カテゴリー

  • 日記・コラム・つぶやき
  • 経済・政治・国際

« それでも冬桜(ふゆざくら)--人生に詩歌あり(9) | トップページ | 日本の子供の孤独感は世界一、子供の幸福感一位のオランダはシティズンシップ教育--心理、教育、社会性の発達(72) »

2008年度次世代大学教育研究大会「大学教育のイノベーション」への出席--感性的研究生活(39)

2008/12/01
2008年度次世代大学教育研究大会「大学教育のイノベーション」への出席--感性的研究生活(39)

少し前のことだが、2008年11月22日(土)13:00-18:00に2008年度次世代大学教育研究大会「大学教育のイノベーション」が開かれた。
今回は私の発表はない。年次大会なので、著名人らのお話を中心にすすめるという進行だった。アトラクションは学会幹事の阪井教授のゼミ生がパネル討議に参加したことだろう。

=============================
2008年度次世代大学教育研究大会
University Education for the Next Generation 2008 (UEng2008)
テーマ「大学教育のイノベーション」
Theme “Innovation of University Education”
-------------
2008年11月22日(土) 13:00-18:00
明治大学駿河台キャンパスリバティタワー11階1113教室
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html
Meiji University, Surugadai Campus, Liberty Tower, 11F Class Room No. 1113
http://www.meiji.ac.jp/cip/english/other/surugadai.html
主催:明治大学情報基盤本部
 http://www.meiji.ac.jp/isc/
共催:次世代大学教育研究会
 http://groups.yahoo.co.jp/group/next-edu/
後援:明治大学学長室
 情報コミュニケーション学会
 http://www.cis.gr.jp/
協賛:日本ポラロイド株式会社
 http://www.polaroid.co.jp/
--------------
13:00-13:15
開会の挨拶
Opening Remarks:
主催・村田潔(明治大学情報基盤本部長)
共催・阪井和男(明治大学、次世代大学教育研究会事務局長)
後援・間宮勇(明治大学学長室専門員長)
--------------
■第1部 招待講演・特別講演
 総合司会:阪井和男(明治大学法学部)
☆13:15-13:55 招待講演 Invited Lecture:
“The University Education System of Taiwan”
・姚 立徳(国立台北科技大学教務長)
Leehter Yao, Dean of Academic Affairs
National Taipei University of Technology, Taiwan
☆14:05-14:45 特別講演 Special Lecture:
「全てはブランディング」
"Everything is Branding"
・藤巻幸夫(株式会社フジマキ・ジャパン、明治大学特任教授)
☆14:55-15:10 休憩 Break

■第2部 パネルディスカッション「大学教育のイノベーション」
Panel Discussion "Innovation of University Education"
 総合司会:阪井和男(明治大学法学部)
☆15:10-15:40 基調講演「イノベーションの構造とイノベーション・ダイアグラム」
Keynote Lecture: “The Structure of Innovation and Innovation Diagram”
・山口栄一(同志社大学大学院教授)
☆15:45-16:05
・明治大学法学部阪井ゼミ学生
16:05-16:25
・武末文男(奈良県福祉部健康安全局地域医療連携課、元厚生労働省医薬食品局血液対策
課課長補佐)
16:25-16:45
・奥田寛司(経産省経済産業政策局人材参事官室)
☆16:45-17:00 休憩 Break
☆17:00-18:00 パネルディスカッション「大学教育のイノベーション」
Panel Discussion "Innovation of University Education"
パネラー:
Panelists:
・山口栄一(同志社大学大学院教授)
・奥田寛司(経産省経済産業政策局人材参事官室)
・武末文男(奈良県福祉部健康安全局地域医療連携課、元厚生労働省医薬食品局血液対策
課課長補佐)
・明治大学法学部阪井ゼミ学生
コーディネーター:
Coordinator:
・阪井和男(明治大学法学部)
☆18:00-18:15 まとめと閉会の挨拶
Summary and Closing Remarks:
・家本修(大阪経済大学)
☆18:30-20:00 懇親会 Banquet:
=============================

私は14:30までリバティタワー近くの校舎で講義をしていたので、参加したのは15:00頃からである。
姚 立徳(国立台北科技大学教務長)先生のお話は聴くことができなかった。

私か会場に到着したころは、次の藤巻幸夫(株式会社フジマキ・ジャパン、明治大学特任教授)氏の講演がまだ続いていて、熱い熱い心の熱波が会場を揺るがすかのごときだった。藤巻幸夫氏と言えば、「福助」の再建に敏腕を発揮した人として知られており、今は無印良品のアドバイザ的役割を果たされているようである。
彼の言わんとするところは、すべての成功はブランディングにかかっているということ、ブランディングには単独のモノやサービスでは出来上がらないので、いろいろな組み合わせが必要なのだということであった。なるほど、その通りだ、ブランディングとは「文化」と呼ばれている地域・民族のある時間を支配する流行のようなものを人為的に作り出すものだから、と内心は思っていた。ならば、もっと法則的なものがあってもよいし、私ならばそれを語ることができるなどと不遜な考えも浮かんだが、私が聞きそびれた時間に氏はすでに話していたのかも知れない。私が思うブランディングについては、別の機会にどこかで書くことにしたい。藤巻氏ともこの件ではよく話し合ってみたいとの思いも強くした。
いずれにしても、私の心を掻き立てたように、氏の熱い語りは多くの人の心を掻き立てていた。「講演は本音でやる芝居だ」と私はときどき思うのだが、藤巻氏の講演などはそのよい例に違いない。

