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見て覚える脳、共感する脳-日本の成育環境(3)--心理、教育、社会性の発達(75)

2008/12/26
見て覚える脳、共感する脳-日本の成育環境(3)--心理、教育、社会性の発達(75)

ミニシリーズ: 日本の成育環境(全6回)
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1.胎児は母の言葉を聴いている、母語を大切に-日本の成育環境(1)
 --心理、教育、社会性の発達(73)
2.なぜ母子同室優先か、心の芽をつぶすな-日本の成育環境(2)
 --心理、教育、社会性の発達(74)
3.見て覚える脳、共感する脳-日本の成育環境(3)
 --心理、教育、社会性の発達(75)
4.良識は勝ったか?-日本の成育環境(4)
 --心理、教育、社会性の発達(76)
5.教室は「社会シミュレータ」-日本の成育環境(5)
 --心理、教育、社会性の発達(77)
6.成功する単位組織-日本の成育環境(6)
 --心理、教育、社会性の発達(78)
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(1)ミラーニューロンの発見
そもそもの発見は、1996にさかのぼるが、世間が注目したのは2004頃だったと思われる。
参考1: Giacomo Rizzolatti et al. (1996) Premotor cortex and the recognition of motor actions, Cognitive
参考2: Brain Research 3 131-141
参考3: Rizzolatti G., Craighero L., The mirror-neuron system, Annual Review of Neuroscience. 2004;27:169-92
参考4: Rizzolatti G., Craighero L., The mirror-neuron system, Annual Review of Neuroscience. 2004;27:169-92
参考5: Giacomo Rizzolatti and Laila Craighero Annu. Rev. Neurosci. 2004. 27:169-92
比較的新しい発見だが、霊長類の脳には自分が行う行為に伴って興奮する脳の細胞と、他人が行う行為を見ただけで興奮する細胞に一致するものがあるというものである。
これらの細胞群をミラーニューロンという。鏡のように他人の脳の働きを自分の脳にも映し出す脳細胞という意味である。
はじめは、マカクザルで発見された。ヒトが餌を拾うとこれを見ていたマカクザルの脳の特定の神経細胞が興奮することがわかった。その部位は自分が餌を拾う時にも興奮する神経細胞であった。

図 マカクザルで最初に発見されたミラーニューロンの位置(F5)
浅川伸一、脳の科学第四回(2008.8.17)図2(Rizzolatti et., 2004 を改変)http://www.cis.twcu.ac.jp/~asakawa/BrainScience2008/BS2008-04.pdf(2008.12.27確認) (画像をクリックすると拡大表示できる)
20081224f5_3

その後の研究で、マカクザルでは下前頭皮質(上図F5)と下頭頂皮質(PF付近?)の両方にミラーニューロンがあることがわかった。
ヒトでも、前運動野と下頭頂葉にミラーニューロンが存在することが判明した。ヒトの場合電極を細胞に直結するような乱暴なことはできないので、細胞単位での位置の特定はむずかしいが、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)によって、存在は確認できる。

図 ヒトの脳におけるミラーニューロンの位置
下前頭葉は前頭葉の下側(ほぼブローカ野に重なる?)、上頭頂葉は頭頂葉の上側(体性感覚野の上辺?)と推測されている。図は寺沢宏次監修、脳の仕組みがわかる本、成美堂出版(2007)、p.27から。(画像をクリックすると拡大表示できる)
20081224_5

マカクザルの新生児は生涯で初めて見るヒトの表情を巧みに真似することができる。このときもミラーニューロンは働いていると推測されている。ヒトの赤ん坊もヒトの表情を巧みに真似することができる。経験のある筋肉の動作を再生しているのではなく、見た動作と同じことを実行しようとしてミラーニューロンが働いているに違いない。

図 ヒトの表情をまねるマカクザルの新生児(画像をクリックすると拡大表示できる)
Giacomo Rizzolatti and Laila Craighero Annu. Rev. Neurosci. 2004. 27:169-92
20081224_6

まだミラーニューロンには未解明なことが多いが、これまでのヒトの心と脳の働きに残されていた謎の多くが解き明かされる鍵がこのあたりに多そうである。
ヒトはなぜ他人の心が推測できるのだろうか。この疑問は、哲学の世界では大問題であるらしい。たとえば、ミラーニューロンは、ヒトの行動を次の瞬間を予測し、他人の心(脳)の動きをシミュレーションするときに働くと考えられている。たとえば、他人が食べ物に手をかけて実際食べるときと、手に取った食べ物を缶にしまう時では、ミラーニューロンでも興奮する神経細胞が異なる。ミラーニューロンは人が他人に共感できる基本的な能力の少なくとも大事なある部分を担っているに違いない。
ヒトは、見て覚えて、他人の心を推し量り、共感する脳をたしかに持っていたのである。
ミラーニューロンの機能が不完全であれば、他人の心を感ずることができず、しゃくし定規な言動に終始したり、他人の心の痛みを理解しない言葉の暴力や身体生命に対する危害を平然と行うようになるのは容易に予想できる。
しかし、通常のヒトたるものは、健全なミラーニューロンを持ち、見て覚えることができ、他人に共感することができるのである。
第二次世界大戦開戦時の海軍司令官山本五十六の発意として伝えられる教育の真髄とされる言葉がある。
 「やってみせ・言って聞かせて・させてみて・褒めてやらねば・人は動かじ」
  -やってみせ・・・(ミラーニューロンを働かせ)
  -言って聞かせて・・・(側頭葉に記憶させ、頭頂葉に理解を刻み)
  -させてみて・・・(運動野に記憶させ)
  -褒めてやらねば・・・(前頭前野部を刺激して快楽物質の脳内シャワーを行う)
  -人は動かじ・・・こうしてヒトは実践できるようになる。
ミラーニューロンなど、脳の働きが今ほども分かっていなかった60年以上前にこのようなことを見事に言い当てていたというのは驚くべきことである。
実際は山本五十六の発意の言葉ではなく、後代の結合による作り話にすぎないようだが、この言葉自体は大正期または昭和初期にはすでに存在していた点では間違いがないようである。

蛇足だが、この言葉の凄味は、知識とは単なる知識ではなく、ヒトが実践できることを目的とした知識であることを明確に述べていることである。脳科学に興味のある人だけではなく、現代の教育者たるもの、あるいは教育者を育てる人は、もう一度、この言葉をかみしめてみたいものと思う。知識なくして正しい実践はないが、実践なしに正しい知識も育たない、ということを肝に銘ずるべきである。
また、「友達は敵」と教えられ、孤独な学習を強いられる小中高大の児童生徒学生たちは哀れである。他人のナリを見て学び、ともに共感して学習を深めることを禁止された子供たちの脳が発育せず、考える力を持ち得ないの当たり前である。他人の心の痛みを理解しない言葉の暴力(言葉のイジメ)、身体への危害、人殺し等さえ起こしかねない。成育と学習の環境は、もっと共感的でなければならないと心の底から叫びたい。

さて、見て覚える脳、共感する脳をフルに活用する学習が、「正統的周辺学習」「グループ学習」である。
「大学生にもなってグループ学習なんて幼稚なことをするな」という人もいないわけではないようだ。しかし、私も教育にささやかに携わる一人である。少なくとも、私は、ヒトがヒトとして当然の摂理に沿う学習行為である「正統的周辺学習」「グループ学習」を今後もしっかりと実践し続ける決意である。
ましてや、幼小中高の教師のみなさんは、学習者の学習コミュニティを作り育てて、「正統的周辺学習」「グループ学習」を進める実践を強力に進められるようつよく期待する。
参考6: Jean Lave,Etienne Wenger著,佐伯胖訳、「状況に埋め込まれた学習―正統的周辺参加」、203pp.,産業図書(1993)

△次の記事: 心理、教育、社会性の発達(76)
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▽前の記事: 心理、教育、社会性の発達(74)
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琵琶


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なぜ母子同室優先か、心の芽をつぶすな-日本の成育環境(2)--心理、教育、社会性の発達(74)

2008/12/17
なぜ母子同室優先か、心の芽をつぶすな-日本の成育環境(2)--心理、教育、社会性の発達(74)

ミニシリーズ: 日本の成育環境(全6回)
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1.胎児は母の言葉を聴いている、母語を大切に-日本の成育環境(1)
 --心理、教育、社会性の発達(73)
2.なぜ母子同室優先か、心の芽をつぶすな-日本の成育環境(2)
 --心理、教育、社会性の発達(74)
3.見て覚える脳、共感する脳-日本の成育環境(3)
 --心理、教育、社会性の発達(75)
4.良識は勝ったか?-日本の成育環境(4)
 --心理、教育、社会性の発達(76)
5.教室は「社会シミュレータ」-日本の成育環境(5)
 --心理、教育、社会性の発達(77)
6.成功する単位組織-日本の成育環境(6)
 --心理、教育、社会性の発達(78)
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(1)学生たちの回避性はどこから来たのか
学生たちの社会性の欠如、いや、それ以前に人とのかかわり方のへたさ加減に心配したり、時には辟易したりしている日常の中で、ひとつ気がついたことがある。
日ごろ、彼らの性癖の由来は、大学に入るまでの数年間程度の付け焼刃ではなく、かなり根源的なものであるように感じていたのである。原因はたくさんに違いないし、推測されるそのいくつかをこのブログでも何回か列記してきた。今回は、その中のひとつ、しかももしかしたら決定的に大きな原因であるかもしれないひとつを取り上げる。
それは、「母子分離」か「母子同室」かということである。
日本では、分娩直後の赤子を新生児室に入れて母体と引き離す方法が多く取り入れられている。この方法を「母子分離」または「母子異室」などという。
男の私が、産科の話題を取り上げるのはずいぶんためらわれたが、どうしても黙ってはいられなくなった。
心ある女性の皆さんは、「母子分離」の問題点を取り上げ、また「母子同室」を体験した方はそのよさを大いに語っているように思うのだが、世の中に受け入れられるところがまだ少ないようである。
幸か不幸か、私のこのブログの記事は、文部科学省や厚生省、総務省などの皆さんからもたくさんのアクセスをいただいているので、行政に携わるインテリの男性諸氏にも是非これらの問題を知っていただきたいと念じて、ここに紹介することにした。

