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姪夫婦主催のバーベキューパーティ--オヤジと家族のお料理ライフ(21)

2008/08/29
姪夫婦主催のバーベキューパーティ--オヤジと家族のお料理ライフ(21)

先週の土曜日、すなわち8月23日(土)、夏休み休暇の最後の日ということで、車で2時間半かかる都内から材料を運んでわが一族の地でバーベキューパーティをふるまってくれた。
わが一族の地は、東京に接するベットタウンと言われる街にあるが、駅から2kmくらいあるので周囲はほとんど名産品であるネギの畑である。ネギ畑の中に、我が家と老母の隠居所、姉夫婦の家、弟夫婦の家が地続きで固まっている。
当日は曇り空。雨が心配されたので、弟の家のガレージを開放することになった。肉や野菜を焼く大きなコンロは私の家から、補助として使用する小さなコンロは姉夫婦の家から持ち寄った。総勢11名(10名と1匹?)が座るテーブルは我が家がかねてより庭用に使用している白い長机(基本的には事務用の長机だが、上板は白いアクリルが貼ってあるものである)を2つ用意した。
参加者は、弟夫婦、弟の娘(今回のホステス役を務めた姪)とその旦那(ホスト役)、姪夫婦がこよなく愛するワンチャン、弟の息子、姉夫婦、私たち夫婦と私たちの息子、メインゲストは老母である。姉夫婦の娘と息子はそれぞれに家庭を持っていて忙しいので、今回は不参加だった。我が家の愛犬様も姪夫婦のワンちゃんに遠慮して不参加である。
集まってみると、それなりに大家族ということだろうか。
こんな時は、それぞれの家族が何か料理を用意して持ち寄るのが一族の流儀。この日は休日だったので遅い朝飯だったが、それが終わるまで、そのことを私は失念していた。食事が終ってから、妻と息子が、何かを期待してわたくしを見ている。ヘッ?、何? 「父さんは何か作るんだろうと思ってね」と目が言っている。あっそう。そうだよね、この日は、朝から、シルバーセンター経由で庭の草刈りのおじさんおばさん達が3人もやってきていたのである。私の家の周囲と老母の家庭菜園の周囲の草を一日かがりで採っていただくという計画であった。その草刈隊のみなさんにお茶をお出ししたり、お話のお相手をしたりと妻は朝から大忙しだったのである。はいはい、承知しましたよ。嫌いじゃないし、時間もあるし、・・・。
・・・、でも何を作ろうか。特別にそのための材料は用意しなかったし、う~ん。冷蔵庫のあちこちを開けて考えた。牛肉のブロックがあった。オーストラリア産だが、タタキにしようと少し前に買って冷凍してあったものだ。700グラムくらいあるから、これで一品はできるな。そういえば、先日「息子の誕生祝い」と「妻のメンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種合格祝い」を兼ねて、家族プチパーティを開いたときのワインがほとんどそのまま残っている。しめしめ、牛肉のワイン煮でも作ろう。2度炊きすれば老母でも食べられるくらいに柔らかになるだろう。焼き物中心のバーベキューだからホスト・ホステスの料理ともぶつからないだろう。
次は、野菜ケースにセロリがあった。フム、スープならば、ユニークアイテムになりそうだし、焼き物の途中で汁物をいただくのは自分の経験でもけっこううれしいものだ。さて、合わせるべき食材はあるかな、・・・、トリモモや豚肉スライスは、焼き物とかぶりそうだ、ならば豚のひき肉を使って肉団子にしよう。ピーマン、ごぼう、ニラ、サヤインゲンもある。モヤシもあるぞ。

1.牛肉のワイン煮
まずは、牛肉のブロックを電子レンジで解凍する。普通の解凍1回では周囲がやや柔らかくなるだけで中は堅い。2回目の解凍でようやく包丁が通りそうなくらいにまでなった。これをまな板に乗せて、2センチ角くらいの拍子木(やや縦長の立方体)状に切る。中くらいの鍋にいれて、身がすっかり隠れるくらいにワインを注ぐ。水を250CCくらい追加して、こしょう、ショウガ、みりん、醤油を適宜加える。煮詰まることを考慮してうす味を心がける。火をつけて、沸騰したら灰汁をとり、中火にして煮詰め始める。牛肉の身が汁から飛び出ないように気をつけて、いったん火を消す。他の料理を進めた後、再度火を入れるのである。肉類はいったん煮立てて熱を十分通したあとたあと、汁に付けたまま冷やすと汁を肉にいっぱい吸い込ませることができる。その後、もう一度煮立てると肉は柔らかになってくれるというわけである。

2.和風スープ
寸胴鍋に、水を7分目ほど入れる。火をつけて、加熱する。かつおだし、昆布だし、みりんを加える。粗挽きこしょうを目いっぱいたくさん入れる(たぶん小さじ1.5杯くらい)。煮立ったら、ここに、モヤシ、ピーマン、セロリ、こぼうの笹がきを入れる。味ベースは和風だが、たっぷりの粗挽きこしょうのおかげで、和風とはかなり異なる感覚のスープになる。
その後、肉団子を入れるのだが、準備が忙しい。それよりずうっと前のこと、寸胴鍋を火にかけた瞬間から肉に取り掛かる。豚のひき肉を解凍する。ひき肉の場合最近は牛肉や牛肉入りを避けている。ひき肉にしてしまうと産地表記がされないので、業者は安い米国産牛肉を使うのが常識と思われるからである。豚ひき肉600グラムくらいが冷凍されていたので、解凍されたものをそのままボウルに放り込む。水を50CCくらい加える。肉団子を作る際に水を加えるのは、ちょっとしたコツである。水を加えることで、うんと柔らかになるのである。水加減でかたい団子も柔らかい団子もできる。老母がいるので、水をやや多めに加えた。
ここに、ショウガペーストと塩少々を加えて手で全端を混ぜ合わせるように回すと、すぐに粘り気が出てくる。右手の小さじですくって、左手に受けてそのまま左手の中で一回転がすように丸めて、左の沸騰し始めた寸胴鍋に落としてゆく。手作りなので大小があり、形もまちまちな肉団子になるが市販のものよりはずうっとおいしいし、肉も柔らかに出来上がる。
お肉も加えて、いったん沸騰したら、下火にして、肉に熱が通るまでコトコトと煮続ける。

3.キムチきゅうり
作業しているうちに、ちょっとお気に入りのキムチ(牛角製)が冷蔵庫にあったのに気がついた。そうだ、「キムチきゅうり」を作ろう。寸胴鍋の肉団子に熱が通ったのを確認して寸胴鍋の火を止めて、ワイン煮の鍋に火をつけて、・・・、そして、きゅうりを探した。買い置きが2本残っていた。よしよし、・・・。
鋼のやや重い万能包丁を取り出して、・・・。きゅうりを洗って、2.5センチくらいの長さに切る。次には、包丁を横にして、きゅうりを一つずつ叩いてつぶす。きゅうりは自然と縦に4つに割れるのである。割れ口を作ることが、キムチの味となじみやすくする秘密である。全部割れたら、ボウルに入れ、プラスチックの壺型容器に入れられて市販されている牛角キムチの半分ほどを同じをボウルに入れる。
牛角キムチの良いところは、3つある。(1)日本の枯草菌で発酵してあるので、韓国産のキムチのように韓国の微生物のせいでおなかを壊すことがない(毒ではないが、いわゆる水が合わないという現象がない)。(2)味が日本人好みでおいしい(たぶん魚介類の発酵体が入っている)。(3)最初から2センチ角程度に小さく切ってあるので料理に使いやすい。
ボウルには、さらにカツオだしとみりんを加えてよく混ぜ合わせる。きゅうりの割れ口がどれも赤く染まれば出来上がりである。中皿に盛って、ラップして冷蔵庫で冷やしておく。

4.豪華メロン
そうそう、忘れてはならない。実は、山形から頂いた、今年一番のメロンの残りが冷蔵庫の野菜庫にあったのである。1個あたり8分割にして、1個半(12個)あれば足りるか、と踏んで、切って、これも大皿に盛り付けて冷蔵庫に冷やしておくことにした。包丁を入れると果汁が俎板にあふれてくる。香りがたまらない。

