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神戸大学で若き研究者たちと面談--交友の記録(38)

2008/11/03
神戸大学で若き研究者たちと面談--交友の記録(38)

昨日(2008.11.02)は、連休の真ん中の日だった。
この日の午前6時半、私は息子の運転する車で、最寄りの駅に向かった。神戸大学で午後1時に始まる「研究会」に同席するためである。
業務上の出張ではあるが、不安半分-期待が半分というものだった。今回は、久しぶりに出版にかかわるお仕事である。

私の会社は、システムハウスだが、設立時から理工系に特化した出版も手掛けている。私が、大学に出戻ってシステム分野に転換を切る前の10年間は、理工系出版社の編集部員だった。思い上がりにすぎるかもしれないが当時としては業界でかなり有名な編集者だったと思う。出版事業は、会社設立以前の私の嗜好を引きずっているもので、もはや利益追求の事業ではなくなっている。出版売上は、実に総売上の2-3%しか占めていない。残り97-98%はシステム開発関連の売り上げである。
それでも、理工系のまじめな出版をしているということは、私の会社の深い部分での信用を形成していると思うので、私がやれる限りは、こつこつとこの仕事も並行して取り組んでいるのである。私から次の世代に代替わりしたら継続できるかどうかは不明である。

実は、今年の春、関西方面のN教授から日本コンピュータ化学会2008春季年会(at東京工業大学)に来るように言いつかって、のこのこと出かけてゆくと、出版企画があるので紹介したい"人たち"がいるとおっしゃった。突然に多数の人々に取り囲まれて、立ち話をしながら、少しばかりお話ができた。
出版の企画というものは、事前に露見するとつぶれることが多いので、詳しくは述べられないが、生物科学系の皆さんである。大学の若手の研究者の皆さんと関係企業の方である。熱意は私にも伝わってきた。商業出版にふさわしいかどうかという点で本来厳しくなければ社長業にふさわしくないだろうが、物事には心意気というものもある。私は、内心、とにかく何とかしよう、とだけ思って次回の面会を楽しみさせていただくことにした。
それから5か月が経過して10月になり、福井高専のS先生からメールが届いた。本件企画に関連する「研究会」へのお誘いである。出来上がっているドラフトも送っていただいた。目次や分担の一覧表も送られた。さて、何人くらいの参加者でどんな研究会になるのかなと心配だったが、ままよ、行ってみるだけのことよと、腹をくくった。日取りは私の日程に合わせていただけるとのことなので、メールで調整した結果、11月2日という連休のど真ん中の日に決まった。主として私のわがままを皆さんに聞いていただいたことになる。

神戸大学にうかがうのは今回が初めてである。神戸-三宮には、20年ほど前になるが営業活動で足しげく通ったこともあるのだが、六甲山を登ったことはなかった。
研究会は午後1時からということだった。遅くなれば、その日の内に東京までは帰れないに違いない。宿を探すのが一苦労だった。10日ほど前というのに、ホテルは満室が目白押し、価格も通常価格の1.5倍から2.5倍程度に跳ね上がっていた。六甲の近くでは、ネットで探す限りでは空いているのは1泊3万円以上の高級ホテルか、3-8万円もする旅館しかなかった。神戸-三宮周辺に視野を広げてみるとビジネスホテルが多数あるので、数室分は空いているビジネスホテルもいくつか見つかった。そのうちの一つに予約を入れた。それでも平常価格の1.8倍くらいのお値段だったので、驚きである。

三宮の駅を降りると、昼の時間になったので、近くの店に入って辛いハンバーグカレーライスを食べる。辛い~、がうまかった。さらに市営地下鉄にのって六甲のふもとまでゆく。駅員に尋ねてバス停を見つけて、待つこと10分、休日のバスにのる。さすがにすいている。乗客は私を含めて10名程度である。バスは曲がりくねった坂道をゆっくり、ゆっくりと登ってゆく。あー、ここで生活するには車が不可欠だなぁ、という感慨がわいてくる。目的のバス停とよく似た名前のバス停がいくつも出てくるので、そのたびにきょろきょろしてしまう。初めての土地ではいつもそうだが、いわゆる「お上りさん」状態である。客は次第に少なくなり、とうとう私と60代のもう一人の老人の二人になってしまった。やっと、目的のバス停に到着すると、降りたのは私一人だった。
さて、あとはいただいたキャンパス地図に書き込まれたアクセスパスに従って、ゆっくりと歩く。予定時間にはたっぷりと余裕がある。山の空気は実に気持ち良い。紅葉している木々も目に入る。落ち葉が一葉二葉、はらはらと散ってくる。キャンパスは実に心地よい。坂道はきついが、こんなところで暮らすのも悪くはないのだろうな、と思わず妄想めいたことを考えたりした。予定の時刻より40分早く、G棟の正面玄関に到着した。早すぎるので、10分ほど近くのベンチに腰をおろして、周囲をながめた。悠久の時間が思い起こされた。
玄関は休日なので鍵がかかっている。30分前になったことを確認して、携帯電話で、研究室を呼び、中から開けてもらう。
案内された部屋は研究室のミーティンクルームらしく、小さな部屋だがホワイトボードが2つあり、仮眠室にもなるらしくて、ベッド兼用の折りたたみ式の長いすが2つ、棚の上のほうには毛布や枕などが置かれていた。活気のある大学の研究室とはこんなものである。学生らが昼夜を問わずに卒論や修論に取り組むときなどはきっとこの部屋は満室だろうと推測された。東京駅で買い込んだ和菓子(最近東京進出が著しい鎌倉の和菓子)のお土産を手渡して、皆さんのご参集を待つことにした。