(2)心ある女性たちは母子同室を推奨する
まずは、心ある女性の皆さんの発言をいくつかご紹介することにしたい。

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作者不詳、"母子同室制と異室制"、新オッパイ ア・ラ・カルト(200812.18確認)
「① 人生が別れで始まる私たちの赤ちゃん」 http://www.osk.3web.ne.jp/~bonikuji/etc/etc-4-1.htm(200812.18確認)
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出生直後より、人類を除く全ての哺乳動物は例外なく同床・同禽です。例えば生まれると直ちに母と子を別々の場所に引き離し、一定の時間(その臨界期はそれぞれの種族によって異なりますが)離れ離れにした後、再び親子を一緒にしても、最早母親は我が子とは認めず、決して養育しようとしないだけでなく、時には食い殺してしまいます。
例えば山羊の場合、生後3時間以内に親と離して、再び一緒にした場合、親山羊は子山羊を殺してしまうといいます。しかし生後2日間親と一緒に過ごさせ、その後離した子山羊を再び親のもとにかえした場合、親山羊は子山羊を受け入れます。この事は山羊の場合、生後二日間で親子関係が成立したことを示しています。
このように Ethology(動物行動学)の立場からすると、人類以外の哺乳動物では、出生直後の母子分離は自然の掟に反する行為のようです。一人人類のみが、この哺乳動物の掟から例外であり得るのでしょうか。
・・・
(以下略)
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元ナース、"産後の母子同室・異室について"、発言小町 >妊娠・出産・育児、http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2008/0519/184257.htm?g=05(200812.18確認)
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2008年2月に出産した者です。
私はもともと産婦人科で看護師として働いていたのですが、私が働いていた時すぐにベビールームに預けようとする人が結構いました。
その理由として夜はぐっすり寝たいから…とか自分本位な意見も多く自分が頑張って産んだ子なのになんで自分で見ないの?といつも不思議でした。
退職後、妊娠し帝王切開で出産した私は出産病院の方針でもあったのですが母乳推進母子同室に積極的に取り組んでいたので手術直後から同室しました。
傷が痛い等もありましたが、ぜんぜん苦にはなりませんでした。
なので預けたい気持ちが「産んでみたらわかるかも…」と思っていましたが結局私にはわかりませんでした。
うちの子は比較的おとなしく寝てくれる子だったからだとは思いますが一緒にいることが幸せでした。
最近出産した友達の面会にも行きましたがその子もすぐ預けるとのことでした。
「どうせ退院したら一緒にいるんだし」「(一緒にいて)なんかあったら怖いから」がその子の理由でした。
私の考えは入院中に一緒に生活したほうが退院後楽なのに…と思います。
産後の考えについて皆さんの意見を聞かせて下さい。
ユーザーID:5256379621
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、"生後0ヶ月~1ヶ月 育児日記"、はーちゃんママ年中無休!!、http://homepage1.nifty.com/haruna-mama/ikuji-0-doushitu.htm(200812.18確認)
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母子同室
 この病院は、産後体調が悪くない限り必ず母子同室になる。
昼間だけでなく、夜もお世話をするのだ。
私は出産の際、出血がかなり多かったため、貧血がひどかったので無理しないで新生児室に預けるように進められた。
当然、そんな話はお断りした。
産後直後にほんのちょっとだけ抱っこしただけ、ミルクの時間に10分抱いているかどうか。
新生児室の面会時間は決まっているし、第一触れる事ができない。
ちょっとでも一緒に居たいという私の執念で(?)めでたく同室になった。
・・・
(以下略)
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1900年ころ、欧米では、母子分離が推奨されていた。分娩直後母子が同室していると感染症のおかげで、新生児の生存率が低くなってしまうからである。しかし、産院の衛生状態が改善してくると、母子が分離していることも問題のほうが浮き彫りになり、1940年代には母子同室を推奨する声が高まってくる。第二次世界大戦を経て、1950年代にはアメリカでは母子同室が主流になり、ヨーロッパでも引きこもりの多発が問題になった1970年代に母子同室への移行が進んだ。
日本は、長く母子は同室であったが、戦後日本を占領したアメリカ軍とGHQは新生児の死亡率の高い当時の日本の悲惨な状況を改善するために母子分離政策を徹底して進めた。
その直後、アメリカの主流は母子同室になり、ヨーロッパも1980年代には母子同室が主流になった。しかし、一番遅れて母子分離を取り入れた日本は、その後の今も相変わらず主流は母子分離のままである。
日本にも、GHQの指導に抵抗して母子同室を貫いていた産科医はいたし、江戸時代から続く著名な産科医院もあった。最近では、進んだお母さんたちが母子同室を求めることが多くなって、希望があれば母子同室にも対応する産科も増えてきた。それでもまだ多数の病院の産科では、母子分離(新生児室、ベビールームなどに赤ちゃんを分離している)のである。

(3)他者とのかかわりの芽は、人としての心の芽
私が問題にしたいのは、次の点である。
分娩直後の乳(初乳)の大切さなども、そのとおりだが、赤ちゃんの精神発育にとって母子分離が極めて有害であるということである。
赤ちゃんは、母親と母親以外を区別している(母親の声を胎内で聴いて記憶している)ことは前回の記事にも触れた。赤ちゃんは泣いて母親を呼ぶのが仕事のようなものである。お乳が飲みたい、おしっこやウンチで気持ちが悪い、というときに赤ちゃんは泣いて母親を呼ぶ。泣いて呼べば、母親の手がすぐさま差し伸べられるというのが自然ではあるまいか。新生児室に入れられた赤ちゃんは、泣いても誰も来ないのである。病院によって異なるだろうが、看護師さんは3時間置きに見舞ってくれるのが関の山である。「泣いて-->すくに手が差し伸べられる」のと「泣いても泣いても-->誰も来ない」では何が違うかは歴然である。赤ちゃんは、「自分が何かを発信すれば、誰か(たいていは母親が)がすぐに応じてくれる」という練習をする機会を奪われているのである。「泣いても泣いても-->誰も来ない」を人生の初めに体験した子供は、何かを発信すれば誰かが答えてくれる、と思う心の仕組みにひずみが生まれており、どうせ誰もわかってくれないという絶望感を心の傷として持ち続ける少年になり、青年になってゆくのである。他の子供と遊ばない子(一人遊びしかできない子)、コミュニケーション能力の低い大学生の根っこが、この母子分離の悲惨な体験にあるといってよいのではないだろうか。

(4)(仮性の)回避性人格障害は、なんと半数も
少し古いが、学生たちを私が勤務する大学を縦断的に調査した結果がある。私が世界初の「エイトキュービックモデル」を提唱した仕事でもある。ここの図を次に再掲する。
1
左のグラフは学生の特性別の成績、右のグラフが学生の比率を表わしている。
右の図中の赤い文字が見にくいが、それぞれ以下のようになっている。
-----------------
「私欲小×社会性大」という社会的リーダの可能性を示す学生が30.5%
「私欲大×社会性大」というビシネスリーダの可能性を示す学生が8.5%
「私欲小×社会性小」というニート予備軍である学生が50.4%((仮性の)回避性人格障害)
「私欲大×社会性小」という犯罪を犯す危険性が高い学生が10.1%((仮性の)反社会性人格障害)
-----------------
ニート予備軍「私欲小×社会性小」の者たちは、「できるだけ他人とかかわらないで生きてゆきたい」などと回答した者たちで、50.4%と圧倒的に多いことがわかる。言ってみれば「(仮性の)回避性人格障害者」である。その時よりも以前の統計はないが、こんなに多かった時代はおそらくないだろう。
実際には、ヒトは「他人とかかわらないで生きてゆく」ことなどできないことである。「他人とかかわりたくない」と願えば、どんな組織でもうまくゆくはずはないし、いずれははじき出されて社会的引きこもりを余儀なくされてしまうのである。「他人とかかわりたい」と願っていてもリストラ解雇の憂き目にあう時代である。「他人とかかわりたくない」と願えば、まっさきにやめさせられてしまうのが道理である。
いったいどこから「他人とかかわりたくない」などという、情けないくじけた心が生じているのだろうか。ひとに人生あり、学生といえども、ひとりひとりにはたくさんの成育物語があるだろうが、こんなにたくさんの若者が(たぶん)幼少のころから そろって くじけている ことには、共通の原因があるのではないだろうか。それほど大規模で徹底してなされている成育の失敗は、「母子分離(母子異室、母子別室)」以外にあるだろうか。

(5)母子同室は医療関係者も望んでいるが普及していない
これもさらに古い研究報告(1996年)だが、産科の現場の従事者を調査した結果を紹介したい。この報告書は「母子同室の実施割合について0%もしくは20%以下と回答したものは産婦人科医の54.4%,助産所以外に勤務している助産師の56.4%と半数を超えていた」「科学的根拠を重視するならば,早急に病院や診療所の母子同室の実施率を改善する必要がある」と述べているが、今だに、大きな改善があったとは考えられない。

国立情報学研究所CiNii
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004741374/
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母性衛生
Maternal health
Vol.47, No.2(20060700) pp. 448-454
日本母性衛生学会 ISSN:03881512

書誌情報
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日本の赤ちゃんは出産後に母子同室で過ごせているか : 産婦人科医と助産師を対象とした横断研究より
Is rooming-in possible for Japanese new-born babies during their first days at institutions? : A cross-sectional study from randomly sampled obstetricians and midwives in Japan
三砂 ちづる 1 竹原 健二 2 岡井 崇 3 戸田 律子 4 北井 啓勝 5 林 公一 6 柴田 眞理子 7 尾島 俊之 8 阿相 栄子 9 中村 好一 10
Misago Chizuru 1 Takehara Kenji 2 Okai Takashi 3 Toda Ritsuko 4 Kitai Hirokatsu 5 Hayashi Kimikazu 6 Shibata Mariko 7 Ojima Toshiyuki 8 Asou Eiko 9 Nakamura Yoshikazu 10
1津田塾大学学芸学部:国立保健医療科学院疫学部 2筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻:国立保健医療科学院疫学部 3昭和大学医学部産婦人科学教室 4NPO法人いいお産プロジェクト 5埼玉社会保険病院産婦人科 6関門医療センター産婦人科 7上武大学看護学部 8自治医科大学公衆衛生学教室 9自治医科大学公衆衛生学教室 10自治医科大学公衆衛生学教室
1Faculty of Liberal Arts, Tsuda College, Department of Epidemiology:National Institute of Public Health 2University of Tsukuba Graduate School of Comprehensive Human Sciences:Department of Epidemiology, National Institute of Public Health 3Department of Obstetrics & Gynecology, Showa University School of Medicine 4Japan Association for Childbirth Education 5Department of Obstetrics & Gynecology, Saitama Social Insurance Hospital 6Department of Obstetrics & Gynecology, Kanmon Medical Center 7Department of Nursing, Jobu University 8Department of Public Health, Jichi Medical School 9Department of Public Health, Jichi Medical School 10Department of Public Health, Jichi Medical School
キーワード 母子同室 科学的根拠に基づくケア 出産 産婦人科医 助産師
        rooming-in evidence based care childbirth obstetrician midwife
抄録
【背景】本研究では正常分娩直後からの母子同室について,実際にお産を取り扱っている医療従事者の実施状況や考え方を明らかにすることを目的とした。【方法】主たる学会員が産婦人科医および助産師で構成されている団体の会員へ配布公表されている名簿から無作為抽出した474人の産婦人科医と728人の助産師を対象として,自記式質問票を用いた横断研究を実施した。【結果】母子同室の実施に対して「賛成である」と回答したのは,産婦人科医の59.3%,助産所以外に勤務している助産師の88.5%であり,助産所に勤務している助産師においては100%であった。また,対象者がかかわったお産における母子同室の実施割合について0%もしくは20%以下と回答したものは産婦人科医の54.4%,助産所以外に勤務している助産師の56.4%と半数を超えていた。一方,助産所に勤務している助産師において,実施割合が100%と回答したものは95.7%であった。【考察】WHOやUNICEFが母子同室の重要性について提唱し,推進しているにもかかわらず,わが国における母子同室の実施率は十分に高いとはいえない。科学的根拠を重視するならば,早急に病院や診療所の母子同室の実施率を改善する必要がある。
BACKGROUND: In 1996 the World Health Organization introduced the "Care in Normal Birth a practical guide" for promoting evidence based childbirth care. One step suggests that a mother and her newborn baby should remain together day and night during the hospital stay. The purpose of this study was to investigate, first, whether or not mothers in the hospital roomed-in with their babies after delivery in Japan, second, the attitudes of obstetricians and midwives toward rooming-in and their feelings concerning it. METHODS: A cross-sectional study using a structured questionnaire was conducted in 2003 and 2004 among 474 obstetricians and 728 midwives randomly sampled from the member lists of the associations of which most of the members were obstetricians and midwives. RESULTS: All autonomous midwives working for a birthing house (n=24), 88.5% of hospital-based midwives (n=676) and 59.3% of all obstetricians (n=474) were positive toward rooming-in. However, the practice rate of rooming in was between 0~20% among more than half of the hospital-based obstetricians and midwives. All midwives working for a birthing house practiced rooming-in. CONCLUSIONS: Implementation rate of rooming-in practice recommended by WHO and UNICEF among Japanese hospitals was not satisfactory. It is urgent need to improve perception and practice among health professionals to ensure rooming-in for better initiation of breast feeding for mothers and new-born babies in Japan.
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(6)がんばる産院もある
産科のみなさんも単に手をこまぬいているわけではない。心ある産院の皆さんは、日夜「母子同室」の推進に努力を重ねている。このことで成功をおさめていらっしゃる産院も少ないとはいえない。
「母子同室」でgoogle検索をしてみると、本日現在20位以内に入っている産院には次のようなものがある。産院の宣伝に加担しているようで、少し心苦しいが、がんばる産院も少なくないことを示すためにあえて取り上げる。