バーベキューパーティの開始は、16時半である。いったん、台所を離れる。
16時15分、寸胴鍋に火を入れてもう一度温める。牛肉ワイン煮も浅立ちに入れる。
会場の様子を見にゆくと、弟が炭を起こすのに四苦八苦している。私が手伝う。やがて姉夫婦もやってくる。義兄も火をおこす手助けを始める。なんとも楽しい。火をおこすのに手間取って、開始が30分ほど遅れたが、いよいよスタートである。姪夫婦もバーベキューの材料や箸やすめのお料理などを運んでくる。私は携帯電話で息子と妻に、"持ってきてコール"をした。息子と妻はうれしそうに、料理を運んでくる。
姉夫婦は、家庭菜園で採れたナスの漬物やピクルス(きゅうり)などを持参してきた。
姪夫婦は、肉や野菜を大奮発して持ってきた。姪は料理の腕をあげたらしくて、ちょっと自慢げに幾つもの料理を披露してくれた。中でも圧巻だったのは、おからのサラダである。ご主人の体調を考えてのヘルシー料理ということらしいが、おからとトウモロコシペーストを同量にごま油を一緒に混ぜて作るのだそうである。うまい。「腕をあげたね」とわたくしが驚嘆していると、結婚するまで料理なんかしたことなかったんだけどネ、とのろけていた。
焼き上がるものはみなおいしい。牛、豚のスライス、玉ねぎ、ピーマン、チーズ乗せピーマン、ナス、ジャガイモ、とり塩トーモロコシ、・・・。ピクルスもナス漬物も美味しい。牛肉ワイン煮も売れ行きが良い。拍子木に形を整えたことが焼くものと形が違っていて結構良かったようだ。スープはのっけから、みなさんが所望して飲んでいた。キムチきゅうりも見る間に減ってゆく。食がはずめば、話は弾む。
途中、老母は健康を考えて帰宅し、わが息子は愛犬様の散歩の時間なので、中座した。
入れ替わりに、県警に勤務している甥(弟の息子、姪の弟)が勤務明けなので遅れて到着した。彼は巡査部長に昇進したのだそうだ。おめでとう、と皆から声か掛かる。
ころあいもよし、妻に冷たく冷えたメロンを我が家から運んでもらったので、それはそれは大好評だった。
息子と愛犬様が散歩から帰ると、愛犬様を姪夫婦のワンちゃんにごあいさつさせようとしたが、愛犬様は宴の中に私の姿を見つけると、遊びたいとワンワン吠えまくって大騒ぎだった。
その時、突然雨が滝のように降り始めて驚かされた。しかし、ガレージの中までは吹き込まない。宴が続くうちに10分ほどで、小雨になった。
ハプニングもあったが、バーベキューパーティは9時半ころまでで我々は引き揚げた。
弟の家族(弟夫婦とその娘夫婦、および長男)は、そのまま花火大会をしたようである。
たまには、一族で騒ぐのもいいかもしれない。

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琵琶

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一日で数億円を稼ぐ株取り引きシステム--アルゴリズム戦記(21)

(「鐘の声 ブログ」記事マップ)

2008/08/25
一日で数億円を稼ぐ株取り引きシステム--アルゴリズム戦記(21)

前回取り上げたMMLのシステムのあと、タンパク質に関連するお仕事が続いた。
平成1~2年 IBM様向け「タンパク質設計支援システムデータ構造変換サブシステム」の設計製造業務
平成2~3年 帝人様向け「タンパク質設計支援システム」の企画調査、設計業務(ニューロネットワークを利用した自動学習型の人工知能システム)
これらは、いずれも、EWS(エンジニアリングワークステーション)上でC言語による開発である。
そのほか、平成4年には、エステー化学株式会社様向けシステムアドバイズとDSS-CUBICカストマイズ作業などもあった。
これらと並行して、10年間(平成1~10年)にわたって川越市教育委員会様の中学校向けのCAI教材開発を実施した。
パソコン向け化学ソフトウエアのパッケージを日本一たくさん収集しラインナップして、販売したのもこの当時のことである。
これらのことも、振り返って触れることがあるかも知れないが、今回は、ちょっとばかり変わり種のお話をしたい。

平成4-5年のころだったろうか、某証券会社の依頼で株取り引きシステムを引き受けた。
あるとき、この証券会社の知恵者たちは、必勝のアルゴリズムを考え出した。これを使用すれば毎日数十億円の稼ぎも夢ではないと思われた。そこで、当時は最大手のシステムハウスとして名高かったC社にプログラムの作成が発注された。
提示されたアルゴリズムは線形計画法に似ていたが、1次の項と2次の項が規則正しく並ぶような性質のものである。一般解を求めるのは困難である。C社の担当者は、N98-BASICでこのソフトを作った。発注者の専門がなまじ応用数学(東大工学部修士)の出身者だったので、100分割メッシュ法が指定されていたのである。18次元だったので、100分割/次元とすると、計算量は100の18乗となり、天文学的計算回数となり、計算は不能となってしまった。10分割に減らしても10の18乗なので、天文学的計算回数は変わらない。ためしに分割数を10分割に減らしてパソコンを昼夜運転したら13日目に計算が終了したということである。C社が請け負う前に計算量を見積もって適切にアドバイズしたのかどうかわからないが、結果としては、使い物にならない代物だった。なにしろ、本日の取引実績をもとにして翌日の朝の取引に間に合わなければ意味のないものだからである。13日も計算の結果を待っていたら、次の日の朝の取引に間に合うはずがない。
C社は我々にとってはいつも恵みの神であった。彼らが通った後にゆくと、人々は名のない小さな当社に対しても賞賛の言葉を惜しまなかったのである。C社に対して我々はいつも感謝感激だった。
証券会社の担当者は、困り果てていた。人を介して頼んできたときには「せめて半日で計算が終わるようにしてくれないか」ということだった。しかし、この担当者はアルゴリズムの詳細を知られたくないという一点で情報の開示を拒んだ。手元にあるものはプログラムのソースコードだけ。変数名から銘柄を推測することもできないような徹底した秘密主義のプログラムである。まぁいいや、動けばいいんでしょとお預かりして、一晩プログラムとにらめっこするとどうやら18元2次の線形方程式があり、利益の大きさは4次式であらわされる内容を含んでいた。投資比率を変えることによって利益最大にすればよいとわかった。これをC社のSEさんは言われるままに100分割メッシュ法でやっていたのである。知っていて、お金さえもらえれば失敗でもいいという心掛けでやっていたなら営業的には成功だろうが、成果を出したかったのならその能力は考えものという代物だった。これらの方程式の性質を調べると、利益軸の性の方向にすべて凸の形になっている。ちょいと偏微分を試みればすべて明らかだった。
ラッキー! 私は小躍りした。大域的最大値と局所的な局大値とが一致するケースである。18個のランダム数値を基に「山登り法」(大きくなるほうに数値をずらしてゆく。一部ニュートン法の手法も取り入れた)で約7時間で計算が終わることがかかることがわかった。よし、とばかりに翌日証券会社の担当者に事の次第を告げると「メッシュ法が最も優れた方法」と言って譲らない。「結果が最適値かどうかわからないじゃないか。証明してほしい」というので、100分割と比べること出来ないが10分割と比較しましょうと言って引き取った。約2週間後、最適投資配分は10分割法では原理的に少数以下1桁だけ(10%刻み)、私の方法では計算上少数以下13桁まで出ている。四捨五入すればほぼ10分割法の結果に一致する。利益額は、6%ほど私の方法のほうが多いことがわかった。方や計算時間が13日間、方やわずか7時間である。速くて正確。私の方法に軍配が上がった。
それでも証券会社のご担当者は悔し紛れか、「7時間では残業になってしまう。オペレータの女性が残業しないですむ時間にまで短縮してくれ」というのである。お客様というものは欲が深いものである。
さて、どうしたものか、・・・、収束が早い近似計算には古来いろいろあるが、この方程式に適したものは何か、と思いめぐらせて、その場で、「じゃ2分割法でやってみましょう」と約束した。ついでに「3時間以内に計算が終わればOKですね。3時間を切るプログラムになったらお支払いもお願いします」と頭を下げておいた。彼は"できるものか"と思っていたのかもしれない。
ここでいう2分割法とは、次のようなものである。まず各軸の計算範囲(初期は0.0~1.0)を18次元の空間においてみると18次元の立体ができる。この立体を、一つの軸に直行するように2つに分ける。二つの立体のどちらに利益最大の投資配分点があるかが簡単な計算で判定できる場合はたいへん好運である。今回の場合は、どの従属変数に着目して2階偏微分をしても連続であって且つマイナスになるという特性があった。また、1階偏微分は、連続で減少する。目的変数はすべての従属変数に対して凸という特異的な性質をもっていた。その性質を利用すれば、たとえばそれぞれの立体の中央部の目的変数(利益)を求めてその値の高いほうを選べば目的変数の最大値は選ばれた立体の中にあることが証明できる。選ばれた立体を次には別の軸の中間の値で2つに分割してどちらに最大値が含まれているかを判定する。そのような操作をすべての軸について2分割にし終えたら最初の軸に戻って直前に選択されている小さな立体をさらに2分割すればよい。この操作を繰り返してゆくと、最大値を含むごく小さな立方体が求められてゆくことになる。2分割した小さな2つの立方体の中央の目的変数の差が誤差程度になったら計算を打ち切ればよい。たまたま幸運な数式だったのである。実験してみると初期値にもよるが、250~300回程度で収束している。時間にして1分未満である。
やった! 気分爽快、ルンルン気分で、証券会社まで出向いて、成果を示してご担当者に説明する。しかし。彼は一貫して不機嫌だった。成果を出すということと、顧客を喜ばせるというのは違うことだというのは頭でわかっていても、なかなか実行は難しい。顧客の求める成果を予想以上にあげているのに担当者が不機嫌というのはやりきれない。彼は、まだ「メッシュ法じゃだめなのか。メッシュ法って知っているよね」などと見当違いなことを声高に言い立てる。辛抱強く、メッシュ法の限界を説明するが、東大工学部の修士様は信じないという顔をする。挙句の果てに「あんたはどの大学出なんだよ」という。学部は違いますが同じ大学ですと答える。「理学部なんて、実務のこと何んかわかんないんじゃないの」とまだ彼は抵抗する。内心、あ~ぁ、やってられんなと思う。知性よりもプライドが優っている人とはこういう人なのだろう。私は「それでは、このプログラムをお預けしますから、どなたかに調べてもらってください」と言って、帰ってきた。1週間たっても10日たっても音沙汰はない。
間に立って紹介してくれたこの証券会社の人事部の友人に電話をしてどうなっているのか、と尋ねると、電話を切ってしばらくして折り返し電話をかけてきた。「もうそのプログラムは使っているってよ。君んところへの支払はどうなっている?」と心配してくれる。「いや、まだ契約も済んでいないんだ」と私。「彼は取引先とよくトラブルがあってね。ちょっと待っててくれ。支払をするように手配するから」と友人。
3日ほどすると、女性のオペレータという方から、入力の部分の改良を求める電話があったので、「いや、お支払もいただいていないので、その件はなかったことにさせてほしい」と私が言うと、慌てふためいて「じゃ誰に頼めばいいんですか」と半泣きの声。人事部の友人の名前をあげて、相談してほしいと私は頼んだ。月末、数百万のお金が振り込まれた。すぐに女性のオペレータの方から、支払いがされたはずなので、すぐに来てくださいというのである。その時の電話では、このプログラムのおかげで毎日約5億円程度の利益が上がっているということだった。
のこのこと出かけてゆくと、契約書が用意されていて、バックデイトで契約したいということだった。数百万円が大きいのか小さいのか、証券会社の取り扱う金額の大きさに圧倒されてよくわからなかったが、とてもうれしかったことは事実である。一も二もなく署名捺印した。
このプログラムを私から受け取った翌年には初めの担当者が退職していた。その後7年ほどこのプログラムは使用された。次第に、市場のフレームワークが変化して、銘柄の選択や係数が合わなくなってきただけではなく、背後にある取引に参加する人々の行動も変化してきた。このプログラムで期待できる利益幅が次第に小さくなりついに利用をやめた、と後で聞かされた。それにしてもこのプログラムでこの証券会社はいくら稼いだのだろうか。2005年、この巨大な証券会社は違法な取引が監督官庁から摘発されて事業廃止になり外資に買収されたことで、世間をひどく驚愕させた。
一人ひとりの問題というよりも、輝かしてい歴史と名声の影で組織をむしばみ続けたある種の「おごり」だったのか、と考えさせられたものである。