第二部のトップバッターは、山口栄一(同志社大学大学院教授)氏である。氏は、「イノベーション 破壊と共鳴」(NTT出版、2006.02)の著書で知られる方だが、本来は物理学者である。30分という制約では語り足らなかったかも知れない。今回お話の内容は、「イノベーション 破壊と共鳴」のエッセンスであった。氏は、クレイトン・クリステンセンの著書の批判から事を説き起こした。クレイトン・クリステンセンには多数の著書があるのだが、氏が取り上げたのは「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」(クレイトン・クリステンセン 著, 玉田 俊平太・伊豆原弓訳、翔泳社、増補改訂版、2001.07)である。氏の切り口は、クリステンセンのいうイノベーションは、せいぜいコストパフォーマンスのグレードダウンから始まる漸進的改良にすぎず、滅ぼされる巨大企業の漸進的改良と大差はない、とバッサリ切り捨てるところから始まる。氏のいうイノベーシーションは、論理的思考の回路をいったんくぐりぬけて新しいアイディアに行き着くというものであり、 論理的思考の回路をくぐりぬけずにただ改良を繰り返してゆくのかというのがクリステンセンだというのである。
なるほどオリジナルの方のお話はわかりやすい。山口栄一先生の本に影響されたという方は世の中に多数いらっしゃるだが、この方たちの発表を聞くとなんとなくわからない。私には、ただ従来のプロジェクトの進路はこうだったが新たな進路はこうだと、山口理論のパスを示すばかりのように感じられていた。なぜその進路が山口パスといえるのか、さっぱりわからないものだった。そもそも、クリステンセンのイノベーションとどこが異なるのかもよくわからなかった。山口先生のお話をじかに聞いてみると、クリステンセン批判のその1は、クリステンセンは品質を劣化させたケースだけをイノベーションと称しているが、品質を飛躍的に向上させたケースもイノベーションといえるのでないか、というものであった。品質を劣化ならばたいして論理的思考を要しないが、品質を飛躍的に向上させるケースはそうは行かない。品質を飛躍的に向上させるには論理的思考の回路を潜り抜ける必要があるのである、というのが山口先生のお考えであった。
しかし、思うに、クリステンセンのいう漸進的進歩でもクリステンセンの革新的技術進歩であっても、少なからず論理的思考は必要である。技術にまつわる新しい理論はそれほど必要としないまでも、少なくとも新たな市場を見出すためのマーケティング思考や販売網を構築するための図抜けた思考力が必要である。品質を飛躍的に向上させるケースでも、図抜けた思考力は必要だが、どこに重点があるのかという違いや、一つ一つの思考のどれがどれだけ必要かという程度の違いだけによるような気がしてならない。・・・、では、山口モデルは無駄なモデルなのだろうか。論理的思考の分野別の量の違いを質の違いと言い換えているだけなのではないのか。という疑問が浮かぶ。事実、そのような疑問を私に向かってぶつけてきた聴衆もいる(私は山口先生でもなければ、山口先生のプロパガンダーでもないのに)。
私は、山口先生が見出そうとしていたことは、山口先生の結論とは違って、別のところにあるとにらんだ。山口先生は論理的思考が前者にはないが後者にはあると結論つけているが、両者にはそれぞれ各様の論理的思考はあり、差があるとすれば力点のおき方と量の違いである。論理的思考の有無なのではない。決定的に異なるのは両者の論理的思考の質である。山口先生は、「両者の違い」には気づかれているのだが、どんな種類の違いであるかを言い当てていないのである。「両者の違い」に気づいてその問題を明るみに出した山口先生の功績は大きい。しかし、これを有無に還元したり量の違いで説明するのではなく、質の違いであることを説明しなければ本当ではないのではないかというのが私の考えである。私は、その違いを「知識の階層構造(飯箸モデル)」から説明することが可能であると感じているのである。お話が終わった後の休憩時間に、山口先生にその趣旨でできればお話をさせていただく機会をくださいと申し上げたが、あまりご関心はもたれなかったようである。高きに上り詰めた山口先生から見れば「しがない非常勤講師など取り合うヒマはない」ということでもあろうし、私のほうが出すぎたまねをしたと大いに反省して、山口先生の前では沈黙することにした。勝手ながら、この問題は、山口先生のお邪魔にならない機会にしっかり発表しておきたいと思う。