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笠松産婦人科・小児科
http://www.kasamatsu-sanfujinka.or.jp/hospital/home/green_3.htm
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私たちの施設では、WHO/ユニセフの『母乳育児成功のための10ヵ条』の第7条
「一日中24時間、母子同室を実施する」 に基づいて、
出生直後からの母子同室を行っています。
生まれた赤ちゃんがお母さんと一緒にいることは、自然で、当たり前のことではないでしょうか。
母子に問題がなければ、
  ・経膣(普通)分娩では、出生直後より同室
  ・帝王切開分娩では、翌日より同室
  (当日は赤ちゃんをお連れします。赤ちゃんに会うと
  きっと痛みが和らぐことでしょう。もちろん当日からの同室も可能です)
<母子同室の利点>
1. 母親と新生児が最適な接触の機会をもつことができ、一般的にこの相互作用を病院のスタッフではなく母親がコントロールできる。
2. 母親は、乳児が早期に出す合図や要求、生活のパターンがよくわかるようになる。
このため、家庭で乳児の要求に応えるための準備が容易になる。
3. 乳児は要求に応じて頻回に授乳されるため、すぐに充分な量の母乳を飲むことができる。母乳育児がうまくいく可能性が高まれば、それに伴う栄養上、免疫上および心理的な恩恵も増大する。
4. 乳児の啼泣が少ない。
5. 母親は、看護スタッフより早く医学的問題の症状や徴候を発見する。
6. 頻繁に授乳を行うため、乳児のビリルビン値が低くなり、黄疸が減少する。
この結果、検査や光線療法の必要性が減る。
7. 感染症に罹患するリスクが小さい。
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石井第一産科婦人科クリニック
http://www.babyf-i-clinic.com/cgi-bin/babyf-i-clinic/siteup.cgi?category=3&page=0
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母子相互作用や母乳育児の確立
 <お母さんが赤ちゃんに与える影響>
出生後、早期からの母子の接触は、後々の母子の愛情、
基本的信頼の確立に大きな影響を及ぼすと考えられ、
事実科学的データで裏付けされるようになりました。
また、お母さんと赤ちゃんのみでなくその他の家族(父親、兄、
姉、祖父母など)とも触れあう機会を多く持つことができます。
さらに、入院中から一日中一緒に生活することによって、
退院後に大きなパニックに陥ることなく
育児することができます。
 <母乳育児の確立>
母子同室では早期の頻回授乳と自律授乳(与えたい時に
いつでも与えられる)が可能となり、母乳哺育の確立を
助長する大きな要因となります。
感染予防の面では、新生児室で集団保育されるよりも
母親が自分の赤ちゃんのみを取り扱うため、感染のリスクが
低いと考えられています。
赤ちゃんはお母さんが同じ部屋にいる事がわかります
東大の小林先生のグループは赤ちゃんの体表温度がお母さんが部屋を
出ていくことにより下がり、赤ちゃんの部屋に戻ってくると再び上昇する事を
発見しました。

母子同室の実際
 <分娩後直後から>
赤ちゃんは生まれると直ぐにお母さんの胸に抱かれ、
いわゆるカンガルーケアーが始まります。
(skin-to-skin attachment)
母子に異常がなければ、分娩後60分以内に初めての
授乳(乳頭を吸ったり、なめたり)をします。
出生後60分の時点では赤ちゃんの意識がはっきりと
醒めていることより出生後60分以内の授乳が大切と
いわれています。
分娩室でも、病室でもなるべく赤ちゃんと
一緒に過ごします。
・・・
(以下略)
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芳村医院
http://www.qlife.jp/kuchikomi_559938_43177
ゆきぶーさんの評判口コミ
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長男をこちらで産みました。
他の病院で聞く、旦那の出産立会い時に、ガラス越しだとか病衣のようなものを着せられることともなく、ずっと手を握っていてくれて心強かったです。
生まれてからも、初めての子育ては心配な事ばかり。
出産後3日目からは母子同室で大変だったけど、布オムツを使っていて良い勉強になりました。
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高橋産婦人科クリニック
http://www.tgc.or.jp/torikumi/boshidoshitu.html
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<完全母子同室の実施>
赤ちゃんにとって、
お母さんと一緒にいることが何よりの安心です。
当クリニックでは、完全母子同室を実施しております。
母と子の絆を考えると出産直後から母子同室で赤ちゃんとお母さんがふれあい、そしていつでも赤ちゃんにおっぱいを含ませてあげることが何よりも信頼関係を築く第一歩だと考えています。
赤ちゃんとお母さんがずっと一緒に過ごすこと。
おっぱいで育てること。
これはごく当り前で自然なことです。とはいっても最初は不安や戸惑われることも多いと思います。
そこで当クリニックでは完全母子同室にあたって、お母さまお一人につき看護師が一人サポートするマンツーマン体制を実施しております。おっぱいのこと、赤ちゃんのお世話の仕方…ちょっとしたことでも気軽に聞ける環境つぐりに努め、お母さまが「いったいどうしたらいいの…!?」という不安な思いにならないようにサポートしております。(だたし、お母さまの体調によっては赤ちゃんを新生児室にてお預かりいたします。)

<完全母子同室のメリット>
母乳育児が確立しやすい
母乳分泌のアップ
母性本能のアップ
退院後の育児への自信がつく
入院中にも家族とのふれあいが持てる
母乳育児のメリット
赤ちゃんを病気から守る免疫物質がいっぱい含まれている
哺乳ビンにくらべおっぱいを飲む力がいるのであご、脳が発達する
泣いてもすぐにおっぱいを含ませることができる(飲ませるまでの準備がいらない)
夜中にわざわざ起き上がってミルクを作らなくていい
出掛ける際、荷物が少なくてすむ(哺乳ビン、粉ミルクのセット等)
おっぱいを吸う刺激により子宮が収縮するので子宮が早く元に戻る
経済的
など、赤ちゃんにとってもお母さんにとってもたくさんのいいことが母乳育児にはあります。
生まれてからすぐにたくさんの免疫物質を含んだおっぱいを飲むことで免疫機能の発達を促し、結果丈夫に育ちます。おっぱいで育った赤ちゃんは病気になっても比較的治りが早いので母も子も楽です。
お母さんのぬくもりを感じながら飲むおっぱい…。
なんといっても赤ちゃんにとってこのうえない安心感なのです。
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このほかにも、たくさんの産院が、「母子同室」に積極的に取り組んでいます。とてもすべてはご紹介できないことをお詫びしつつ、ご苦労に感謝を申し上げます。


(7)関連する研究報告
「母子同室」が良い、とする研究も多数行われている。これらの研究を真摯に受け止めて、ご関係の省庁、医師会、その他ご関係の皆様、ぜひとも「母子同室優先」を決意していただきたいと思う。全国のお母さん(お父さんも)、これから親となる若い男女のみなさんは、病院選びは「母子同室」を進めるところを優先しよう。産む人が、病院を選べば、病院も経営が大事だから「母子同室」に傾くだろう。
母親が重篤な病気で添い寝できない、新生児が生死をさまよっている、などの特別な事情がない限りは、「母子同室」を選択するのがよいだろう。
「泣けば、母の手がすぐに差し伸べられてくる」ことがあれば、(仮性の)回避性人格障害は、10分の一程度まで減るのではないかと思う。わが子をニートや社会的引きこもりにしないためにも「母子同室」を! と叫びたい。
下記の報文の中に出てくる「アタッチメント」とは心理学用語だが、「母子愛着」とでも訳したらよいだろう。