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(準備中)
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琵琶


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アスペルガー、ご本人のブログなど--心理、教育、社会性の発達(68)

2008/08/21
アスペルガー、ご本人のブログなど--心理、教育、社会性の発達(68)

少し前の記事に、ご本人のブログをいくつか紹介した。これには思わぬ反響があり、他にも類似のブログはないのかとの問い合わせもいただいた。
ご自分が周囲に対して感じていることと同じだという方や、わが子がこれに該当するのではないかという人など、幅広い方からの声が寄せられた。
ご本人であれば、まずは自分がそうであるのかどうかの判断の手かがりになればよいし、ご本人ではないが周囲の方であれば、アスペルガー症候群に関する正しい知識を得る出発点になればよいと思う。
ここでは、一つ一つの記事の内容を紹介したり解説したりするつもりはない。それぞれの記事を虚心に読んでいただくほうが、はるかに迫力があり意味もあると私は思う。
通常のネット検索でもたくさん見つけることが可能だとは思うが、私が目にしたいくつかの記事を前回ご紹介したものも含めてここに掲載させていただく。

・abcde354さん
アスペルガー社会人のBlog
http://welladjust.exblog.jp/
・しーさん
テクテク~私の歩く道~アスペルガー症候群と診断された私の記録。
http://seedssmile.blog99.fc2.com/
・Zack-Balanさん
アスペルガー・ADDのサラリーマン日記
http://plaza.rakuten.co.jp/utsu1974/
・しろさん
他者と私とAS(アスペルガー症候群)
http://asshiro.seesaa.net/article/69864450.html
・Hbarさん
高機能自閉症、アスペルガー症候群を語ろう
http://adachi51.at.webry.info/theme/9e628370c4.html
・aks74さん
アスペルガー症候群男性
http://blog.livedoor.jp/aks74/
・売川もろみさん
アスペルガー症候群であるならば
http://urikawa.blog102.fc2.com/"
・シンユーさん(たぶん)
アスベルガーの館
http://www.a-yakata.net/
・秋桜(コスモス)さん
秋桜の部屋
http://www.a-yakata.net/cosmos/
最後のお二人(シンユーさん と 秋桜さん)は、ご夫婦である。

ここにあげた方々のブログを読むと、自らの障害に真正面から向きあい、「定型のひと」たちとの調和と共生を求めて日夜苦労していることがよくわかる。ただただ頭が下がる。
一方、ほんの少しだが、障害を盾にして、兵隊アリが罪のない普通の働きアリを脅して働かせようとするのと同じように健常者を脅して働かせて悦にいっているように見える人の記事も稀に発見される。これも病理の一面ではある。しかし、このような人の言動(普通の人はアゴで使えばいい)ばかりがアスペルガーの実態であるかのように取り上げられるのは避けたいので、今回はあえて、ここには紹介しなかったことをお断りしておく。多くのアスペルガー症候群と認定された人々は、このような病理を克服しようとしてまたは克服して生きているのである。

ご本人のブログではないが、身近にアスペルガーの方がいるという悩みをお持ちの方の記事もいろいろある。同じ悩みを持つ方もこのシリーズの読者にはいらっしゃるようなので、私が気がついたものを以下に紹介しておく。ご参考になれば幸いである。

・教えてgoo、saaya001さん
アスペルガー症候群の疑いのある夫と義父
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa4220782.html
・お答マピオン、16rupan6さん
アスペルガーの疑いの兄をスムーズに診てもらうには?
http://qa.mapion.co.jp/qa4240252.html
・Yahoo知恵袋、tuki19999さん
職場にアスペルガー症候群の人が移動されてきます。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q127527682

2008.10.06追記:
上記に引用したHbarさんから、コメントをいただいた。Hbarさんのプロファイルを拝見すると59歳と書かれていた。この記述が最近のものならば、私よりも少しお若いということになる。私からはトラックバックを送らせていただいた。

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琵琶


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4名そろい踏み--交友の記録(34)

2008/08/18
4名そろい踏み--交友の記録(34)

上野の半個室のある居酒屋に、18時集合。珍しく4名そろい踏みである。
8月に入ってから、4名の間では盛んにメールが交換された。久しぶりに暑気払いでもやろうというのである。会場の手配は私がした。
私以外は、3人ともに個人営業の編集者である。有限会社だったり、個人事務所を名乗っていたりと形態はいろいろだが、基本は一人で仕事をしている。共通項はすべて理工系の編集にたけた者たちということである。
このうちでもっとも年長のKさんが、ある時、私の携帯電話を鳴らして、「いま、理工系の編集者を求めている会社がある。私も参加することになっているんだが、I君の連絡先を教えてくれ」というのである。私は「I君の連絡先だけでいいの? ゆとりがあったらもう一人仲間にしてくれないか」と言って、F君の名前を告げた。
たちどころにKさん、I君、F君の3人のチームが出来上がった。大手出版社の理工系の辞典の編集作業への参加だった。私は、当然、外の人ではあったが、3人は初めて一緒に仕事をして、お互いに力のある編集者として尊敬しあうことができたようだった。紹介した私もうれしかった。終わった後、秋葉原で飲んだ。その後は年末と夏の2回ずつ会食することになっている。相互の仕事を交換したりすることも3人の間ではある程度行われて、繁忙と閑散の間を相互に平準化することに役立っているようだ。3人だけで集まってもいいようなものだが、3人を結びつけた私にも気を配ってくれて、いつも4人で会おうと言ってくれるのである。
一人は昔勤務した会社の元同僚、一人は私の会社が編集下請の仕事をしたいたころの顧客の窓口だった方、のこる一人は著名な理工系出版社の編集部員で若い頃にお世話になった業界の先輩(所属した会社は異なるが)の一人である。
飲めば、経済環境の悪化、顧客の理不尽、心やさしい担当者、家族のこと、老後のことなど、身につまされるような話題ばかりである。身なりはいかにも自由人だが、みな紳士で、飲み方もきれい。話の目線に上下関係はない。知的だが気さくである。
私以外は酒豪ぞろいである。私は宴席では焼酎ロックを一杯に限ると決めているので、これ一杯でちびりちびりと最後まで。このお店には「黒丸」があったので、これをいただく。3名は、ビール中ジョッキではじめて、八海山、八海山、八海山、・・・、浦霞、浦霞、・・・、ハイボール、ハイボール、ハイボール、・・・、梅お湯割り、梅お湯割り、梅お湯割り、・・・、と数えきれない。それでいて、誰ひとり崩れないのがすごい。
名物のヤッコ豆腐、野菜たっぷりサラダ、天ぷら、豚肉の湯引き、湯葉と豆腐のあんかけ、きゅうりとアナゴの巻きずし、うどん、・・・、全部4人前ずつのお料理である。
飲んだ! 食べた! しゃべった。
最後は、お互いの病気のことで盛り上がったのは、年相応というところか。
店を変えてコーヒーでもと言いながら入ったのは少し歩いた先の甘味どころ、若いお嬢さんたちがたくさんいる店内で、異様なおじさん席が出来上がって、ちと視線が痛いが、無敵のオジサンたちは平気。3人はメニューに「ビール」の文字を見つけると、「ビールッ! 大きいジョッキでお願いッ」と意気軒昂。私は抹茶セット(ワラビもち付き)でおとなしくしている。病気と病院、藪医者と名医の噂話に花が咲く。私もついつられて、話題にくわわる。ごめんなさい、お店の方とお客様方、うるさくて場違いなオジサン軍団を許してやってください。いつもは自分の息子と同じくらいの若い担当者に向って頭を床にこすりつけんばかりの営業を繰り返して、神経をすり減らしているオジサンたちだもの、少しだけ大目に見てあげてください。
気持ちは晴れやか、勇気に満ちて、それぞれの帰途につく。
あれっ、今日は何を話したんだっけ、・・・? 会う前は、あれもこれも話したいと思っていたのに、ただただ顔を見たら安心してしまって何も話さなかったようだ。
「後でメールするよ」大声で叫んで別れた。