奥田寛司(経産省経済産業政策局人材参事官室)と武末文男(奈良県福祉部健康安全局地域医療連携課、元厚生労働省医薬食品局血液対策課課長補佐)のお話は、それぞれに興味深いお話であった。奥田寛司氏からは全国の補助金授業の事例が紹介されたが、私は特別なご予算なしに、少なくとも同程度のチャレンジはしているという自信を得ることになった。武末文男氏は厚生省の役人にして薬学博士、今は奈良県で働いているということだった。氏のお話は小中高大学の体験談だったが、「私小説」を読む楽しみを味わうことになった。氏は、落ちこぼれそうになるたびに這い上がってきたという体験の持ち主で、「好きなことしていればよい」「落ちこぼれる人は教育が助ける必要がない」というお考えのようだった。

明治大学法学部阪井ゼミ学生のお話は飛び切り面白かった。学生の視点で今の大学はなっていない、と喝破するもので、明治大学で講師を務める私も冷や汗をかきながら聴く羽目になった。しかし、よく聴いてみると、たとえば「学生の思いを分類するとこうなる」という発表資料も、その裏づけになるデータは内容だった。つまるところ、学生らの一人ないし2人が思いついたことを述べているとしか思えないところがあった。「学生の思いを分類する」のであれば、学生からアンケートをとるか、多数のインタビューを敢行してそれをまとめるなどの地道な努力が必要である。少なくとも「学生の思いを分類する」で述べられているのは法学部の学生には比較的当てはまるかもし知れないと思いつつ、情報コミュニケーション学部や文学部の学生には到底当てはまらないと思われるものだった。身近な経験をしっかり整理するのは、大いに結構だが、それを学生全体に押し広げてしまうのはやりすぎである。サンプリング計画をしっかりすること、得られた結果を曲解せずに解釈して見せることなどがなければ説得力を生まない。短期間(1か月)で発表資料をまとめたということなので、やむを得なかったとは思うので、次の発表機会にまでは、このあたりを改善ほしいと感じた。

パネルディスカッションになると、他のパネラーとともに学生代表は男女各1名が壇上に上がった。学生らの話が中軸となり話題が進行したが、女子学生がグループの皆が課題に取り組むように促すと、何でそんなことするの、というような反対のリアクションがあって、高校時代からけっこう苦労したという話を披露した。私は、この発言に共感しつつ、他の先生方の反応をうかがった。驚くことに教員側からは「やりたくない学生はほうっておけばいい」「どうして、他の学生までおせっかいするの」などの発言が続いた。教員の意識とはこうなのか、とおどろいてしまった。学習共同体を成立させ、社会的学習を実践し、社会性を育成しつつ、学習効果を高めることが教育の現場の焦眉の課題であると私は信じつつ日夜難渋しているので、それはないだろう、と思ってしまった。通常の研究会に出ていらっしゃる皆さんは参加型学習理論についてよく知っていて、その方向への努力がされている。しかし、今回の大会に来た方たちは参加型学習理論をご存じはないようだった。

懇親会では、名刺交換が盛んに行われた。私の名刺入れはいただいた名刺であふれんばかりの状態になってしまった。私は、授業に続いての研究会ということもあって、やや疲れ気味、盟友の矢ヶ部先生(跡見学園大学と東洋大学で講師をされている)と久しぶりの長話をした。
一ツ橋大学の高見澤先生、学研の栗山氏(明治大学兼任講師)などとも話が弾んだ。阪井先生や家本先生ともお話したいことがいろいろとあったが、忙しそうなので遠慮した。
たくさんの刺激をいただいて、次のアクションのタグがたくさん残ったような大会だった。
また、忙しくなりそうだが、体がついてゆけるかどうか、まぁ、ボチボチやれる範囲でやろう、と思いつつ、帰路についた。

△次の記事: 感性的研究生活(40)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2008/12/--40-c87b.html
▽前の記事: 感性的研究生活(38)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2008/11/4--38-4bf3.html


琵琶

(補1)「鐘の声 ブログ」はリンクフリーです。ただし、「鐘の声 ブログ」の記事の一部または全部を引用または翻案して、公的に発言または発表される場合は、事前にメール等でお知らせください。[→連絡先]
(補2)この記事が含まれるシリーズの記事の一覧は下記(別サイト)のとおりです。
  感性的研究生活シリーズの記事一覧 (GO!)
(補3)ブログ「鐘の声」には、10個ほどのシリーズとシリーズ以外の一般記事があります。シリーズの全体構成やシリーズ別の記事一覧は下記(別サイト)にあります。
  ☆「鐘の声」の全体構成(「鐘の声 ブログ」記事マップ)☆ (GO!)

« それでも冬桜(ふゆざくら)--人生に詩歌あり(9) | トップページ | 日本の子供の孤独感は世界一、子供の幸福感一位のオランダはシティズンシップ教育--心理、教育、社会性の発達(72) »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/73834/43239503

この記事へのトラックバック一覧です: 2008年度次世代大学教育研究大会「大学教育のイノベーション」への出席--感性的研究生活(39):

« それでも冬桜(ふゆざくら)--人生に詩歌あり(9) | トップページ | 日本の子供の孤独感は世界一、子供の幸福感一位のオランダはシティズンシップ教育--心理、教育、社会性の発達(72) »