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母子相互作用の発達心理学的研究「プレアタッチメント期の母子相互作用」
小島謙四朗(早稲田大学文学部)
http://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/1982/s5706035.pdf
----------------------
引用「Newson,J.(1974)は、人間の乳児は母親が注意を払わざるを得ないシグナルを出すようにあらかじめプログラムされており、母親は必ずそれに社会的意味を付与すると述べているが、分娩直後の新生児は、まさに産声によって母親の接近を促がし、それに続く目を開いた状態が母親に快い状態でこの接近を維持させる機能を働かせているとみなすことができよう。さらに分娩直後の高喚起期における母子の出会いは、母親のmental sensitivityを一層高める効果をもつことも予想されるのである。」
新生児Special Care Unit(NICUを含む)における母・子相互座用の臨床的心理・行動科学的研究
小川次郎(聖隷浜松病院)
http://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/1982/s5706055.pdf
「母親が実際に赤ちゃんを抱き、支え、揺り動かし、ミルクを与えるといった行動をすることによって、子へのアタッチメントが成立すると考えられる。」
こどものおいしゃさん日記「母乳育児の支援のために」
http://childdoc.exblog.jp/1741592/
本来の母乳育児支援は、今現在直接に関わりのあるお母さんと赤ちゃんに対してしか、行えないのではないかと思う。世間の母子の何パーセントが母乳育児でとか、あるいは当施設では他施設平均と違って母乳育児率が高くて云々とかいった公衆衛生的な視点は、臨床の場にあっては参考にこそすれ、第一義のものではないと思う。
自分のところでお産になったり、赤ちゃんをNICUにお預かりしたり、そういうご縁のあった方々に、丁寧に母乳育児をお勧めしていくことしか、ないんじゃないかと思う。何人中何人ではない。つねに、一人中一人。
京都市内のある病院では完全母児同室を実践したら分娩入院が減ったそうだ。うちのベテラン助産師も、お産の後くらいは休みたいと仰って母児同室を敬遠なさる女性がけっこう多いと言う。お産後30分とか1時間とかで初回の授乳(もちろん母乳)・その後の24時間以内に8~12回の授乳、というのが母乳育児成功の端緒なのに、そのゴールデンアワーを母児離れてのほほんと寝ててどうするんだと思う。でも、寝るな怠け者!と産後の女性を叱咤激励しても、確かに人気は落ちるだろうと思う。
お産の直後から母乳哺育に取り組んで頂くには、お産の前から母乳哺育の意義についてしっかり申し上げておきたいものである。あまり高邁な事ばかり申し上げても妊婦の皆さんは腰が引けるばかりだろうし、今さら母性愛がどうの母児の心のつながりがどうのと歯の浮くようなことは申し上げるのも薄ら寒い。むしろたとえば「子どもが熱を出したから今日は早退させてください」と雇用主に言わねばならぬことが格段に減りますとかいう経済社会的なインセンティブを絡めて良いと思う。
お産が疲弊するだけの重労働だという位置づけを改めることが大事だと思う。「オニババ化する女たち」で三砂ちづる先生がお書きになったような、赤ちゃんを産み落としたばかりの女性が「ああまた産みたい」と仰るような至高の体験とできたらよいと思う。分娩で疲れたから母乳育児はひとまず置いておく、というのではなくて、分娩の勢いに乗ってそのまま母乳育児に突入できるような、そういう分娩であったらよいなと思う。そういう分娩に出来るような、助産側の実力が要ると思う。
赤子は母乳のみにて育つにあらず。
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「厚生省心身障害研究報告書」 昭和57年度
「母子相互作用の臨床的・心理・行動科学的ならびに社会小児科学的意義」に関する研究
小林 登 東大病院小児科教授
http://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/ssh_1982_06.htm
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(目次)
評価委員講評
評価委員として
評価委員講評
評価委員講評
評価委員講評
研究班構成
構成員名簿
昭和57年度研究経過
昭和58年度研究経過
昭和57年度分担研究者研究報告
コンピュータ画像処理による母子相互作用の研究
産科的側面よりみた母子相互作用の研究 -電子スキャン超音波断層法による胎動の分析-
母乳の匂いについて
SFDとAFDの聴性誘発電位と聴性行動反応
ニホンザルの母子行動 その3 母子分離と他個体との出会せ
1歳6ヵ月児の言語習得からみた母子相互作用
新生児の姿勢制御について(2) -重心・接着面からの考察-
分娩直後の母親の行動と母子相互作用
母子同室制に関する研究 -妊娠中及び産後の意識調査の比較-
妊娠・出産・産褥期の適応行動と親子関係 -ハイ・リスク者のスクリーニングの視点から-
妊娠・出産と家族 -妻の分娩に立ちあった夫とその家族の特徴-
母子相互作用の成立とその評価 -母子の早期接触、育児指導の重要性-
親(母)と子の接触欠落時間からみた小児カウンセリングのすすめ方(予報)
母子相互作用に伴う母親の母性・女性性獲得の過程 -出産直後の母性意識と生後13週時期の母子行動のトポグラフについて-
胎生環境とBrageltois neonatal behairoral assessment scaleによる新生児の行動発達
乳児の気質と発達に関する研究 1行動様式質問紙(1-2か月児用)の検討と標準価
乳児の気質と発達に関する研究 2行動様式質問紙(乳児用)の検討と標準価
新生児のstateに関する研究(breast feedingとbottle feedingの相違)
母性同一性と子どもの適応に関する研究 I母と子の心理的距離の測定に関する研究 II妊婦の母性同一性に関する研究 III妊娠・出産による母性意識の変化とその規定要因-SCT反応を中心に-
小児の行動異常と乳児栄養方法との関連に関する研究(3)
保育における相互作用の意義(III) -問題をもつ幼児の行動・性格と家庭における養育およびその治療について-
子どもの心的発達に関する母親の期待
母子相互作用の臨床的・実験的研究 1母子相互作用の実験的研究(その3)
母子相互作用の臨床的・実験的研究 2妊娠期の母子関係 -妊娠用文章完成法(SCT-PKS)の作成とその統計的分析-
母子相互作用の臨床的・実験的研究 3乳児院退院児の家庭への適応(その2)
母子相互作用の発達心理学的研究
母子相互作用の発達心理学的研究 1 プレアタッチメント期の母子相互作用
母子相互作用の発達心理学的研究 2 アタッチメントの発達と養育条件 -家庭児と保育園児の比較から-
母子相互作用の発達心理学的研究 3 3才児における発達水準と母子分離の可能性について
母子相互作用の発達心理学的研究 4 乳幼児保健指導と母子相互作用仮説
児の気質的特徴・母子相互交渉と母へのアタッチメント・社会的発達との関連
海外居住邦人主婦の育児に関する研究
母子相互作用の社会小児科学的検討 -乳幼児期の委託育児の発達に及ぼす影響の検討-
都市乳児の健康・安全行動の形成における母子相互作用に関する研究
幼稚園児の家族構成、育児と発達の関係
鹿児島県・沖縄県の約50年前の母子関係
小児心身症の背景としての親(父)子関係
青年の親準備性に関する研究(2) -高校生の場合-
行動計測よりみた対人関係の発達と自由場面での新生児行動の解析
自閉症の病態生理に関する研究
中枢神経障害児の睡眠・覚醒リズム
児の入院に対する母親の心理的反応の推移
愛情遮断性小人症の内分泌学的研究
低出生体重児の新生児期発達における感覚刺激
犬にみられる母子相互作用の考察
未熟児センター内保育に家族が早期に関与することの親子・家族関係に及ぼす影響
新生児Special Care Unit(NICUを含む)における母・子相互作用の臨床的心理・行動科学的研究
極小未熟児の親子関係 -入院中における両親の心理的・情動的変化-
母子相互作用からみた産前産後の休養および育児の期間
周産期のタウリン値
子宮内音が新生児の睡眠パターンにおよぼす影響
超未熟児の幼児期よおける家庭での母子関係 -母から子への態度(その2)、1年後の変化-
難聴を疑われる乳児の実態について主として3ヶ月健診児を対象に
1才6ヶ月健診時における母子関係について
山形県の農村地域における育児環境の実態と母親の意識について
各研究班員3年間のまとめ
コンピュータ画像処理による母子相互作用の研究
産科的側面よりみた母子相互作用の研究 -電子スキャン超音波断層法による胎動の分析-
母乳の匂いに対する新生児の反応
低出生体重児の聴覚の発達に関する研究
ニホンザルの母子行動
実験育児学
産科的立場から見た母子相互作用
分娩直後の母親の行動と母子相互作用
母子同室制に関する研究
母子相互作用に関するProspective Studies
母子相互作用に伴う母親の母性・女性性獲得の過程に関する研究
妊娠時の母児相互作用に関する研究
乳児の気質と発達都新生児のstateに関する研究
母子相互作用の発達・臨床心理学的研究
小児の行動異常と乳児栄養方法との関連に関する研究
保育における相互作用の意義
子どもの心的発達に関する母親の期待
母子相互作用の臨床的・実験的研究
母子相互作用の発達心理学的研究
母親の育児観・発達初期における母子相互交渉・児の気質的特徴が愛着形成・行動発達に及ぼす影響
母子相互作用と育児に関する社会学的並疫学的検討
母子相互作用の社会小児科学的検討
都市乳児の健康・安全行動の形成における母子相互作用に関する研究
てんかん患児の行動と親子関係
久山町、福岡市周辺におけるこどもの心身の発達と母子相互作用
妊娠中の母子関係
妊娠中の母性意識
離島における母子相互作用の研究
小児心身症の背景としての親(父)子関係
青年期の親準備性に関する研究
心身障害児の親子関係に関する研究
自閉症児の病態生理に関する研究
厚生省心身障害研究母子相互作用研究班
児の入院に対する母親の心理的反応の推移
愛情遮断性小人症の内分泌学的研究
低出生体重児の新生児期発達における感覚刺激
犬にみられる母子相互作用の考察
未熟児センター内保育に家族が早期に関与することの親子・家族関係に及ぼす影響
新生児Special Care Unit(NICUを含む)における母・子相互作用の臨床的心理・行動科学的研究
未熟児とくに極小未熟児にみられる母子相互作用
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「母子同室」でなければ、赤ちゃんは医療従事者の管理下におかれる。当然のように手間がかからないように昼間睡眠を強制することになる。昼間睡眠の強制は、脳障害を起こして自閉症などの原因になるという研究結果も存在する。そのいくつかを下記に取り上げる。

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自閉症の病態生理に関する研究
瀬川昌也(瀬川小児神経科クリニック)ほか8名
http://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/1982/s5706048.pdf
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自閉症には乳児期より睡眠覚醒リズムの障害があることとそれに伴う脳の障害部位を特定したことが挙げられている。
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自閉症の病態生理に関する研究
瀬川昌也(瀬川小児神経科クリニック)単独
http://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/1982/s5706095.pdf
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育児に手間がかからない昼間睡眠を強制することによって生ずる障害が指摘されている。
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(8)まとめ
「母子同室」にすることによって、次のような改善が期待される。
・ニートや社会的引きこもり((仮性の)回避性人格障害)が減少し、社会的コストが低減して、正常な社会に近くなる。
・自閉症やアスペルガー症候群の発生が低減する。
・母親の子供への自然な愛着が促進され、虐待、子殺しなどが低減し、愛情深く育てられる子供たちの精神の健全発達が期待される。

冒頭で紹介した作者不詳、"母子同室制と異室制"、新オッパイ ア・ラ・カルトさんは、
「出生直後より、人類を除く全ての哺乳動物は例外なく同床・同禽です。例えば生まれると直ちに母と子を別々の場所に引き離し、一定の時間(その臨界期はそれぞれの種族によって異なりますが)離れ離れにした後、再び親子を一緒にしても、最早母親は我が子とは認めず、決して養育しようとしないだけでなく、時には食い殺してしまいます。」と述べている。
いま、日本では、生まれおちると子供はすぐに母親と切り離されるという惨劇にさらされている。言葉に残る記憶はなくとも、人を信じない、交流出来ない、という心の傷として、その痛々しい記憶は残る。子どもの健全な発達のために、皆さまのたくさんの知恵と汗と、心をください。30年後、健全な若者が国中なあふれて活気ある日本になるようにと願ってやまない。
私のように60歳を超えた老ビジネスマンにして老教師には、もう見て確かめる時間は残されていないかもしれないが、孫と曾孫の世代には、われわれの社会が立ち直っていてほしいと切望する。

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琵琶


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胎児は母の言葉を聴いている、母語を大切に-日本の成育環境(1)--心理、教育、社会性の発達(73)

2008/12/15
胎児は母の言葉を聴いている、母語を大切に-日本の成育環境(1)--心理、教育、社会性の発達(73)