△次の記事: 交友の記録(35)
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琵琶


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ジェラルド・カーティス、日本の教育の低下はスキャンダル--心理、教育、社会性の発達(67)

2008/08/18
ジェラルド・カーティス、日本の教育の低下はスキャンダル--心理、教育、社会性の発達(67)

ジェラルド・カーティス氏は、コロンビア大教授(政治学)で早稲田大客員教授である。日本政治の専門家で、歴代首相との親交もある。『永田町政治の興亡』などの書籍がある。
ZAKZAKの芸能欄に掲載された記事が辛辣である。しかし、なぜ、この記事が「芸能欄」なのかは、ちょっと考えさせられる。この記事が消えてしまう前に全文を引用させていただく。

ZAKZAKの芸能欄
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教育の低下はスキャンダル…ジェラルド・カーティス
http://www.zakzak.co.jp/gei/2008_08/g2008081516_all.html
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日本政治研究の半生を振り返った米コロンビア大教授、ジェラルド・カーティスさん=写真(省略)=の『政治と秋刀魚』。本書で描かれた政治の舞台裏は興味深く、指摘は示唆に富み、自叙伝としても面白い。そのカーティスさんが最も憂えているのはニッポンの教育だ。「教育の質の低下はスキャンダル(恥ずべきこと)」と言い切る。
--カーティスさんは国防上の“教育”で日本と出合ったそうですね
「1957年のソ連のスプートニク・ショックから、ケネディ大統領が国防教育法を作ったのです。自国防衛のために、教育で外国のことを知る必要があると。私もそれで日本語を勉強したのです」
--もともと日本に興味があった
「いや(笑)。コロンビア大の大学院で国際政治を勉強中、ゼミの先生がたまたま日本の専門家でした。ちょうどジャズミュージシャンをあきらめたころで、1年だけならと思ったのですが、あれから45年です」
--本書では教育の重要性を語っていますが、いまの日本の教育を評価すると
「中高教育の質の低下、これはスキャンダルです。80年代までの中高教育は世界で最高だという評判だったのに、ゆとり教育を取り入れてしまった。どうして文科省はレベルを意識的に下げるなんてバカなことをやるのか、と思いました」
--大学はどうですか
「まったくダメなシステムですね。教授は一度教授になったら満足という人が圧倒的に多い。いい研究をせず、何も発表せず、引退まで給料が毎年上がり続ける。文科省が私立大学までもコントロールしているので改善されないのです」
--では小学校は
「これは素晴らしい。子供たちが仲良くすることを学び、集団行動を身につけられます。先日、山口県のある小学校を訪問したら1クラスに38人いました。アメリカの小学校で38人もいたら大混乱です」
--学級崩壊ともいわれますが、クラスは統率されていた
「日本人の共同体意識、集団行動が上手なのは小学校のおかげでしょうね。重圧も少なく、遊んでいることが多いのに6年間でかなりの漢字を覚えるのですね。これはアメリカが真似すべきです」
--教育再生の手立ては
「財界がもっと教育機関に寄付をすることです。中学、高校にお金をかけ、先生の給料を上げて先生になりたい人を増やす。財界からの寄付はゼロではないが、経済の大きさからいえば小さなものです」
--大学改革も急務
「文科省の監督は必要ありません。公平な社会の実現には(中高)公立校の質向上が大事ですが、大学は競争社会。いいところが残るようにしないと」
--でも文科省は権益を絶対に手放さない
「本来、政治家がもっと教育問題を考えるべきですが、文教族は文科省と一体なので非常に残念です。教育が頼りないというのは日本の危機ですよ。そこのところをもっと考えないと」
--教育三流国家では先がない
「とにかく、日本人はもっと自信を持って変えていくことです。この国はダメだからどこかの国の真似をしようと思ったら必ず失敗します。自信があって初めて改革ができるのです」
ZAKZAK 2008/08/15
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私は、つねづね「公教育の時代は終わった。1割の公教育を残して、9割を民営化したらよい」と言い続けてきた。しかし、ジェラルド・カーティス氏の言葉を信ずるとそれでもだめらしい。なんとなれば私立大学も文部科学省に縛られている(「文科省が私立大学までもコントロールしているので改善されないのです」ジェラルド・カーティス)というのである。
小学校教育についてはジェラルド・カーティスが無闇にほめているが、これは信用がならない。努力している先生方は学校現場でも孤立しているのである。商品券で教員になれたような人物もたくさんいる中で、よい教員が存分に活躍するのは難しい。お金で教員になれたのは、大分県だけでないと思う。これからは変わることを期待するが、彼らのほとんどが居座っていて退職するわけではないのである。
バカをつくる教育はもうやめにしようとわたくしは言いたい。心ある教員は手を結び、教育の質を少しでも高めるために力を合わせましょう。

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琵琶


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自覚あれば回復に希望あり、アスペルガー症候群の人たちだって負けてはいない--心理、教育、社会性の発達(66)

2008/08/15
自覚あれば回復に希望あり、アスペルガー症候群の人たちだって負けてはいない--心理、教育、社会性の発達(66)

アスペルガー症候群の人たちだって負けてはいない。

アスペルガー症候群の人が自覚して努力している様子が本人の手で書かれているブログがいくつか存在する。
たとえば、abcde354さんの記事しーさんの記事Zack-Balanさんの記事などがある。
詳しい引用や解説は差し控えるが、読んでみると、感動してしまう記事も多い。
アスペルガー症候群の人が前向きに頑張っていること、そして自らの症状を自覚するが故に自分の言動や思考に手綱をつけ、普通の社会人に近い自分へと自分自身を支えている様子がよくわかる。また、周囲の人にも理解を求めて、調和を保つべく努力もしているのである。
そして、上記にあげた3人のうちの3人目のZack-Balanさんは、ついに課長代理に昇進したところで、6月21日この記事の最後として「物事には何でも終わりのあるもので今回このブログの運営を終了することにしました。実はこの6月より昇進しまして課長代理になりました。・・・」と書いて筆を置いているのである。ここまでの苦労はブログにもかけないような他人にはうかがい知れないものがあっただろう。思わず、画面の前で拍手してしまった。

アスペルガー症候群と診断された人、アスペルガー症候群かもしれないと自分を疑っているあなた、わが子がアスペルガー症候群かも知れないと悩んでいるお母さん・お父さん、教え子の彼や彼女がきっとアスペルガー症候群だと心を痛めている教員のみなさん、めげている場合ではないのである。本人の自覚あれば回復に希望があるのである。
お母さん・お父さん、先生たちは、類例を解説した本を読み、本人にも読んでもらうのが手始めかもしれない。そして自覚があれば回復の希望があることをまず知ることである。そして、ご本人ともよく話し合うことである。ご本人が自覚できれば、希望が生まれる。周囲の理解や手助けも必要だが、何よりも本人の自覚と努力と本人による様々な試行錯誤が必要なのである。それは決して平たんではないし楽でもない。しかし、一歩一歩普通の社会性を獲得することが可能であるという事実は、上記のブログの記事などを読んでいるとジワリと心に落ちてくる。

ところで、この人たちの間で「定型の人」と呼ばれているのは私たち(いわゆる健常人)のことであるが、彼らの目に映る「定型の人」は、かなり奇妙な人たちである。我々の側が胸をえぐられるような記事も多い。

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ひゅ~、ひゅ~、ポシャン、水漏れ? 寝言--我が家の愛犬様(28)

2008/08/13
ひゅ~、ひゅ~、ポシャン、水漏れ? 寝言--我が家の愛犬様(28)

