大学理学部化学科教授(発令者 文部大臣)
平成8年4月1日 名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻(化学系)教授(発令者 文部大臣)
平成10年4月9日 名古屋大学物質科学国際研究センター教授(発令者 名古屋大学総長)
平成15年2月 名古屋大学高等研究院教授(発令者名古屋大学総長)
平成17年10月 名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻(化学系)教授(発令者名古屋大学総長)
平成18年1月 名古屋大学大学院理学研究科副研究科長(発令者名古屋大学総長)
(後略)
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トップページには、まだ元気なころの彼を写した上半身の写真が掲載されていて、すぐにでも語りかけてくるような柔和な顔がにこやかにある。彼は大学に現役入学だったが、私は浪人して入学したので、同級生といっても私よりも若い。なぜ・・・、私のほうが君より先に逝くのが順当だったはずなのに、と思ってしまうのである。
トップページには、次のような経歴が掲載されていた。
http://mat.chem.nagoya-u.ac.jp/info/sekihomepage/indexseki.html
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1947 年(昭和 22 年)兵庫県生まれ

(学歴省略)

昭和 58年 5月~10月 (1983) ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)内のハンブルグ放射光研究施設 (HASYLAB) に留学[故 E.-E. Koch教授]
平成元年4月~平成3年3月 岡崎国立共同研究機構分子科学研究所客員助教授
平成6年8月~平成7年3月   高エネルギー物理学研究所客員教授
平成16年4月~平成17年3月 早稲田大学客員教授
平成17年~平成21年 西安交通大学客員教授
平成19年~平成21年 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻客員教授

専門:
有機物性化学、とくに有機薄膜・表面・界面の構造と電子構造

研究業績
発表論文数: 303編以上 => 洋論文リスト  現在-1991年 1990年-1973年 和論文リスト
総説・解説: 52編(内英文 8編)(=>詳細)
国際会議での招待講演:  86件(基調講演 5件) (=> 詳細)
著書:25冊 (共著を含む)) (=>詳細リスト)
総引用回数:  5251回以上.

もう少し詳しい活動記録
******************
社会的活動記録
所属学会:
日本化学会、日本物理学会、応用物理学会、日本放射光学会、高分子学会、日本表面科学会、日本分光学会、日本放射線化学会、米国材料学会 (Materials Research Society)

刊行物編集:
日本放射光学会編集委員(平成5年~6年)
「表面科学」(日本表面科学会)編集委員(平成4年~平成15年3月)
Organic Electronics(Elsevier,オランダ)誌創刊編集者(2000~2006)
The Chemical Record(Wiley)国際編集ボード(2000~)
Physical Chemistry Chemical Physics (PCCP)国際編集ボード(2004~2006)

他大学での講義:
新潟大学理学部(昭和63年)
広島大学大学院理学研究科(平成3年)
東京工業大学理学部(平成6年)
関西学院大学大学院理学研究科・理学部化学科(平成8年9月)
大阪大学大学院工学研究科(平成9年10月)
放送大学(平成10年)「物質の科学・量子化学」(分担)
大阪市立大学理学部化学科(平成10年)
大阪大学大学院理学研究科(平成11年10月)
東京工業大学総合理工学研究科 (平成12年)
名古屋工業大学応用化学科(平成12年7月)
東北大学大学院理学研究科・理学部(平成12年)
東京大学大学院新領域創成研究科(平成13年)
東京工業大学応用総合理工学研究科(平成16年1月)
早稲田大学理工学部(平成16年6月)
慶應義塾大学理工学部化学科(平成16年10月)
早稲田大学理工学部化学科(平成17年1月)
大阪大学大学院基礎工学研究科(平成17年6月)
京都大学大学院工学研究科(平成17年10月)
東京大学大学院理学系研究科(平成18年10月)
東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻(平成19年6月予定)

Last update 2007.5.30
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「Last update 2007.5.30」の記載が胸をうつ。
このあと、多忙と忍び寄る病魔ゆえに更新ができなかったのだろう。存命であれば、まだまだ書き加えることが続いていたに違いない。
同級生が浄財を持ち寄って、葬儀には生花を寄贈した。この秋には、関君をしのぶクラス会も計画中である。
秋のクラス会では思い切り泣いてしまいそうで、困ったな、と思う。

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琵琶


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