ミニシリーズ: 日本の成育環境(全6回)
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1.胎児は母の言葉を聴いている、母語を大切に-日本の成育環境(1)
 --心理、教育、社会性の発達(73)
2.なぜ母子同室優先か、心の芽をつぶすな-日本の成育環境(2)
 --心理、教育、社会性の発達(74)
3.見て覚える脳、共感する脳-日本の成育環境(3)
 --心理、教育、社会性の発達(75)
4.良識は勝ったか?-日本の成育環境(4)
 --心理、教育、社会性の発達(76)
5.教室は「社会シミュレータ」-日本の成育環境(5)
 --心理、教育、社会性の発達(77)
6.成功する単位組織-日本の成育環境(6)
 --心理、教育、社会性の発達(78)
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大学生の教育の現場で悪戦苦闘している中で、子供たちの成育環境に問題を感ずることが多くなっている。
しばらく、子供たちが胎児から高校生まで成長する過程での問題を取り上げたい。私は産婦人科医でもなければ学校心理士でもない。ただの大学講師である。思いすごしもあるだろうし、的外れもあるに違いない。万一私の取り上げた問題がそれなりに正しくとも、専門家の皆様のフォローアップがなければ、空振りになる以外にない。ご専門の皆様の大きな大きなお力添えをいただきたく、感ずるがままに、私の思いをここにつづりたいと思います。

(1)国語教育の重要性
すでに、国語教育の問題点については、このシリーズでも指摘した
・日本語の文法が未確立であること
・教育の現場では、文部科学省認定国語文法として、橋本文法(小中高の教育)と三上文法(外国人のための日本語教育)が併存して、一見ダブルスタンダードになっていること。
・中でも、明らかに誤った文法論である橋本文法がいまだに小中高で採用されていること。
誤った橋本文法で日本語を押しつけられれば、子供たちが日本語で正しく思考する邪魔にこそなれ、理論的思考を促進するはずはない。

(2)混乱した日本語
いっそ混乱した日本語ならば、英語で出費一貫した教育をしたらよいという乱暴な意見も聞こえてくる。「日本語は論理的でないのだから、日本語はやめろ」というのである。多くは、フルブライト留学経験のあるお高いインテリの皆さんからこぼれるご意見のように感ずるのは単なる勘違いだろうか。思えば小泉首相の時代に英語を公用語または準公用語にしようとはしゃいだ人々がいたのは記憶に新しい。
論理的でない言語はない、というのが冷静なものの見方であろう。どんな民族にも「論理的でない人」はいるが、「論理的でない言語」はないに違いない。逆にどの民族にもいる「論理性の高い人」の言葉は論理的なはずである。「日本語が論理的でない」という人はそもそも「論理的に考えられない人」なのではあるまいか。
一方、国語教育を低くみなしてきたツケも大きい。「日本語に主語は二つあってはいけない」などというお間抜け文法=橋本文法を真顔で子供たちに教えなければならない国語教師の心の苦痛は大きい(<--日本語に「主語」なんてあるのでしょうか。モントリオール大学東アジア研究所日本語科科長金谷武洋)。橋本文法で教員を育成している大学の教育学部も罪深い。おかしいと思いつつも国語教師は間違いだらけの橋本文法を子供たちに教えるのである。お間抜け文法をまともに勉強したヨイ子たちは、日本語でものを考えるとき、頭がぐちゃぐちゃになるのである。
どうせGHQに日本語は破壊されたのだから、日本語はあきらめようというのが、英語を公用語にしようとはしゃいだ皆さんのお考えに違いない。
しかし、私は、破壊された日本語だからこそ、再生が必要だと考えるのである。各民族の母語はそれぞれに尊重されなければならない。各自の人格の基礎だからである。民族は違えても、それぞれの民族にはそれぞれの母語がある。歴史は、征服者というものは征服地の母語を破壊することで服従を完成させようとすることを教えてくれる。母語を破壊することはその民族に属する人々の人格を破壊することである。
日本と同じように米軍によって征服された韓国でも同じ問題が起こっているようである。英語を公用語にしようという動きがあり、国民の声は真っ二つに割れているのだそうである。
KBSworld、「英語を公用語に」賛否ほぼ同じ」、2005-10-05 17:28:54 Updated.

(3)「母語」と「国語」と「母国語」
ここで、議論を整理するために「母語」と「国語」と「母国語」の区別を述べておきたい。
意味が違うのである。
「母語」・・・母の言葉(その子の母親が日常的に使用していた言葉)
「国語」・・・所属している国家が決めた公用語(国によっては、複数存在する)
「母国語」・・・生誕地の国家が公用語としている言葉
母親は主として子供に母語を教えるが、国家は「国語」しか教えない。その国家には生身の母親がいないので「母語」はない。
たとえば、両親がフランス人で、二人が韓国の国籍を取って韓国に住み、子供を産んだ場合、その子の「母語」はフランス語である。なぜなら、母親はその子に対してフランス語で話しかけるだろうから。しかし、その親(フランス人)が韓国籍を持っているならば、その子にとっての「母国語」は韓国語である。
もちろん、韓国に住む韓国人の両親のもとに生まれた子供は「母語」も「母国語」も韓国語である。
その事情は、韓国ではなくて、日本であっても同じである。日本にやってきたドイツ人の夫婦が日本の国籍をとって子供を産んだら、その子の「母語」はドイツ語だが、「母国語」は日本語である。

(4)胎児は母の言葉を聴いている
「胎児は母の言葉を聴いている」というのは、文学的表現としては昔から聞かれる。しかし、2003年、ついにその証拠が捕まえられた。
In collaboration with J.Mehler's group, International School for Advanced Studies in Italy, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. (2003)
次図は、小泉英明、牧敦、山本剛、山本由香里、川口英夫、「脳と心を観る」、電子情報通信学会誌 Vol.87 No.3 pp.207-214 2004年3月より引用した。なお、この総説の中で使用されている「母国語」という言葉は、「母語」の誤りである。

図 母語(原文は「母国語」)を聞いた際の新生児脳活動の観察(MRIによる形態イメージングに近赤外光トポグラフィーの画像を重ねて表示) (図をクリックすると拡大表示されます)
20081217

この被験者は生後5日目のイタリア人の赤ちゃんである。当然、普通の意味で言葉がわかったり会話ができたりするはずはない。しかし、普通の会話を聞かせると写真左のように言語野に近い聴覚野は興奮状態になることが示されている。録音を逆回しに聞かせたのが真ん中の写真で、普通の会話とは異なることがわかる。比較のために無音状態のときの写真が右にある。
この結果は、正常な会話のイントネーションや音の順序などを他の雑音名と都は区別しているということになるのである。なぜ? 赤ん坊はおなかの中にいる間に、母親の言葉を既に聞いていて、そのイントネーションや音の順序などを記憶していたと考えられるのである。胎児は約40週胎内に滞在するが、聴覚野は、30週目で完成していると考えられるので、残り10周程度は母親の言葉を聞いて出産に備えていると考えられるのである。生まれおちた赤子が母親の声に特異的に反応するのはよく知られているが、赤ん坊は胎内にいるときから、その準備をしていたということになるのである。
母親がヤンキー言葉だったり、生まれる直前夫婦喧嘩ばかりしていたら、子供はどんな言葉を記憶するだろうか。穏やかにして正しい母語(日本人ならばただしい日本語)をお腹の子供にはたっぷりと聞かせてあげたいものである。

(5)母語は胎内から
母語のイントネーションや音の順序などは、胎児のころからその赤子の聴覚野で受け止められ、記憶にとどめられるのである。母語こそがその子にとっては、生きるためにすがるべき頼りであり、記憶と知性の基盤となるものである。母語捨てがたし、なのである。
ヒトは、人生の岐路に立ったとき、生命の危機に瀕したとき、英語の達人といえども、母語で「私はどうすべきか」と悩み、「おかあさ~ん」と叫ぶのではないだろうか。
百歩譲って英語を公用語にしてもいいが、われわれの「母語」は変えられない。母語を活用した知性の成育支援こそが必要だと思う。
母語を声を出して言おう。肉声の母語をもっと聴こう。それぞれの民族の母語を大切にしよう。母語でものを考えよう。
たまたま、私は古い家系の日本人の両親を持って生まれた。私が意図して選んだわけではないが、不思議なことに私の母語は日本語となった。だから、日本語が好き、日本語を大切にしたい。もし、仮に、私が他の星の下に生まれていたならば、日本以外のその星の下のの母語が好きになり、大切にしたいと思うに違いない。
国家に「母語」はないので、国家は「国語」を大切にする。「国語」は国家が育てるものである。一方の「母語」は本人と家族が大切に守るもの、国家といえども胎児のころがら生まれ持ってきた個々人の「母語」は変えられない。
教育の現場では、公用語教育にも格別の注力が必要であるが、それぞれの子供がもつ「母語」を互いに尊重し合う教育も必要ということになる。

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琵琶


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米、露、中、…少なくとも主犯は"国"ではない--情報社会学、予見と戦略(25)

2008/12/15
米、露、中、…少なくとも主犯は"国"ではない--情報社会学、予見と戦略(25)

先週末、アメリカ自動車産業ビッグスリーへの議会での救済策の設立は頓挫したというショッキングなニュースが流れた。円は急伸して88円台/ドルになった。直後にアメリカ政府は、この救済策に代わって、議会の承認を必要としない金融救済法の枠組みでの救済に手をつけることになったので、今はそのショックは緩和されている。
サブプライムローンに始まり、リーマンの破綻で決定的になり、現在の激しい不況が進行していることの原因について、あれこれと評論する人は多い。

その中に、ロシアと中国の謀略であるとする人たちもいる。ヒトは苦境に陥ると仮想敵をこしらえて、攻撃するとどこか溜飲が下がるものらしい。
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石油・穀物の高騰も、ドル・ユーロ暴落もすべて完璧に説明できる
世界を覆う金融大恐慌を「謀略史観」はこう読み解く=ベンジャミン・フルフォード
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20081211-01/1.htm
2008年12月11日(木)0時0分配信 SAPIO
掲載: SAPIO 2008年11月26日号
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今回の金融危機は過去に経験した危機とは違い、金融システムそのものが崩壊したものである。おそらく第2次世界大戦より人類にとってインパクトの大きいものになるだろうが、対策を講じれば講じるほど株価が暴落してしまうという、これまでのセオリーがまったく通用しないこの未曾有の混乱は、経済学ではとうてい説明がつかない。
しかし、これまでの流れを〝謀略史観〟で見ると、すべて説明がつく、とジャーナリストのベンジャミン・フルフォード氏は主張する。サブプライムローン問題に始まり、これから起きるパラダイムシフト。背景には知られざる巨大権力同士の世界支配を巡る激しい争いがあるのだという。
世界に大きな変化が訪れようとしている歴史の転換点ほど、このような見立てが魅力を放ってくる。果たして、これは〝謀略史観〟と一笑に付されるべきものなのか。読者の判断に委ねたい。
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当初、サブプライム問題で直接焦げ付いたローンは4800憶ドルだと言われていた。これは14兆ドルという米国のGDPからすれば、本来ならどうにでもなった金額だ。しかしふたを開けてみるとそれは氷山の一角でしかなかった。今年10月の最初の2週間だけでも、アメリカの銀行が毎日4300億ドル以上を米連銀から借りている。わずか2週間で約5兆ドルものお金を銀行に注ぎ込んでも、問題は解決されないのだ。
金融の世界で動いている資金の総額は天文学的だ。世界の中央銀行の中央銀行と言われるBIS(国際決済銀行)によると、世界の金融派生商品の残高は07年12月現在で596兆ドルで、これは世界のGDP54兆ドルの10倍を超える。しかもBISは全部を把握していないと認めている。
このまま米連銀がドル紙幣を印刷して銀行に注ぎ込んでもハイパーインフレを起こすだけだ。別の言い方をすればアメリカが国家破産をし、米国一極集中とドル本位制が終わったと見てもいいだろう。アメリカを中心とした欧米の世界支配は確実に終わりつつある。この歴史的な転換を理解するためには、今回の金融危機の本質を知らなくてはならない。それはまさに世界の支配者であった欧米と、新興勢力である中国、ロシアとの主導権争いに他ならない。
(以上は第一話。省略 第2話~第7話、引用元は、下記1)~7))
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1)http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20081211-01/1.htm
2)http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20081211-01/2.htm
3)http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20081211-01/3.htm
4)http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20081211-01/4.htm
5)http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20081211-01/5.htm
6)http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20081211-01/6.htm
7)http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20081211-01/7.htm