気がついたのは今年の4月の夜半過ぎのことである。
この日、寝静まった家の中で、私だけが2階の作業場でパソコンに向かって作業を続けていた。雨が降っていた。「ひゅ~、ひゅ~、ポシャン」という音が、かすかに聞こえてくる。一度、二度、・・・、しばらくは聞こえない、しかし、また聞こえてくる。屋根裏に反響しているようにも聞こえる。・・・、そっと、立ち上がって、吹き抜けの下に出る。音はしない。水漏れだろうか。家の周辺に人が立ち入って水を使っているのだろうか。それとも、空耳だろうか。
次のときも雨の日だった。夜明けの4時ころ、「ひゅ~、ひゅ~、ポシャン」という音が聞こえる。そっと立ち上がって、家の中を歩く。家人は寝静まっているし、愛犬様もすっかり寝入っている。起こしてはかわいそうである。
歩き始めると聞こえなくなってしまう。なぜ? ・・・、この日も原因はつかめなかった。
5月、快晴の夜、窓の外は満天の星、また、「ひゅ~、ひゅ~、ポシャン」という音が聞こえてきた。天気の良い日に雨もりはない。このときは、奥さんを起こして、一緒に調べた。水道の蛇口から水滴が垂れているところはないか。水漏れのしている部分はないか。調べ始めると音は聞こえない。
5月は4-5回、6月も4-5回、7月も4-5回聞こえた。・・・、なんだか怪談話みたいだな、と夜半過ぎに、私は耳を澄ます。椅子に座ったまま耳を澄ますと確かに聞こえてくる。どこからかはよく分からない。吹き抜けの2階の屋根裏に反響しているように聞こえるというだけである。
8月10日(日)、朝早く私と散歩に出かけた愛犬様は、満足したのだろう、昼間、玄関の寝床に入って、よく寝ていた。私は、北京オリンピックのニュースを見ながら隣の居間にいた。ふと気づくと、「きゅ~ん、きゅ~ん、ポップップッ」という声が聞こえてきた。反響していない分、音はクリアである。か細い声であるが、愛犬様のあたりから聞こえた。もしや、これかも、とわたくしははやる気持ちを抑えて、そっと、ゆっくりと、姿勢を変えて、忍び足で愛犬様のそばにゆく。そばでじっとしていると、鼻で呼吸する合間に、確かに愛犬様ののどのあたりから「きゅ~ん、きゅ~ん」という甘え声が聞こえて、空気が口いっぱいにたまると、唇がまん丸に精一杯膨れ上がり「ポップップッ」と空気が漏れてくるのである。愛犬様は、手足を思い切り伸ばしていて、顔は上に向けてまま横になったように倒れこんでいて、そのまま、誰かに甘えるような鳴き声を喉の奥で上げているのである。夢の中では、愛犬様は4つの足で大地をしっかり踏み締めて、顔を上に向けて、遠くにいる誰かをしきりに呼んでいるのだろうか。私が見つめているのも気づかずに、愛犬様は目をしっかりと閉じたまま、喉の奥で、幾度も幾度もか細く鳴いていた。しばらくして、「オイ、オイ、愛犬様」と呼びかけてみると、愛犬様は、びっくりした表情で、顔だけ起こすと、私の顔を見て、周囲をきょろきょろ見渡すと、寝姿のまま尻尾を振り、やがて起き上がってきた。深く寝入っていたに違いない。
長く不思議に思えてきた「ひゅ~、ひゅ~、ポシャン」「ひゅ~、ひゅ~、ポシャン」は、愛犬様の寝言だったのである。「きゅ~ん、きゅ~ん、ポップップッ」「きゅ~ん、きゅ~ん、ポップップッ」が屋根裏に反射して、「ひゅ~、ひゅ~、ポシャン」「ひゅ~、ひゅ~、ポシャン」と聞こえたのである。
長い間の疑問が解けてなんだかほっとするとともに、犬族も寝言を言うという発見に内心新鮮な驚きを感じた。
それにしても、あの声は、誰を呼んでいたのだろうか。私や家内、息子などの家族だろうか、お気に入りのメス犬様かな、それとも幼い時に別れた母犬だろうか。
なんだか胸がキュンとなった。

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琵琶

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自覚と回復、(仮性の)アスペルガー症候群 積極・奇異型--心理、教育、社会性の発達(65)

2008/08/11
自覚と回復、(仮性の)アスペルガー症候群 積極・奇異型--心理、教育、社会性の発達(65)

アスペルガー症候群とは、知恵おくれを伴わない自閉症スペクトラムといわれる。つまり正常な知能をもつ自閉症というのである。自閉症という言葉には、引っ込み思案で孤立している人という印象がある。確かにそのような人(孤立型)もいるのだが、周囲が誘えばそのときだけは応ずる人(妥協型)や、健常人には違和感のある積極果敢な言動に終始する人(積極・奇異型)もいるのである。
私は、アスペルガー症候群といわれる人たちの大半は遺伝的形質ではなく、時代の申し子で、生育環境(不適切な母子分離問題を含む)と教育環境の犠牲者であると考えている。長年の経験で、生育環境と教育環境を変えることで大半は回復可能な障害であると私はひそかに確信しているのである。その第一歩は、本人告知である。本人の自覚なくしては周囲の努力は無駄になってしまう。ましてや、本人にあいまいな説明をして(だまして)薬を飲ませるような「医療」は決して行うべきではないと思う。
今回は、まず、積極・奇異型と思われる人々のいくつかの例を紹介したい。本人に告知することの難しさ感じているこのごろである。

Oさん、「メールがただしく書けないくらいで、自閉症の疑いなんて短絡すぎます」
N君、「今日の授業は何もすることがなくって、ヒマでした」
T君、「先生、今の会社を辞めていいですか?」
S氏、「どうして、自分だけ課長昇進がないのかわからん!」
U准教授、「ボクが出席すると、ずうっとボクだけが話し続けていることになるんです」

最近、遭遇した個性あふれる人たちの発言の例である。それぞれの状況についての解説は少し後にするが、いずれも、おそらく精神科の診断ではアスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)の「積極・奇異型(群)」と呼ばれるに違いない人々の、切実な発言である。
私は、精神科の医師ではないので、あえて「(仮性の)アスペルガー症候群」と呼ぶことにする。あえて(仮性の)と呼ぶのは、これを冠しないと遺伝的で不可避的で回復不能であると思いこむ方がいるからである。私は、一貫して、「アスペルガー症候群」などの社会性の発達が阻害されて来た者たちの症状の大半は、生育環境(不適切な母子分離を含む)と教育環境由来であると主張してきた。これらの大半の人々の症状は、不可避的でもないし、回復不能でもないというのが私の立場である。