参加人数は連絡のない人もいるが、確定しているのは私を含めて4名ということだった。大きな教室も借りているが、少人数なので、ここでやりましょうということになった。この研究室のボスはT教授であるが、迎えてくれたのはこの研究室の部屋頭という風情のK氏(D3)である。そのK氏と、福井から来たS先生、別の大学のN先生が集まって、「研究会」はほぼ定刻にスタートした。冒頭に「研究会」の性格に関する説明があり、執筆対象としているシステムに関心をもつ人々の「研究会」で、その成果を本にしようとしているという状況がわかってきた。テーマはごく絞られている。
お話しているうちに、同じ研究室の博士課程の学生1名と新たに他大学のH先生もやってきた。総勢6名になった。そのうちに、T教授からのご連絡があり、出張の帰りに立ち寄るので挨拶だけさせてほしいとのこと、待ちうけることにした。T教授は高名なのでお名前は従前から存じ上げているが、お目にかかるのは初めてである。ご登場されてすぐに立ち去られたので一瞬の名刺交換ではあったものの、品の良いお顔立ちの先生で、尊大なところの全くない、よいお人柄の方と思われた。
「研究会」の話題は、次第に本の判型やページ数、予定価格、出版点数などに移っていった。以前当社で出版した「SciFinder活用法」(時実象一著)などを参考に、話題が進行した。コスト計算するとかなり高いものになることはご理解をいただけたようで、ページ数削減の工夫に話題が集約していった。みなさんともに頭の回転は大変良いというのが強い印象で、一を言えば十を知るというのはこのような人々だろうと思われた。
あらためて皆さんのお顔を見てみると、おしなべて30歳前後の若き研究者のみなさんの集まりであった。これほどお若い集団とは思いもよらなかったが、その意外性は、私を少し興奮させた。出版の事業とは、私なりの考えであるが、若手の発掘であるというのが持論である。老成した方よりも私はお若い方に肩入れしたい。
お茶の時間になって、私の手土産をお茶うけにして話がはずむと、つい私が饒舌になり、現代の学生気質や教育の問題などをしゃべっていた。途中で自分ばかりしゃべっているのに気付いたが、もう時間は終わりに近かった。
楽しく、軽い興奮をおぼえつつ、わたくしだけ先に退散した。みなさんは残って跡かたずけなどをしていたので、事後のまとめや相談などに時間を費やされることだろうと思われた。「研究会」のあとには「一杯」がつきものという東京の慣習になれていた私は少し拍子抜けのような気もしたが、若者らしい健全なありようなのかも知れないと思ったり、まだ私とはそれほど慣れていないのだから、次回のお誘いのときに楽しみにしていればよいかなと考えたりもした。
しかし、意欲にあふれる若い方々とお話しするというのは楽しい。短い時間だったが、楽しいかった。S先生、Kさん、N先生、H先生、そしてT教授、本当にありがとうございました。そのまんまの私でよろしければ、末長くおつきあいいただければさいわいです。なにとぞよろしくお願いします。