この記事を書いている、ベンジャミン・フルフォードも半ば冗談のつもりなのだろう。今更ロシアや中国の謀略と言いたてても、信ずる人は少ないだろう。ロシアや中国もこの不況の波はかぶっているのである。自作自演にしては代償が大きすぎる。
確かに、ロシアや中国は、アメリカの一極支配の後を狙う有力候補であり、石油や小麦についてのこざかしい価格操作に抵抗した国家でもある。しかし、よく考えてほしいのは、アメリカという"国"も石油や小麦の価格操作に抵抗した国家の一つなのである。石油や小麦についてのこざかしい価格操作をした者は、アメリカという"国"ではない。アメリカを拠点とする流通マフィアたちである。サブプライムローンを仕組んだのも住宅の流通マフィアである。アメリカという国家がこれらのマフィアを甘やかして、まんまとシテやられた責任は免れないが、アメリカという国家が進んでやっていたわけではない。
今回の世界経済崩壊という事態を招いて、これらの流通マフィアは無傷だったかと言えばそうではない。まっさきに倒産して彼らは路頭に迷っているのである。彼らは市場に乱入して大金をせしめたが、たちまちFBIに射殺されたマフィアの三下のようなものである。せしめた大金は誰の懐に入ったのか。最後に高笑いしているのは誰かを見ておく必要がある。

私のように、世界の富の40%握る1%の超富豪が世界の国々を手玉に富の集中を推し進めてきていること、彼らに資本で牛耳られている世界の流通が今回の破綻の主役であることを指摘する人はないようである。超富豪は株や不動産の売買にチョロチョロ出てくる博打打ちのような小モノではない。また、中途半端な善人を演じざるを得ない銀行や投資機関のような欲に駆られてだまされてしまう人々ではない。全世界の1%にすぎないのに、40%の富をもつものは、細心の注意を払って、博打打ち=株屋や両替屋をも手玉にとって、利益を吸い上げ、損は押し付けるのである。たとえが悪くて恐縮だが、言ってみれば強盗を喝揚げする大強盗、訳知り顔の両替屋さえだます大詐欺師の存在である。

スタグフレーションを乗り越える産業改革を--情報社会学、予見と戦略(21)
日本政府(日銀)も世界(ECB)もやっと認めたスタグフレーション--情報社会学、予見と戦略(23)
スタグフレーション不況でも強いもの、技術革新--情報社会学、予見と戦略(24)

今回の不況は、大強盗にそそのかされた強盗、大詐欺師に騙された両替屋が、上納金の縛りがきつくてやりすぎて破たんしてのである。そそのかされた強盗とは、石油や小麦、住宅、その他の流通マフィアであり、騙された両替屋とは、言ってみれば、銀行や投資機関たちである。そそのかされた強盗も騙された両替屋も、それ自体では上位1%に入るような超富豪ではない。超富豪たちから株を買い占められて、命じられて汗を掻いて上納金をかき集めることに汲々としているだけの存在である。彼らに資本を投下しているものの実体は、決して「法人」ではなく、血族関係で結ばれたファミリーなのである。彼らは国家に属さず、国法に縛られず、国家利益からは相対的に自由にどこにでも居住場所を移動する。かれらにそそのかされたり脅されたり年俸などのえさでつられて汗しているのが、各国の金融機関だったり、流通企業だったのである。彼らの動きに一喜一憂しているのは博打場の客、株屋の皆さんである。株屋にお金を貸している銀行や投資機関は株屋が得しても損してもどちらでももうかる仕組みになっている。株屋が破産してしまわない限り安泰である。まさか株屋がこぞって破産するまでやるとは思わなかったというのが本音だろう。その背後でその金融業の利益を火の粉を浴びることなく吸い上げている超富豪たちがいるのである。
不況の原因はこれら株屋(ジャンクボンド)だという人がいる。それは、見せかけに目がくらんでいる近視眼的な方である。この間観察していればわかるように彼らも大金を失いかなり傷ついている。ではそれらにお金を貸している金融が主犯だろうか。彼らも、格付け機関に騙されて、高リスクの資金提供をさせられて被害を被ったのである。流通、金融から損せずに利益を確保しているのは、超富豪の皆さんだけである。彼らは、切ったはったのヤッチャ場にその姿を現すことはない。現すのは不利益であり、姿を隠しているのは彼らの利益である。
株屋(ジャンクボンド)がやりすぎて自滅しようが、流通企業がやりすぎて破たんしようが、金融が破綻しようが、超富豪には何の影響もない。失敗した三下は生かしておくだけの価値はない。倒産で失う金額よりも継続するための負担のほうが大きければさっさと倒産させることを選ぶ。倒産で失う金額のほうが継続するための負担よりも大きければ国に支援させる。それだけのことである。わずか1%にすぎない彼らが、国家財政の過半の税金を納めているのである。国がその意向を無視すれば何が起こるか、政権は熟知しているのである。政権は、決して超富豪に逆らうことはないのであ。

手先たちはすでに大きな打撃を受けているが、胴元である超富豪たちはもともとの戦略を捨てたわけではないので、スタグフレーション政策は、今も堅持しているのである。
当面、世界は国の枠を超えてわが道をゆく超富豪のいいなりになりつつ、スタグフレーションも諾々として受け入れ、庶民は高い買い物をし、生産者は安く買いたたかれてゆくのである。
国家は超富豪たちに戦いを挑むのか、と言えば、その実力の差はあまりにも大きい。世界で最大の武力を要するアメリカですら、本気では戦えぬ相手である。国民国家は、庶民の不平不満の強弱とはまったく無縁に、その力の限界を見せているのである。
その枠組みを突破するのは、消費者と生産者の直接取引が支配的になる経済構造の成立だろう。その前に、農業と漁業の生産革命がやってくる。ようやく、いくつかのマスコミがこのことに気づいて、少しずつ報道するようになってきているように感じている。近々、マスコミが取り上げ始めている一次産業の生産革命についてもここで取り上げるつもりである。

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琵琶

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早稲田大学教育学部教育学研究科での講義(特任講師)--感性的研究生活(40)

2008/12/11
早稲田大学教育学部教育学研究科での講義(特任講師)--感性的研究生活(40)

大学での講義に属するので「感性的研究生活」シリーズにふさわしくないかも知れないが、実際は講演になってしまったような気がするし、実際その内容も研究活動に関係するので、このシリーズ(感性的研究生活シリーズ)にその記録をとどめる。12月9日(火)18時から、早稲田大学教育学部教育研究科の学生さんたちにお話をする機会をいただいたのでのである。出席した学生さんたちは、社会人学生であった。
このお話を薦めてくださったのは、言語学研究の原田康也早稲田大学教授である。原田先生とは、少し前の「情報コミュニケーション学会第4回研究会」で再会し、意気投合したのである。
学生の皆さんは事前に、私のブログのシリーズ「心理、教育、社会性の発達シリーズ」の記事を読んで下さっていた。記事の数は直前までに71件あった(現時点では72件)ので全部読むというのは大変な労力である。それらを読んだ感想とそれぞれが関心を持っている話題を事前に書いて送ってくれたのだが、さすがに社会人だけにその関心の広さと深さには驚くものがあった。さらには、私の記事を読んでいまどきの学生には珍しく講師に噛み付いてやろうという意欲あふれる学生もいるらしかった。社会人学生の特長であろうと思われた。
ままよ、あたって砕けるだけと思ったが、どのテーマで話をするかと私は悩んだ。教育分野の大学院生といえば、私の手持ちのテーマで言えば、「心理、教育、社会性の発達」シリーズの内容だろうが、このシリーズは皆さんが事前にすべて読んでいる。同じお話を聞いてもつまらないだろう。
そこで私は考えた。実は、私には、以前から、取り組もうと思いつつ、面倒だなとの思いもあって放置していたテーマがあった。「スクワイア・飯箸の記憶分類」を根底から改定しなければならないに違いないということである。お話をいただいてから約3週間の余裕があったので、これら取り組むことにした。やりかけてみるとずいぶんと難航した。足りない知識を補うためにはたくさんの本も読まなければならなかったし、最新の論文もあさらねばならなかった。CiNiiなどの論文検索システムがこれほど便利と思った期間はなかった。取り掛かる前にはこれほど難航するとは思わなかったが、以前から考えていた私の仮説は何度も崩れて立て直さねばならぬことになった。脳科学の成果は、論文で見る限り、どれも局所的なお話で、脳全体の働きを明らかにするようなものではないとしか思えなかった。私の日ごろの勉強不足が原因に違いないとはわかりつつも、もっと全体像をわかりやすく描く人いないのかと内心不平を鳴らしていたりした。何とか、講義の前の週の後半に全体モデルを作り上げて、講義資料を作る段階になると、たくさんの解説図が必要であることがわかった。自分で脳のイラスト図を描く自信はない。市販の図解本を探して、社員さんに頼んでスキャナから取り込んでもらった。図が私の手元に届いたのは金曜日の夜である。その図を並べてみると、私の説明にまだ矛盾があることもわかって、冷や汗が出る思いだった。新しい仮説->図版->説明->仮説の変更->記憶の分類表の修正->図版->説明->->という堂々巡りが土曜日から日曜日の夜まで続く。家内と息子は週末の買い物にも出かけない私を見てあきれている。何が起こったの? ・・・、いやちょっと、まだだめなんだ。何が? 来週の講義録ができないんでね。 というやり取りが続く。こんなに難儀をするなら、こんなことに手をつけずに、従来のモデルでお話すればよかったかな、とくじけそうになる。それに、土曜日ころからなんだか熱っぽい。風邪? まさしく風邪だった。あぁ、どうしよう。しかし、日曜日の夜半、やっと、基本モデルの骨格が出来上がった。午前6時には、説明資料の下書きは完成した。昼間は別の仕事をこなして、夜に仕上げをしよう、、、。そんなこんなで、講義録が完成したのはなんと当日の朝だった。
この日は、午前中が某大学の「情報基礎」の講義、午後はゼミをひとつ担当、終わってから、早稲田に向かう。途中家内と合流した。原田先生のご許可を得て、家内もこの日だけは学生の一人に加えていただいたのである。
学生は社会人なので、実にさまざまである。ミードの専門家も、引きこもり支援をしているコーチングの学徒も、韓国からやってきた研究者もいる。保育士さんもいる。宮城県で浅野知事のブレインだったという人もいたはずである。
事前にいただいた関心事にすべて答えるのは無理としても基本的なことには答えようとして、講義は進めた。「母語」と「母国語」の問題も、発達障害の問題(AS=アスペルガー症候群、ADHD=注意欠陥多動性障害、LD=学習障害)も、何とかクリアした。保育士さんとは、質疑で少し食い違いも感じられたが、いずれじっくりお話して見たいと思った。
原田教授からこのような機会をいただけたことに深く感謝しつつ、そのおかげで、記憶の分類についての問題突破の糸口が得られるという大きな収穫があった喜びを今はかみ締めている。