(1)Oさん、「メールがただしく書けないくらいで、自閉症の疑いなんて短絡すぎます」
昨年のことである。Oさんという3年生の女子学生が私のクラスにはいた。ほっそりタイプで目鼻立ちのはっきりした美形のお嬢さんである。たいていは男子学生と一緒に教室にやってくるが、同じ男子学生とは限らない。一人で来るときには、顔見知りの男の子の隣にちゃっかりと座る。心やさしい男の子たちは嫌がらずにお相手をしているようだったが決まった彼氏はいないようだった。同性との交流はかなり乏しいようで、女の子とは滅多に話しているのを目にしないのが少し気がかりだった。このお嬢さんは、いつも新鮮な男の子を相手によく話をしている。男の子はどの子もやさしく、聞き役に徹しているようだった。さすがに授業中のおしゃべりはよく聞き取れないが、休み時間や実習のタイミングでのお話はよく聞こえてくる。周囲を気にしない大きな声である。自分が関心を抱いたことに対しては素晴らしい記憶力を発揮する。細部にわたって、いくらでも再現して見せるのである。しかし、少しばかり小難しい授業の話になると、まったく覚えていない、そんな授業があったことすら覚えていないというのである。これに近いことは誰でも多少はあるので、さほど驚くことでもないだろうが、覚えていないことと覚えいることの落差がきわめて大きい。いわゆる認知の穴があちこちにあるらしいとわかるのだった。
私は、どの講義でも、最初に手紙の書き方とメールの書き方を教える。メールが使えるようになっても、メールを受け取った相手が怒り出すようなことになったら、教えた意味がない。メールはあくまでもコミュニケーションの手段にすぎないのだから、と私は思う。
大方の見方では、そんなことは小中学校で教えればいいことと思われるかもしれない。しかし、小中学校で手紙の書き方を教えてもらった経験のある学生は私の経験では皆無であった。丸暗記主義教育ではむぺなからぬことなのだろう。大学受験を控えた高校ではなおのことである。それならばせめて大学1年生に教えれば済むとお思いかもしれないが、大学では、「そんな幼稚なことまでは教えなくてよい」と思われている先生方が圧倒的に多いので、目的意識を持たない限り教えたりはしないのである。
私の担当する教科はバライティに富んでいるので、教科によって1年生から4年生にまでまたがる。たまたま、Oさんは3-4年生が履修できるクラスにいた。彼女は、手紙の書き方を初めて知ったと、感激の面持でその日の感想をブログ(私の授業では、全員にブログを書かせている)に書いている。
講義では、概略手紙の書き方とメールの書き方を続けて教える。
・初めて出すときのお手紙の書き方--「宛名、差出人、拝啓、時候の挨拶、本題、敬具」
・初めてではないときやビジネス上の手紙の書き方--「宛名、差出人、(時候の挨拶は省いて)前略、本題、草々(昔、女性は「草々」の代わりに「かしこ」、今は女性でも「草々」でよい)」
・メールは、題名を書いて、「宛名、差出人、前略、本題、草々」または「宛名、差出人、本題、締め言葉」
のようになる。
さて、学生らはこう聞かされてもはじめは題名空白、本文に宛名も差出人の名前もなく「やりました」とぶっきらぼうに書いてくる輩が多い。拳固の一つもくらわせてやりたいところだが、ここは我慢である。いちいち、「題名を書きなさい」「だれ宛のメールですか(私が読んでいいメール?)」「あなたは誰?」「ご用件は?」「何をやったの?」と返事を書く。2-3回、やり取りをするとたいていはまともなメールになってくる。私の講義は半期で13回-15回である。このお嬢さんのときはたまたま14回だった。毎回課題があり、学生は課題に関係するメールを書くことが必要なので、最低14回のメールはどの学生も私に送ってくることになる。
この女子学生は、毎回「拝啓 紅葉の候、ますますご健勝のことと存じます。さて、・・・」と書いて送ってくるのである。実に丁寧と言えば丁寧。しかし、宛名も差出人の氏名も書いてこない。私は、毎回、「時候の挨拶は省きなさい」「宛名を書かないと私が読んでよいメールかどうかわかりませんね」「あなたは誰ですか? 差出人の氏名を書いてください」と注意点の一覧を書いて返信する。それでもその次の回のメールも全く同じ時候の挨拶が書かれて来るのである。5度目くらいにはさすがの私もキレかかったが、ここで怒ったら私の負けだなと思い返して、その女子学生のメールをすっかりワード文書にコピーして、吹き出しをてんこ盛りにつけて、修正箇所を明示して、そのあとに、メールの書き方のサンプルを書いて、「このメールサンプルをコピーして、もう一度出しなさい」と返信した。なんと返ってきたのは、私のサンプル文書をコピーして、その下に、改めて「拝啓、紅葉の候、・・・」と書いてあったのである。私はがっくりした。この女子学生は頭が悪いわけではない。私をおちょくっているのか? そんなことはあるまい。その後も、彼女は全く変わりない自己流のメールを送り続けてきた。私は、ややあきらめ加減で、毎回、同じような注意メールを送り続けた。13回目のメールを受け取った後、「次回は最後の講義です。最後までメールの書き方がわからなかったようなので、休み時間に教壇まで来てください」とメールに書いた。
休み時間になっても、いっこうに教壇に来るようすのない女子学生をマイクで呼ぶと、「あぁ、なんかメールに書いてありまたね」とあっけらかんとしてやってきた。メールの書き方を画面を見せながら、もう一度説明して、「わかった?」と聞くと「なんか、よくわかんない」と深刻な表情である。ははん、と私は納得した。やはり、彼女はわざと抵抗していたのではないのである。実際、はじめに聞いた「拝啓、時候の挨拶」という書き方に感動して記憶してしまったので、そのバリエーションである「前略、草々」も「宛名のこと」も「差出人のこと」もすっかり頭に入らなくなっていたのである。感心した事実を記憶してしまうとその周辺の知識は"うっかり"抜けてしまうのでなく、受け入れることを拒絶してしまうのである。これは、「刺激に対する過剰選択性」ともいわれるが、特定の事柄にとくに心奪われる傾向があり、その周辺の認知が極端に阻害されて「認知の穴」を生むのが、いわゆるアスペルガー症候群(高機能性自閉症)の特徴の一つである。専門家ではないので断定はできないが、彼女も「(仮性の)アスペルガー症候群」で、その積極性・奇異性から見て「積極・奇異型(群)」に属するのだろうと思う。私の考えでは、この種の人たちは、多くの医療関係者の言うこととは違って、回復できる類の一時的な症状である。まずは本人の自覚を促して、適切な処置が必要なことを理解させなければなるまいと思う。「君は大変頭もいいし個性的だね。個性はかっこいいけれど、時には社会生活に不都合なこともある。一度、大学の学生相談室か大きめの病院の心療内科を訪ねてごらん。私の素人判断では危ないから、専門家の判断を仰いで、カウンセリングなどを受けたほうが良いかも知れない」と机のわきで小声で私。「え~っ、なんか、ワタシ、変ですか?」と彼女。「あくまでも、素人の推測にすぎないから、間違っていたらごめんなさい。無視してくれてもよいんだけれど、自閉症スペクトラムの一部に該当するかもしれないと思うんだ。思い当たることがあったら、専門家の意見を聞くといいと思う」と私。「そ、そんなこと!  ・・・。はい、わかりました」と彼女はひどくおかんむりだった。あ~ぁ、言うじゃなかった。いくつになっても私は女の子の心がわからない、無粋なジジイである。彼女の心を傷つけただろうと、ひどく心が痛んだ。
その日の晩、届いたメールには、「メールがただしく書けないくらいで、自閉症の疑いなんて短絡すぎます」と書いてあった。相変わらず、差出人の名前もなかったし、宛先として私の名前も書いてなかった。時候の挨拶もなかった。携帯メール風のタメ口メールである。つまり、高校生風のメールスタイルに戻ったのである。"はい、はい、メールがただしく書けないくらいで、こう推測したのなら、短絡的にすぎますね。その意味で君は正しい。しかし、君のブログの記事も、男の子に向けた一方向のおしゃべりでも、他の人が彼女をどう見ているのかに関心がないように見えることにも、認知の穴が見事なことなどの中にも、その兆候はたくさん見られるし、君の期末試験の解答を見ても、やたらと詳しいところとまるで抜け落ちているところの差が激しいのが見て取れる。いやいや、ここで素人がいろいろ説明すると火に油だ。今は我慢して、心を傷つけたらごめんなさいとひたすら謝ってやさしく返事を出しておくだけにしよう" と内心では思うばかりだった。いやなに、そのうち思い直して、学生相談室にでも行ってくれることを期待しよう。
「自閉症」というと、孤立して、暗くしている人という誤った常識が蔓延している。孤立型も「自閉症」の一タイプだが、これ以外に「妥協型」も「積極・奇異型」もあるのである。彼女は、人々の誤った固定観念には反する「積極・奇異型」に属する「(仮性の)高機能性自閉症状」を現わしているのであると私は疑っているのである。

(2)N君、「今日の授業は何もすることがなくって、ヒマでした」
昨年の春学期のある日のことである。学生たちのブログを読んでいると、本日の講義の要約と感想という欄に、「今日の授業は先生の講義が短く終わって何もすることがなくって、ヒマでした」と書いてあった。びっくりした。N君は、比較的まじめな男子学生である。やることがなくて、・・・、そんなはずはなかったのであるが、、、。
当日の講義を少なめに終えて、私は、その日、次のように説明した。「前週の課題の提出状況が良くないので、もう一度、わかりにくかったと思うことをここで説明する。前週の課題をこの時間内に済ませるようにしよう。もうひとつ、課題が完璧にできている7人でお助け隊を組織するから、わからないことがあって困っている人は手を挙げてください。彼らを順次派遣する。何が何でも全員ができるまで頑張ろう」とはっぱをかけた。このクラスの学生48名のうち課題を出していない学生が35人、出したが的外れな回答が6名、完璧な回答を出していたのが7名だった。N君も課題を提出できなかった学生の一人である。この日、ほとんどの学生は大忙しだった。周囲の学生の意見を聞くもの、お助け隊を呼ぶもの、ひとりでもくもくと課題に取り組んでいるもの、、、。周囲の騒然たる状況を感じれば、「何もすることがなくって」とは到底思えなかっただろうし、「ヒマ」がありえないと肌で感じていて当たり前の状況だった。しかし、彼には、それが全く感じられなかったのである。「K.Y.=空気が読めない人」という言葉が一時流行ったが、いじめなどにも多用されて評判は芳しくない言葉である。そのためここで取り上げるのははばかれるが、あえて言えば、彼の場合、原義に近い意味での「K.Y.=空気が読めない人」なのである。彼のような人が増えてきたからこそ、「K.Y.」という婉曲表現が流行したのだが、その後、「K.Y.」でもない人に向って根も葉もない悪口として「K.Y.」という言葉投げつけられるようになったのが、事態を悪化させている。
N君は、これ以外にも、しばしば「~~はしないことにします」という言葉と「これから~~に取り組みます」という言葉をそれぞれ反対に理解することも多い学生だった。「今日は課題を出しませんが、来週小テストを行います。出題範囲はこことここです」と私が述べるとほとんどの学生はこことこことだけは予習してくるが、彼は当日になると「小テストだって~っ、聞いてないよ。"小テストはしないことにします"って、先生は言ったのに」と大声で不平を言うのである。はじめ、私は、N君が冗談を言っているのかと思った。しかし、彼の顔は真剣そのもの、怒りで震えんばかりである。仕方がないので、「皆さん、先週先生は"今日は課題を出しませんが、来週小テストを行います。出題範囲はこことここです"と言ったつもりですが、先生の記憶違いですか。言っていないと思う人は手を挙げてください」というとN君は元気よく手を挙げるが、他の学生はザワザワとするばかり。「言ったと記憶している人は?」というと、ほぼ全員が手を挙げる。N君は、それでも怒っているのである。N君は、否定と肯定を逆に理解して記憶しているのである。N君の心象の中では自分の記憶が正しくて、先生や同級生たちはすべて嘘を言っているように感じられているのだろう。続けて述べられた2つの説明「~~はしないが、~~はする」というような言い回しは特に混乱するようだ。
彼も、「積極・奇異型」に属する「(仮性の)高機能性自閉症状」を現わしているのである。
「N君、君は、肯定と否定を逆に理解してしまうことが多いように思うよ。早とちりは誰にでもあることだから悪いとは言わないが、早とちりのままにすると損をすることも多いから、少しでもあいまいだなと思ったら周囲の学生に確かめなさい。一言尋ねれば済むことが多いよ」と私はそばに行って語りかける。私の授業では、他人の迷惑にならない程度であれば、授業内容に関する学生同士の会話を奨励している。黙って静かに聞いていても頭に入らないものは入らない。眠くなって寝てしまうのがおちである。「先生は、今なんていった?」「最初の授業でやったことと今の話は繋がってるん?」くらいの会話は大歓迎なのである。会話は脳の働きを活性化するというのが私の信念でもある。他の先生方が何も知らずに私の教室をのぞいたら、びっくり仰天するに違いない。私語しつつ私の講義を聴くけしからぬ「ながら学生」がほとんどだからである。私も教室を回りながら、学生らの私語にも耳を傾けて、「おっと、それは違うぞ・・・」などと掛け合いをやっている場面もあるのである。
そうは言いながら、"君は(仮性の)アスペルガーではないか"、などとはなかなか言えるものではない。クラスの学生全員に、高機能自閉症やアスペルガー症候群、ADHD、LD(学習障害)などの概念をよくわかるように説明して共通認識を作った上でなければ、無理というものである。Oさんの場合の苦い経験が頭をかすめる。