バスで坂道を降り、市営地下鉄にのってホテルの最寄駅に降りて、地図を見る。なんとか歩いてもゆけそうだった。いや、すこし早めに終わったのだから、このまま新幹線に乗って帰ってもよいような気がした。まてよ、こんなに余裕のある時間はめずらしい。本屋によって本を買おう。ホテルでぼんやり過ごすのもいいかも知れない。せっかく、家族を残してきたのだから、私のいない夜を家族で守ってもらう練習をしてもらうのもよいと、勝手な理屈を考えて見たりした。大きな書店を見つけて店内を一巡すると、新刊書の棚に、ニートに関する気になる本を一冊見つけた。「自立塾」などに対しては痛烈な批判が書かれていて、私の常識に鋭い切り込みをかけてくるような内容らしかった。怖いもの見たさの思いで、この本を購入して、ホテルに向かうことにした。
一度、45度程度方向を間違えて、とんでもないところをさまよったが、出現するはずもない役所に出くわして、間違いに気づいた。元に引き返して、元から出直した。15分くらい時間を無駄にしたが、いい具合に散歩ができたとよいほうに解釈した。ホテルに向かう途中、私は、一所懸命、食べ物屋さんを探した。夕食を食べる場所である。ステーキ屋さんは、店の前にかざしてあるメニューなどをのぞいてみるとおひとり様1万円台が多く、5-8万円のコースをうたっているところもある。一人でそんな贅沢はできない。庶民的な所を探そうと気を取り直す。私が出張すると、いつもこんなところである。たいていは居酒屋さんでお銚子1本に焼き鳥定食とか、ウーロンハイいっぱいでかつ丼とかが定番である。安上がりというか、貧乏症というよりも実際貧乏なので当たり前の選択である。
ホテルの近くで、道の反対側に赤ちょうちんが2つ少し離れて並んでいた。まぁ、入るとすればあのあたりのどちらかだなと思いつつ、まずはホテルのカウンターに立ち寄ってチェックインすると、すぐに外に出た。横断歩道を渡って、めぼしい場所に通りかかると、1軒目は4-5人がカウンターに座るといっぱいというお好み焼屋さんで、ドアの窓を覗くと、1組の若い男女がジョッキを手に楽しそうにやっている。そんなお隣にオジサンが無粋に座るわけにもゆくまいと諦めて通り過ぎる。2軒目はなんとラーメン屋さんだった。ガラス越し覗くと、家族ずれらしい6-7人が固まって座っている。席数は20-25くらいのお店である。これならば、店の片隅に座れば、お邪魔虫にはならないだろうと思われた。奥の一番端の席に座ってメニューを見るとラーメン5種、つまみ5種くらいが書かれている。飲み物はピールの中ジョッキか中瓶だけというごく簡素なものである。つまみもすべてラーメンの具と同じである。
私に続いて、中年の男性の二人づれも入ってきた。私は、ピリ辛武蔵ラーメン(700円)を注文する。店の名前は「宮本武蔵」と書いてあった。「宮本」は小さな文字で「武蔵」は大書してある。ご主人の名前が「宮本さん」で、ラーメンが「武蔵」なのかな、などと余計なことを考えさせられた。店内をよく見ると家族づれの大人たち4名はジョッキを次々におかわりしている。男ふたりづれも席に着くなり「ジョッキやッ!」と叫んでいる。ビールを飲まずにはいたたまれない雰囲気である。郷に入れば郷に従え、私は飲み残すことを予期してビールの中瓶を追加で注文した。小さなキムチ皿がついて480円である。ラーメンのほうが先にテーブルに来てしまったので、やや困った。結局、ラーメンをすすりながら、ビールをいただく羽目になった。辛いラーメンとキムチ、それにビールという組み合わせも悪くなかった。まてよ、このラーメンのたれは、うまいぞ。すこしびっくりした。こんな場所で、こんなにうまいラーメンに出会うなんて驚きである。魚介類のスープととトリのスープを混ぜて使用しているらしい。しかも、渋みや苦みは全くない。
うまいうまい、箸が進む。ラーメンが辛いので、ビールも飲めてしまう。一人でビールを飲んだりすれば、いつもはコップ1杯が限度だ(飲む席は好きだが、アルコールはごく少なめでいい体質)が、コップが小さいとはいえ、なんと3杯も飲んでしまった。ホテルまで3分程度という気安さがやや無謀な行動に拍車をかけたかもしれない。それでも瓶の中にはビールが幾分残ってしまった。
締めて1180円、お勘定を済ませて、「ささやかな贅沢やな」と関西弁で、心の中でつぶやいてみた。ホテルの部屋に戻ると、自宅に電話して、妻と息子と愛犬と会話した。最近愛犬様も私と電話を介して会話するのである。愛犬様には「ネンネッ。オヤスミ」と言っておいた。きっとおとなしく寝ただろう。(ウソだとおっしゃるなら、わが家族にお聞きになられたい。いつもは私の帰宅まではおちつかないない様子でじっとしていないのに、電話の後は、さっさと自分のお布団の上に寝そべって寝てしまったのだそうである。・・・、偶然かな)

夜半すぎ、目がさめたので、時計を見ると午前1時、電気をつけて、本を読みだした。読みだすとなかなか止まらない。ほぼ一冊を読み終えると、午前3時40分、もうひと寝りしようと布団にくるまった。次に目覚めたのは、6時半、シャワーを省略して洗顔して身支度を整えると、すぐにチェックアウト、自宅に到着は昼の12時半頃だった。

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琵琶


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コメント

TBを頂いたのを遡って読ませて頂きました。
文字量が凄いですね。
1日1記事で纏めようと思うとこういう風になるのかもしれません。
風来坊な所は一緒のようです。
何か,折があればお話できたらとも思います。
好みは私とぴったりです。
大体修士課程位の人と丁度言語が通じるわたしなんですが、安上がりはもっと安上がりですよ。
尤も、外食では仕方ないかもしれませんが。
時々はお寄り下されば幸いに存じます。

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