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日本の子供の孤独感は世界一、子供の幸福感一位のオランダはシティズンシップ教育--心理、教育、社会性の発達(72)

2008/12/03
日本の子供の孤独感は世界一、子供の幸福感一位のオランダはシティズンシップ教育--心理、教育、社会性の発達(72)

2007年度ユニセフが実施した調査の結果がマスコミに取り上げられている。オランダ在住の教育研究家であるリヒテルズ直子さんが来日してこのデータをもとに講演したためである。日本の子供の孤独感は世界一、逆に子供の幸福感第一位のオランダは個別教育とともにシティズンシップ教育に力を入れているのだそうである。
現在の教育の問題点は、子供たちの社会性を育てないことにあると言い始めたのは、このブログが最初だろう。今は、心理学者も教育研究家も、子供たちの社会性を育てることに力を入れなければならないと言うひとが多くなった。たいへんありがたいことである。
一方、外圧に弱い日本人インテリは、海外からも言われないと本気になれないようである。
今回のヒテルズ直子さんの講演は、よい励みであるとともに、社会性の育成=独創力の開発を大きく後押ししてくれるものと期待を込めて受け止めさせていただいた。

毎日jp
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新教育の森
幸福度調査1位、オランダの提言 「自分は孤独」2.9%
 ◇日本は最多29.8%
http://mainichi.jp/life/edu/mori/archive/news/2008/20081117ddm004100018000c.html
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07年発表の国際調査で「孤独」だと感じている子どもの割合が最も高かったのは日本だった。最低だったのはオランダ。今月、オランダから教育研究家が来日し、教育のあり方を提言した。【三木陽介】
◆自己肯定感にも差
 「なぜ、モノが豊かな日本で、こんなに多くの子が孤独を感じているのでしょうか」。今月11日に青山学院大(東京都渋谷区)で開かれた「日蘭共同教育改革シンポジウム」(オランダ大使館主催)で、オランダ在住の教育研究家、リヒテルズ直子さんは、日本の教育関係者ら約300人の参加者に問いかけた。
壇上のスクリーンに映し出されたデータに参加者はくぎ付けになった。07年に国連児童基金(ユニセフ)が発表した、経済協力開発機構(OECD)加盟国を対象に実施した子どもの「幸福度」に関する調査結果だ。
「自分は孤独だと感じるか」という質問(対象は15歳)に「はい」と答えた割合は、日本が29・8%で、回答のあった24カ国中トップ。ほぼ3人に1人が感じていることになる。次いで多かったアイスランドでも10・3%。一方、オランダは2・9%で最低だった。
実はこの調査では、「自己肯定感」にも顕著な差が出ている。「自分は不器用だと思う」と答えた割合も日本が18・1%で最も高かったのに対し、オランダは6・9%。40項目の結果から、オランダは「幸福度」で総合1位を獲得した。
◆一人一人に耳傾けて
なぜこんな差が出るのか。「一因として学校教育の違いがあると思う」。オランダ人の夫との間に2人の子を持つリヒテルズさんは96年からオランダで暮らし、子どもたちの学校生活を通して日本・オランダ両国の教育現場を見つめてきた。
まず、オランダで重視しているのは自立学習と共同学習を柱にした「個別教育」。小学校の教室では、5人程度のグループに分かれ、それぞれが違う課題をこなしている光景がよくみられるという。統一の教科書はなく、習熟度に応じて先生が適切な教材を与える。「各自のサイズに合わせた教育と言い換えることができるかもしれない」とリヒテルズさんは言う。
かつてはオランダでも、日本のように1人の先生が同じ内容を全員に講義する形の授業が主流だったが、不登校や学力格差などが問題化した60~70年代にかけて方針転換した。その後、今年6月16日朝刊「新教育の森」で紹介した「イエナプラン教育」をはじめ多様な教育方法に基づく学校が次々に誕生し、受け入れられている。
日本ではここ数年、国際的な学習到達度調査(PISA)の結果に端を発した教育改革が盛んに論じられている。リヒテルズさんは講演で「学力に偏重した改革ではなく、人間としての総合的な発達を目指してほしい」と注文をつけ、「オランダの教育が最善だとは思わないが、幸福度調査の結果は少なくとも一人一人の子どもに耳を傾ける大切さを示していると思う」と締めくくった。
◇個別教育重視の一方で「シティズンシップ教育」義務化--異なる意見も尊重できるように
個人主義が行き過ぎると、自己中心主義に陥り、社会性を失わせる恐れもある。そこでオランダでは「シティズンシップ(市民性)教育」にも力を入れ、05年からは日本の小中高に相当する初等・中等教育で義務づけられている。シティズンシップ教育に詳しいオランダ・ユトレヒト大のミシャ・デ・ウィンター教授(社会教育学)はシンポジウムの中で、いくつかの事例を紹介した。
◆社会参加の下地作り
ある学校では、4歳のクラスから週1~2回、ディスカッションの時間を設け、8歳で死刑制度の是非について話し合う。別の学校では、低学年の子ども同士がけんかをしていると、上級生が仲裁者として間に入り、一緒に話し合いながら解決方法を探るといったことが教育活動の一環として行われている。
自分と異なる意見を尊重する態度を身につけさせるのが狙いで、「既成の価値観に対する同化を求める道徳教育に比べ、価値観の多様化した現代社会を意識している」(リヒテルズさん)のが特長だ。デ・ウィンター教授は「未来の社会づくりは、子どもが積極的に社会参加できる市民になれるかどうかにかかっている」と意義を強調した。
◇授業に「市民科」、日本でも
シティズンシップ教育は日本でも最近、一部の自治体や私立校で取り入れられつつある。
東京都品川区は06年度から独自に「市民科」という科目を設けた。小中一貫教育の特区を利用し、小学1年から中学3年までの9年間を通し、系統的に学べるよう独自にカリキュラムを組み、教科書も作った。
リヒテルズさんやデ・ウィンター教授は13日、品川区立小中一貫校「日野学園」を訪れ、小4の市民科の授業を見学した。
この日の課題は「心のわかれ道」。日常の場面で自分がどういう行動を取ったか、その理由を振り返った上で、正しい判断基準を学ぶという内容だ。例えば、電車の中で座っていた時に高齢者が乗ってきた場合。児童からは「『どうぞ』と言って譲る」という「模範解答」から「優先席じゃないから譲らない」「譲りたいけど恥ずかしくて譲れない」「シカト(無視)する」まで、いろんな意見が出た。
教師は最後に、判断する時のポイントとして、(1)命や安全にかかわっているか(2)困っていないか(3)迷惑かどうか(4)相手の気持ち--の4点を黒板に書いて授業を終えた。
◆日蘭でもっと交流を
「いい授業だった」。リヒテルズさんもデ・ウィンター教授も口をそろえたが、授業後の意見交換会で、同区のある女性教員は指導上の悩みを打ち明けた。「子どもたちは頭の中では何が良くて悪いかある程度分かっている。でも、実際に行動に移せない。どうすれば実践できるまでに持っていけるかが難しい」。デ・ウィンター教授は「オランダでも同じ課題があるが、子どもたちには、実際にやってみることで学ぶことを教えなければ身につかない」とアドバイスした。
リヒテルズさんは「今回のように、教育に関してこれから両国間でもっともっと交流を深めていって共通の問題を見いだし、いい面を互いに補い合って解決していければと思う」と話している。
毎日新聞 2008年11月17日 東京朝刊
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日本では、大きく誤解されているらしいが、個性と社会性は対立する概念ではない。社会性は個性が育たなければ育たない。個性は社会性の発展とともに磨かれるのである。と私は繰り返し述べてきた。
上記の記事を書いた記者さんは、個性と社会性を対立するもののようにとらえて、オランダでは個性をのばす教育とシティズンシップ教育が並列して進められていると書いているが、両者は車の両輪であり、片方ずつ伸ばすことなどできないのである。この事実は、随分と昔に私はこのシリーズで述べている。
個性と社会性--心理、教育、社会性の発達(5) 2005.08.29
子供の幸福感一位のオランダでは、個性と社会性をともに伸ばす教育がおこなわれている。子ども孤独感一位の日本では、個性を殺して、社会性を蹴散らかす教育が大手を振ってまかり通っているのである。
個性を殺すために自分の能力に自信のない教師は斉一性への圧力を子供たちに向けてゆく。母親と病院が楽をするための分娩直後の母子分離、保育士が楽をするためのひとり遊び放置理論、学級崩壊を恐れて友達を作らせない教室運営、友達は敵と教える受験教育はまさに子供たちの社会性を蹴散らしているのである。子どもは孤独にさい悩まされ、個性が育たないので自己肯定感が育たないのである。社会性の持ち合わせない子供たちは、社会との不適合を起こして、悶々としてニートになるのである。
どんなに日本在住の私が言いつつづけても、なかなか認めようとしないことを、オランダのヒテルズ直子さんが言うとマスコミはしっかりと取り上げてくれるのである。面目はないが、ヒテルズ直子さんをはじめとして、オランダの教育研究者の皆さんがもっと来日して、もっと語っていただきたいものである。

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2008年度次世代大学教育研究大会「大学教育のイノベーション」への出席--感性的研究生活(39)

2008/12/01
2008年度次世代大学教育研究大会「大学教育のイノベーション」への出席--感性的研究生活(39)

少し前のことだが、2008年11月22日(土)13:00-18:00に2008年度次世代大学教育研究大会「大学教育のイノベーション」が開かれた。
今回は私の発表はない。年次大会なので、著名人らのお話を中心にすすめるという進行だった。アトラクションは学会幹事の阪井教授のゼミ生がパネル討議に参加したことだろう。

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2008年度次世代大学教育研究大会
University Education for the Next Generation 2008 (UEng2008)
テーマ「大学教育のイノベーション」
Theme “Innovation of University Education”
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2008年11月22日(土) 13:00-18:00
明治大学駿河台キャンパスリバティタワー11階1113教室
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html
Meiji University, Surugadai Campus, Liberty Tower, 11F Class Room No. 1113
http://www.meiji.ac.jp/cip/english/other/surugadai.html
主催:明治大学情報基盤本部
 http://www.meiji.ac.jp/isc/
共催:次世代大学教育研究会
 http://groups.yahoo.co.jp/group/next-edu/
後援:明治大学学長室
 情報コミュニケーション学会
 http://www.cis.gr.jp/
協賛:日本ポラロイド株式会社
 http://www.polaroid.co.jp/
--------------
13:00-13:15
開会の挨拶
Opening Remarks:
主催・村田潔(明治大学情報基盤本部長)
共催・阪井和男(明治大学、次世代大学教育研究会事務局長)
後援・間宮勇(明治大学学長室専門員長)
--------------
■第1部 招待講演・特別講演
 総合司会:阪井和男(明治大学法学部)
☆13:15-13:55 招待講演 Invited Lecture:
“The University Education System of Taiwan”
・姚 立徳(国立台北科技大学教務長)
Leehter Yao, Dean of Academic Affairs
National Taipei University of Technology, Taiwan
☆14:05-14:45 特別講演 Special Lecture:
「全てはブランディング」
"Everything is Branding"
・藤巻幸夫(株式会社フジマキ・ジャパン、明治大学特任教授)
☆14:55-15:10 休憩 Break