(3)T君、「先生、今の会社を辞めていいですか?」
このT君は、前回の記事に登場した。職場で、仲間を得ることができない苦痛に悩む青年である。繰り返しになるのでここでは詳しくは述べない。
彼も、「積極・奇異型」に属する「(仮性の)高機能性自閉症状」ゆえに仲間から避けられているのである。このケースのように信頼関係の上にじっくり語り合うことができれば、なにかよい方向が見いだせるに違いない。しかし、それは、まれなケースなのである。

(4)S氏、「どうして、自分だけ課長昇進がないのかわからん!」
S氏は、今年45歳になったばかりである。ある大手のシステムハウスに努めている。40歳になったころから、同期は少しずつ課長になり始めた。今年の6月、最後に残った2人のうち、ひとりには課長職の辞令が出た。彼にはまだ出ないのである。
今年の3月、飲んだ席でA部長に彼は迫った。以下は、彼が私に語ったA部長とS氏のやり取りである。
「自分は、誰よりもたくさん働いています。もう、同じ給料じゃやってられません。誰よりも課長昇進は自分だと思うんです。どうして自分は課長になれないんですか」とS氏。
部長は「君は、調子のいい時には目覚ましい働きをする。調子の悪いときは、パソコンでひとり遊び風にネットサーフィンをしていて他の人が君の分まで働いている、と私は聞いているよ。調子の悪いときのことは君は自分で覚えていないようだと聞かされているんだよ」と、実直そうな部長は言った。
「ウソです。そんなことはありません。徹夜だって一番多いのは自分です」とS氏。
「昼間は机で寝ていて、夜10時くらいから2時くらいまで仕事をして、タクシーで帰ることが多いようだね。まずは健康な生活のリズムを回復することだね」と部長。
「でも、自分抜きでは、プロジェクトはどれもうまくいかないでしょう?」とS氏。
「チームの誰が欠けてもプロジェクトはうまくゆかないものだよ。その意味で、君は役に立っていないというわけではないが、君の夜勤体質はチームメイトに多大な迷惑をかけていることを感じないのかな」と部長。
「昼間は、起きていても無駄なんですよ。電話は鳴るし、隣のやつは年中質問に来るし、仕事なんてやってられないんです。寝ていたほうが、そのあとの効率を考えるとずうっといいんです。見てたらわかるでしょう。私は素晴らしい効率で仕事をしています」とS氏。
「いや、客観的に評価すると、平均成果よりも君の成果は3割程度低いことになっている。とはいえ、評価基準自体にどこまで信頼を置くべきか、迷うところだけれどね」と部長。
「ほらっ、そうでしょう。成果の客観評価なんて、当てにならないんです。わかるでしょ」とS氏は自信満々である。
この会社はいつも6月末に大多数の昇進が発表される。その他の時期に発表されるのは、欠員補充のときなどに限られている。今年の6月末も彼の名は、課長昇進者リストにはなかった。
彼は憤懣やるかたない思いで、私に電話をしてきた。社屋の廊下から携帯で電話をしているらしい。一方的に喋りまくり続けて、40分を超えたあたりで、私は尿意を覚えて、「ごめんなさい、トイレに行きたくなったので、この続きは、週末に飲み会を設定しますので、その時に聞かせてください」と言っていったん電話を切った。困った方だが、大事なお客様の窓口担当者なのである。週末の居酒屋は、長時間になった。丸々4時間くらいの独演会を聞く羽目になった。
彼は、俗にいうジャイアン型のアスペルガー(ドラえもんに出てくる"のび太"と"ジャイアン"を人格分類に当てはめた言い方)で、他人を支配したいのに自分の間違いを指摘してくれる人から離れないタイプである。
私は、「部長が言いたいのは、君の単独の業務成績のことではなくて、チームからの人望や統率力、時間的計画性のことなど、リーダにふさわしい資質があるかどうかということではないかと思いますよ。A部長は、能率のことばかり言う人ではないもの」と繰り返すが、「いや、効率を考えると隣の奴に話しかけられる昼間は寝ていたほうがいい」と言い張ってやまないのである。
彼も、「積極・奇異型」に権力欲が加わった俗にいうジャイアン型で、本当は仲間から嫌われていることになかなか気付かないのである。
権力欲については、彼はこう説明している。「皆んな、本当はえらくなりたいんです。これを言わないのがおかしいです。みんなは、いい子ぶっているだけじゃないですか」と。しかし、彼が「自分を課長にしろ」と部長や周囲の社員に触れまわるほど、反発は広がっているのである。ますます人望は失われてゆくのである。しかし、彼は少しもその周囲の気持ちを感じていないのである。自分の言動が周囲にどのような反応を呼び起こすかをまったく感じないという気質なのである。
やれやれ、この方に、どうやってご本人の障害を説明したらよいものか、いや、それは私の役目ではなくA部長の役目だろうな、と思う。

(5)U准教授、「ボクが出席すると、ずうっとボクだけが話し続けていることになるんです」
U准教授(58歳)の長口舌は有名である。何かというと過去の栄光である自分の論文がいかに優れているかを延々と語るのである。最初は、かなり感心する。そして、その話しっぷりを研究にかけた情熱と思ってしまう。「それで、最近の研究論文の別刷りかコピーがあれば、いただきたいのですが」と私はうっかり言ってしまった。彼は、一瞬黙ったのち、また、過去の話を最初から繰り返し始めた。同じ抑揚をつけ、肝心のところでは声を張り上げて、同じ話題のところでは目をうるうるさせて語るのである。「私の研究に関心があるんなら、この論文を読みたまえ。図書館にはあるはずだから」と言って書いてくれたのは、30年以上前の博士論文とその2年後の共著論文1報である。
だれに向かっても、同じ話をしているということは間もなくわかったが、大学というところは、多様な人格を許容するところなので、いったん助教授に採用した人をやめさせたりはしないのが原則である。昔の助教授は横滑りして今の准教授である。
教授会でも、彼に話題を振ると、我田引水とばかりに、強引に話を自分の過去の栄光ある論文の話に結びつけて語り始めるので、皆さんは困惑して、出席者も一時はほとんどいなくて流会も続いたそうである。最近では、U准教授が挙手しても議長はこれを無視するのが通例になっているそうだ。
学会や研究会でも彼は困ったチャンとして有名なのだが、ご本人は一向に意に介していないようである。
U准教授の先輩の話を聞くと、彼の博士論文は彼の指導教官が書いたもの、僕と共著の論文が一つあるが、それは私が全部書いたので、彼が本当に書いた論文は一つもない。彼の名前の付いた論文は、この2つだけだからね、ということだった。
U准教授の観念の中では、すべてが美しく彩られているようだった。30年前の論文は自分で書いたものでないにしろ、内容は当時としては素晴らしかった。しかし、今となっては古すぎる過去の遺物である。それを今でも後生大事に相手の迷惑を構わずに語り続けているのである。
記憶力は大変良くて知的障害はないと思われるのに、言動が思い込みのままになっているのである。幻聴や幻覚は観察されず、一方的に話している自分を他の時も連続した自分として理解しているので、多重人格(統合失調症の極端な例)でもなさそうである。彼が時々自慢げに語る「ボクが出席すると、ずうっとボクだけが話し続けていることになるんです」という述懐は、ともあれ彼は(間違った観念のもとに、ではあるが)統一した人格であることを示している。
このタイプも、「積極・奇異型」に属する「(仮性の)高機能性自閉症状」と推測されるところである。彼我の関係が正しく理解できず、自分の過去の栄光だけが他の諸研究に比べて最高の名誉が与えられているはずと信じてやまず、他の人が迷惑であることを感じ取ることもできずに、自分の思い込みだけを延々と語り続ける人である。彼の周辺の教授たちは、教授職で彼を迎え入れてくれる地方の私立大学はないか、と探しているのである。このまま、この大学で准教授のまま65歳の定年まで、彼をじっと大切に取り扱うには大学のリソースの消費が大きすぎると感じているのである。しかし、うむ、・・・、預けられる地方大学の負担はどうなるのだろうか。

さて、私は、前回の記事(「いわゆる6月病???、卒業生との対話--心理、教育、社会性の発達(64)」)で私は初めて「アスペルガー症候群」という言葉を使用した。今回はその続きともいえる記事である。
私は、「アスペルガー症候群」を不治の病のように言い立てる風潮が我慢ならなかったので、「アスペルガー症候群」という言葉を避けていた。
むしろ、それぞれの人の人生観と症状(人格障害)の関連を調べたり、新しい分類を提案してきた(「学生たちの人格障害と学習能力--心理、教育、社会性の発達(23)」
症状(人格障害)としては、WHOの基準を採用せず、アメリカ精神医学会の分類(DSM-Ⅳ-TR)を採用した。なにしろ、アメリカは本質論を避けて現象論を議論するのが大好きな国民性なので、未だ精神障害の脳機能の機作を正しく説明できない現代では現象論こそ頼りになると考えたからである。現象論を手がかりに、今は(仮性の)人格障害の本質に迫りたいというのが私の立場である。

ここで、私が思慮するのは、回復に向かうには、まず本人の自覚が必要であるということである。医師やカウンセラーに手助けしていただくとしても、本人が自分の症状を正しく理解していなければ、医療機関を訪ねさせることさえも困難である。告知は医師が行うとしても、本人が自覚できなければ、医師のもとに出向くことに本人が同意することはないだろう。
幸い(仮性の)アスペルガー症候群の方たちの知能は正常である。とはいえ、人間というものは自分のことはなかなか理解できない。ということは他人のことは容易に理解するのである。客観的な(仮性の)人格障害の事例をたくさん示して、その不都合なパーソナリティを理解することはたぶん十分に可能なのである。
私は、そうした一般的な教育を一人に対してではなく、クラスの全員に客観的に実施することができればと念願してやまないものである。人格障害に関する基礎的で多様な事例と分類が理解できれば、自分の性格がそのどれかに近いことが理解できるに違いない。合わせて、遺伝的で回復困難なものは少ないこと、多くは軽快または完治する可能性があることを伝えなければならない。人は、希望と可能性がなければ持続的な行動はしないものである。
自覚なくしては回復なし。しかし、自覚あれば回復に希望ありと私は伝えたいのである。

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琵琶


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携帯電話でも、「オウチッ!」は急タ~ン--我が家の愛犬様(27)

2008/08/08
携帯電話でも、「オウチッ!」は急タ~ン--我が家の愛犬様(27)

オテッ、オスワリッ、などの掛け声に反応するのはどの犬も同じだろう。我が家の愛犬様も反応するが、いやな時は、視線をわざわざ外したり、反対側にじりじりと逃げていったりして、抵抗の意思をはっきりと示すのである。場合によっては激しく抵抗してかみついたりもする。それでも、飼い主の言っている言葉は20個くらいは理解していそうだ。
ダッコッ! で、嬉しそうに舌をだらりとして両手を前にあげて立ち上がることもあれば、捕まえられないようにあわてて遠くに走りだすこともある。
散歩の途中で、もう帰ろうよと飼い主が思って「オウチッ! 」と叫んだ場合もそうである。この言葉を聞いた途端に、お行儀よく、ハイハイと言わんばかりに、りりしく、これ見よがしにタテガミを振りたてて向きを変える場合もあるし、とたんに座り込んだり、自分の行きたい方向に目いっぱい綱を引いて、抵抗の意思を示すこともある。

ある日の朝のことてあった。奥さんと散歩に出た愛犬様がなかなか帰ってこない。普通のお散歩ならとうに帰ってきている時間を2倍も過ぎているのに、姿かたちがまだ見えない。お散歩を奥さんに任せた私は心配になってきた。奥さんの携帯電話に電話をしてみるとにした。
呼び出し音がして、奥さんが電話口に出る。「愛犬様にひかれるままに、~~、神社の先の交差点の左に回り込む道から、消防署の裏の電車の高架をくぐって、~~の場所に来たんだけど、メス犬さんのいるお宅の前でうごかなくなって帰ろうとしないのよ。車で迎えに来てくれるっ?」(奥さん) わぁっ、たいへん、その場所は車でも10分はかかりそうなところである。私は、時間に追われて、出立の準備中だった。どうしよう、、、あせって、ままよ「この携帯電話を愛犬様の耳元に持って行ってくれ。説得してみるから」と私がいう(誰かが聞いていたら、おかしなおかしな会話だろうな)。奥さんは、「ハイハイ」と言って素直に携帯を愛犬様の耳元に、私は電話口で「愛犬様、愛犬様。オウチッ!」と叫ぶ。「うぁっ、すぐに、急回転して、帰り始めましたよ」と奥さんはびっくりの声。
きっと、歩き疲れてもいたのだろう、私の(携帯を通じた)「オウチッ!」の呼びかけに、今回は応じてやろうと思ったに違いない。待つこと40分、奥さんと愛犬様は意気揚揚とご帰還である。
愛犬様は、散歩帰りには、玄関を外から覗いて異常のないことを確認すると、玄関の外の見張りに立つのが日課である。しばらく見張りをして異常がないことが確認されると、そのままお気に入りの玄関前のレンガ敷きの上にごろりと寝込んだり、玄関内に入りたいという意思表示(玄関ドアにガリガリと爪を立てる)して、中に入ると愛犬様専用のお布団の上にごろりと寝てしまうのである。しかし、この日は、最初に玄関を覗くや、私の姿を発見してすぐさま玄関内に飛び込んできて、私の差し出す手をぺろりと嘗めてから、もう一度外に出て玄関前見張り行動に移ったのである。携帯で聞こえた声の主をまずは確かめたに違いない。
なんと、携帯電話を通じても、我が家の愛犬様は、私の言葉を理解したのである。エライなぁ、お前さんは、、、。よしよし、と思わずタテガミのあたりをさすってあげてしまった。

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琵琶

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原油高倒産、激増--情報社会学、予見と戦略(22)

2008/08/06
原油高倒産、激増--情報社会学、予見と戦略(22)

原油高を原因とする倒産が激増している。需要増なき原材料の高騰が起こるとスタグフレーションになる危険性が高い。今は、その現象が現実のものになっている。
今の日本経済をデフレがおさまってインフル傾向にシフトしたのだからちょうどよい、などと極楽とんぼそのものの発言をコメンテータや政治家がのたもうのは、なにか魂胆があるとしか思えない。
インフレならば需要増があって物価の上昇があるはずなのに、需要増はない(むしろ原油需要は下がっている)。インフレならば物価の上昇に伴って、雇用や生産が増加するはずだが、そのような気配はない。むしろ、雇用は減少し、企業倒産という形で生産の縮小が進んでいるのである。
これはインフレなどではない。しつこいようだがスタグフレーションである。
スタグフレーションを乗り越える産業改革を--情報社会学、予見と戦略(21)
以下には、企業倒産という形での生産の縮小を如実に示すニュースを引用する。

アサヒ.コム
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「原油高で倒産」急増、上半期で昨年総数超す
http://www.asahi.com/special/050625/TKY200608040390.html
2006年08月04日19時49分
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原油高騰による採算悪化が原因の企業倒産(負債額1000万円以上)が06年上半期(1~6月)で47件と、昨年1年間の29件を上回ったことが信用調査会社帝国データバンクのまとめでわかった。全倒産件数に占める比率は1%程度だが、原油など高騰する原料価格を商品やサービス価格に転嫁できない企業は多い。同社は「原油価格が高止まりすれば影響は様々な業種に広がり、下半期にさらに増える可能性がある」とみている。

原油高が原因の倒産件数と原油価
格の推移
Tky200608040405_2
業種別では運送業22件、漁業6件、ガソリンスタンドなど石油販売業5件で、クリーニング業や紙パルプ業などもある。販売不振などで経営が厳しいところへ、原油高で追い打ちをかけられたケースが大半という。
負債総額が最も大きかったのはカーフェリー運航のマリンエキスプレス(宮崎県)で340億円。次いで、石油販売の月金(青森県)71億円、貨物運送の第一運輸(鹿児島県)40億円など。5000万円未満が計41件と大半を占めた。
帝国データは、民事再生法申請など法的整理のみを集計対象としている。債権者と債務者の話し合いで会社を清算する私的整理も含めた東京商工リサーチの調査によると、原油高が原因の倒産(負債額1000万円以上)は上半期で240件。同社は「製品やサービスの価格に転嫁できている業界とできていない業界がはっきりと分かれている。今後、金利上昇よりも原油上昇の方が中小企業により深刻な影響が出る」とみている。
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スタグフレーションに効く対策は、技術革新による生産性の飛躍である。
今回日本の経済に効く対策は、次の2つが大きな柱である。

1.農業は、生産を工場化すべきである。
2.漁業は、養殖にシフトすべきである。

1.農業の工場化
葉物は植物工場が既に実用になっている。植物工場は露地栽培の40-50倍の生産性がある。汚い、キツイ(中腰作業)から農家は解放される。
空いた土地は、太陽電池を設置してもよいし、他の農業用地としてもよい。
穀物や根菜類はまだ研究途上である。研究活動を強化すべきである。

2.漁業は、養殖へ
牡蠣やエビ、フク、ハマチ、 についてはよく知られているが、フィリピンに進出した日本人によるマグロの養殖も年々大規模化している。天然カツオに近いものを目指すと養殖はコスト高でビジネスにならないがハマチにすれば手ごろな価格になったように、マグロも天然もの本マグロを目指すのは必ずしも有利ではない。本マグロの子供「めじ」を目指せばもっと普及するかもしれない。
サバなども実用段階なので、マグロの子供を産ませる借腹用にも、食用にもなるだろう。
ガソリンを使う漁業はもう転換を迫られている。

農業と漁業に技術革新の余地は大きい。国民経済を救うのは農業と漁業の技術革新であると思う。

なぜ、現代のスタグフレーションはこのような形で発生しているかについては、別の機会に譲るが、理屈の前に、われらは自分の足で立つことを考えよう。もう、躊躇はいらない。走りながら考えよう。

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花火三題--人生に詩歌あり(5)


2008/08/03
花火三題--人生に詩歌あり(5)

8月02日
帰路、松戸の夏花火大会に出遭う。

 肩よせる 浴衣二人が 取り合う手 交わす目配り 人波の夜
 娘たち 浴衣の袖を たくしあげ さえずり笑う 心行くまで
 どんと来て 夜空いっぱい 大菊輪 淡く消える わが人生のごと

琵琶

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