■第2部 パネルディスカッション「大学教育のイノベーション」
Panel Discussion "Innovation of University Education"
 総合司会:阪井和男(明治大学法学部)
☆15:10-15:40 基調講演「イノベーションの構造とイノベーション・ダイアグラム」
Keynote Lecture: “The Structure of Innovation and Innovation Diagram”
・山口栄一(同志社大学大学院教授)
☆15:45-16:05
・明治大学法学部阪井ゼミ学生
16:05-16:25
・武末文男(奈良県福祉部健康安全局地域医療連携課、元厚生労働省医薬食品局血液対策
課課長補佐)
16:25-16:45
・奥田寛司(経産省経済産業政策局人材参事官室)
☆16:45-17:00 休憩 Break
☆17:00-18:00 パネルディスカッション「大学教育のイノベーション」
Panel Discussion "Innovation of University Education"
パネラー:
Panelists:
・山口栄一(同志社大学大学院教授)
・奥田寛司(経産省経済産業政策局人材参事官室)
・武末文男(奈良県福祉部健康安全局地域医療連携課、元厚生労働省医薬食品局血液対策
課課長補佐)
・明治大学法学部阪井ゼミ学生
コーディネーター:
Coordinator:
・阪井和男(明治大学法学部)
☆18:00-18:15 まとめと閉会の挨拶
Summary and Closing Remarks:
・家本修(大阪経済大学)
☆18:30-20:00 懇親会 Banquet:
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私は14:30までリバティタワー近くの校舎で講義をしていたので、参加したのは15:00頃からである。
姚 立徳(国立台北科技大学教務長)先生のお話は聴くことができなかった。

私か会場に到着したころは、次の藤巻幸夫(株式会社フジマキ・ジャパン、明治大学特任教授)氏の講演がまだ続いていて、熱い熱い心の熱波が会場を揺るがすかのごときだった。藤巻幸夫氏と言えば、「福助」の再建に敏腕を発揮した人として知られており、今は無印良品のアドバイザ的役割を果たされているようである。
彼の言わんとするところは、すべての成功はブランディングにかかっているということ、ブランディングには単独のモノやサービスでは出来上がらないので、いろいろな組み合わせが必要なのだということであった。なるほど、その通りだ、ブランディングとは「文化」と呼ばれている地域・民族のある時間を支配する流行のようなものを人為的に作り出すものだから、と内心は思っていた。ならば、もっと法則的なものがあってもよいし、私ならばそれを語ることができるなどと不遜な考えも浮かんだが、私が聞きそびれた時間に氏はすでに話していたのかも知れない。私が思うブランディングについては、別の機会にどこかで書くことにしたい。藤巻氏ともこの件ではよく話し合ってみたいとの思いも強くした。
いずれにしても、私の心を掻き立てたように、氏の熱い語りは多くの人の心を掻き立てていた。「講演は本音でやる芝居だ」と私はときどき思うのだが、藤巻氏の講演などはそのよい例に違いない。

第二部のトップバッターは、山口栄一(同志社大学大学院教授)氏である。氏は、「イノベーション 破壊と共鳴」(NTT出版、2006.02)の著書で知られる方だが、本来は物理学者である。30分という制約では語り足らなかったかも知れない。今回お話の内容は、「イノベーション 破壊と共鳴」のエッセンスであった。氏は、クレイトン・クリステンセンの著書の批判から事を説き起こした。クレイトン・クリステンセンには多数の著書があるのだが、氏が取り上げたのは「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」(クレイトン・クリステンセン 著, 玉田 俊平太・伊豆原弓訳、翔泳社、増補改訂版、2001.07)である。氏の切り口は、クリステンセンのいうイノベーションは、せいぜいコストパフォーマンスのグレードダウンから始まる漸進的改良にすぎず、滅ぼされる巨大企業の漸進的改良と大差はない、とバッサリ切り捨てるところから始まる。氏のいうイノベーシーションは、論理的思考の回路をいったんくぐりぬけて新しいアイディアに行き着くというものであり、 論理的思考の回路をくぐりぬけずにただ改良を繰り返してゆくのかというのがクリステンセンだというのである。
なるほどオリジナルの方のお話はわかりやすい。山口栄一先生の本に影響されたという方は世の中に多数いらっしゃるだが、この方たちの発表を聞くとなんとなくわからない。私には、ただ従来のプロジェクトの進路はこうだったが新たな進路はこうだと、山口理論のパスを示すばかりのように感じられていた。なぜその進路が山口パスといえるのか、さっぱりわからないものだった。そもそも、クリステンセンのイノベーションとどこが異なるのかもよくわからなかった。山口先生のお話をじかに聞いてみると、クリステンセン批判のその1は、クリステンセンは品質を劣化させたケースだけをイノベーションと称しているが、品質を飛躍的に向上させたケースもイノベーションといえるのでないか、というものであった。品質を劣化ならばたいして論理的思考を要しないが、品質を飛躍的に向上させるケースはそうは行かない。品質を飛躍的に向上させるには論理的思考の回路を潜り抜ける必要があるのである、というのが山口先生のお考えであった。
しかし、思うに、クリステンセンのいう漸進的進歩でもクリステンセンの革新的技術進歩であっても、少なからず論理的思考は必要である。技術にまつわる新しい理論はそれほど必要としないまでも、少なくとも新たな市場を見出すためのマーケティング思考や販売網を構築するための図抜けた思考力が必要である。品質を飛躍的に向上させるケースでも、図抜けた思考力は必要だが、どこに重点があるのかという違いや、一つ一つの思考のどれがどれだけ必要かという程度の違いだけによるような気がしてならない。・・・、では、山口モデルは無駄なモデルなのだろうか。論理的思考の分野別の量の違いを質の違いと言い換えているだけなのではないのか。という疑問が浮かぶ。事実、そのような疑問を私に向かってぶつけてきた聴衆もいる(私は山口先生でもなければ、山口先生のプロパガンダーでもないのに)。
私は、山口先生が見出そうとしていたことは、山口先生の結論とは違って、別のところにあるとにらんだ。山口先生は論理的思考が前者にはないが後者にはあると結論つけているが、両者にはそれぞれ各様の論理的思考はあり、差があるとすれば力点のおき方と量の違いである。論理的思考の有無なのではない。決定的に異なるのは両者の論理的思考の質である。山口先生は、「両者の違い」には気づかれているのだが、どんな種類の違いであるかを言い当てていないのである。「両者の違い」に気づいてその問題を明るみに出した山口先生の功績は大きい。しかし、これを有無に還元したり量の違いで説明するのではなく、質の違いであることを説明しなければ本当ではないのではないかというのが私の考えである。私は、その違いを「知識の階層構造(飯箸モデル)」から説明することが可能であると感じているのである。お話が終わった後の休憩時間に、山口先生にその趣旨でできればお話をさせていただく機会をくださいと申し上げたが、あまりご関心はもたれなかったようである。高きに上り詰めた山口先生から見れば「しがない非常勤講師など取り合うヒマはない」ということでもあろうし、私のほうが出すぎたまねをしたと大いに反省して、山口先生の前では沈黙することにした。勝手ながら、この問題は、山口先生のお邪魔にならない機会にしっかり発表しておきたいと思う。

奥田寛司(経産省経済産業政策局人材参事官室)と武末文男(奈良県福祉部健康安全局地域医療連携課、元厚生労働省医薬食品局血液対策課課長補佐)のお話は、それぞれに興味深いお話であった。奥田寛司氏からは全国の補助金授業の事例が紹介されたが、私は特別なご予算なしに、少なくとも同程度のチャレンジはしているという自信を得ることになった。武末文男氏は厚生省の役人にして薬学博士、今は奈良県で働いているということだった。氏のお話は小中高大学の体験談だったが、「私小説」を読む楽しみを味わうことになった。氏は、落ちこぼれそうになるたびに這い上がってきたという体験の持ち主で、「好きなことしていればよい」「落ちこぼれる人は教育が助ける必要がない」というお考えのようだった。

明治大学法学部阪井ゼミ学生のお話は飛び切り面白かった。学生の視点で今の大学はなっていない、と喝破するもので、明治大学で講師を務める私も冷や汗をかきながら聴く羽目になった。しかし、よく聴いてみると、たとえば「学生の思いを分類するとこうなる」という発表資料も、その裏づけになるデータは内容だった。つまるところ、学生らの一人ないし2人が思いついたことを述べているとしか思えないところがあった。「学生の思いを分類する」のであれば、学生からアンケートをとるか、多数のインタビューを敢行してそれをまとめるなどの地道な努力が必要である。少なくとも「学生の思いを分類する」で述べられているのは法学部の学生には比較的当てはまるかもし知れないと思いつつ、情報コミュニケーション学部や文学部の学生には到底当てはまらないと思われるものだった。身近な経験をしっかり整理するのは、大いに結構だが、それを学生全体に押し広げてしまうのはやりすぎである。サンプリング計画をしっかりすること、得られた結果を曲解せずに解釈して見せることなどがなければ説得力を生まない。短期間(1か月)で発表資料をまとめたということなので、やむを得なかったとは思うので、次の発表機会にまでは、このあたりを改善ほしいと感じた。

パネルディスカッションになると、他のパネラーとともに学生代表は男女各1名が壇上に上がった。学生らの話が中軸となり話題が進行したが、女子学生がグループの皆が課題に取り組むように促すと、何でそんなことするの、というような反対のリアクションがあって、高校時代からけっこう苦労したという話を披露した。私は、この発言に共感しつつ、他の先生方の反応をうかがった。驚くことに教員側からは「やりたくない学生はほうっておけばいい」「どうして、他の学生までおせっかいするの」などの発言が続いた。教員の意識とはこうなのか、とおどろいてしまった。学習共同体を成立させ、社会的学習を実践し、社会性を育成しつつ、学習効果を高めることが教育の現場の焦眉の課題であると私は信じつつ日夜難渋しているので、それはないだろう、と思ってしまった。通常の研究会に出ていらっしゃる皆さんは参加型学習理論についてよく知っていて、その方向への努力がされている。しかし、今回の大会に来た方たちは参加型学習理論をご存じはないようだった。

懇親会では、名刺交換が盛んに行われた。私の名刺入れはいただいた名刺であふれんばかりの状態になってしまった。私は、授業に続いての研究会ということもあって、やや疲れ気味、盟友の矢ヶ部先生(跡見学園大学と東洋大学で講師をされている)と久しぶりの長話をした。
一ツ橋大学の高見澤先生、学研の栗山氏(明治大学兼任講師)などとも話が弾んだ。阪井先生や家本先生ともお話したいことがいろいろとあったが、忙しそうなので遠慮した。
たくさんの刺激をいただいて、次のアクションのタグがたくさん残ったような大会だった。
また、忙しくなりそうだが、体がついてゆけるかどうか、まぁ、ボチボチやれる範囲でやろう、と思いつつ、帰路についた。

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琵琶

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