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手柄を立てる人より、立てさせる人。社長レースに勝てる人--社長の条件(41)

2009/02/09
手柄を立てる人より、立てさせる人。社長レースに勝てる人--社長の条件(41)

会社というのは、多数の人々の力によって成り立っている。
会社には実にいろいろな人がいる。

1.後味の悪い出来事
ここで、記述する物語は、本当の出来事を基にしているが、固有名詞がわからないように少し改変している部分があることをお断りしておく。
某電機メーカのあるシステム部門に呼ばれてうかがった際のこと、この部門におうかがいするのはこのときがはじめてだった。
私を呼んだ担当者の方が、仕切り板の向こうから私に会釈すると「技術課長も呼びますから、少し待っていてください」という。オフィスに背を向ける位置に椅子がおいてあるので、後ろ向きに座る。
呼ばれたときの理由は、お仕事をいただけるというお話ではない。まずは、仕事場を見てほしいというご依頼だった。彼は、遺伝子研究の施設見学でたまたま遭遇した一般客の一人で、お互いにシステム屋であることがわかると親しげに話しかけてきたので、メール交換をしていたにすぎない。
このようなとき、待たされるのはいつものことで、驚くにはあたらないが、しばらくすると何やら大声で叱るような声が背中のほうから聞こえてきた。
「そんなの、お前が一人でやれよ。助っ人なんか呼ぶなよ。いい人を連れて来ただと? いい人を連れてきちゃダメなんだよ。お前が成功することにこの俺が承認すると思ってるのかよ。俺は一人で三人前働いてんだよ。俺の手柄をおまえはとろうっていうのかよ。だから、俺は部下なんかいらないって言ってんだよ。部長がお願いするっていうから預かっているだけだよ。だまって邪魔しないで座ってりゃいいんだよ。この給料ドロボウがぁ~」 私は内心「あわわ」と思って注目すると、先ほどの担当者が、たぶん課長席のそばに行って何やら説明している。後ろ向きで声が小さいせいが、彼の声は聞こえない。周囲には十数名の部下らしい人が座っている。その人たちは、黙って下を向いている。なまじ課長と目があったりしたら怖いと思っているに違いない。
「ダレガ、お前の手柄を助けるようなことをするかよ。俺の昇進を邪魔する気かよ」と課長らしき人のどなり声。「俺が言って、断ってやる。どうせへなちょこ野郎だろう」 あれあれ、私は客として呼ばれただけなのに「へなちょこ野郎」呼ばわりはないだろう。単なる下請け業者と思ったのに違いない。
しかし、技術課長がこんなにいきり立っていたのでは、何を言っても無理というものである。私は帰るタイミングを探していたが、肝心の彼が後ろを向いていて私を見てくれない。そのうち、課長がつかつかとわたくしのそばにやってきた。私は立ち上がって名刺を差し出して深々とお辞儀した。課長は「なんだよ、オメイは・・・」と言いかけて、私の名刺を見ると、急に席にとって返すと、自分の名刺を持ってきた。私の名刺を見て大学名が書かれているのに気づいて、あわてたようである。名刺をいただきながら、私は「お取り込み中のようなので、出直します」というと、私を呼んだ彼が飛んできて、「待ってください。この職場の様子を見てほしかったから、来てほしかったんです。帰らないでくださいっ」と彼は懇願するような眼で私を見る。課長が「オメイは黙っていろ」というと、私に向かって「彼の勘違いでお呼びしたので、帰ってください。二度と来ないでください」と言った。私は、彼に向って「後でメールをしてください」というと、課長が「メールなんかするんじゃないぞ、業務命令だ」といって、彼の腕を掴んで奥につれて行ってしまった。
彼からのメールは届かなかった。後日、私から彼にメールしてみたが、該当者なしのエラーメッセージが返ってきた。退職したのかもしれない。思えば、彼が私を呼んだのは、彼にとっては一世一代の賭けだったのかもしれない。彼を助ける手立てがなかったのか、私には忸怩たる思いがつのる。
3年後、この部署がなくなっていることも、当該技術課長が退職したことも、別の会社の方から聞いた。聞かせてくれた人によれば、あの課長の部下になる人はほとんどすぐに辞めてしまったこと、課長は社外の人たちからもひどく嫌われていたということである。技術課長は部長レースに敗れて、間もなく退職したのだという。
私を呼んだ彼はどこに行ったのだろうか。どうしているのだろうか。深い付き合いはなかったが、なんとも後味の悪い出来事だった。1999-2000年ころのことだった。

2.社長レースだったら
かの課長は、部長レースの最中にいたのだろう。自分の出世のために手柄を立てたかったに違いない。それに加えて、周囲には誰も手柄をたてさせないと頑張りつづけたに違いない。
別の例を取り上げよう、私の親しい友人が最初に勤めた企業の上司はまさしくこの手の人物だった。その友人はその上司の手柄になるように立ちまわりながら徹夜続きの仕事をするという状況だった。にもかかわらず、その上司は社長やその側近に対してはその友人の悪口を言い続けていたらしいのだから、究極のこまったちゃんであった。友人がその部署を離れた後、その上司の無能ぶりが露呈して配転され、そして退職というコースをたどったようである。今にしてみれば、その友人が見返りのないお世話係をしている最中に、無能な威張り屋さんの悪意を見抜けなかった経営陣はどうだったのかと思うばかりである。
周囲にいる人には決して手柄をたてさせない、という人物は、どこにもいる。足をひっぱる、はサラリーマンの常套手段である。これらの人たちは、普通に足を引っ張るだけでは飽き足りない。もっと意地悪く、知らせるべき情報を隠したり、休日出勤を命じておきながら機材に鍵をかけて仕事ができないようにして置いたりと、普通は考えられないようなことを平気で次々と考案してやり続けるのである。自分だけが手柄を立てて、その上から評価されたいと思うのだろう。
しかし、普通は、そんな人物がいればさらに上の上司が見抜くのである。何もいわなくとも出世はさせないに違いない。
会社というのは、多数の人々の力によって成り立っている。そして、会社には実にいろいろな人がいる。
その人たちの力がそれぞれに心行くまで発揮されなければ、楽しくないし、会社の力は発揮できない。
例の課長が平均能力の三人前働いても、部下の働きを半人前に抑え込んでいたら、そんな課長の課に比べると課長と部下の16人(課長補佐が2名の構成を想定)がそれぞれ倍の力を出したほうがはるかに力がでるのである。前者は合計で3+15/2=10.5人力、後者は46×2=32人力である。16名の課で32人力の力を発揮したら、上は目を剥いて賞賛するが、16名の課で10.5人力の仕事しかできないなら、課長失格である。
ダメ虎といわれた球団でも監督次第で優勝することはある。部下にやる気を起こさせるのが上司の仕事である。逆に自分が評価されないのは選手のせいだと言うような監督は即刻クビである。
上から見れば、15人もいて10.5人力の課の課長が許せるはずはない。32人力とは言わないまでもせめて20人力くらいの力は期待しているに違いない。ましてやその課長が1人力にも達しない無能な威張り屋さんだったら、早くから配転の対象とならなければならないはずである。
本人に能力があっても、他人の手柄を邪魔する人は部長にもふさわしくないが、社長にはもっと不適格である。
社長は本人の個人的能力が優れていなければ選ばれない。しかし、本人の能力が優れているだけでは決定的に不足している。社内で出会う人それぞれにその人の能力を高め、手柄を立てさせるような人物でなければ、社長にしても会社は成長しない。否、つぶれてしまうだろう。すべての人がそれぞれに手柄を立てるような企業は大きく伸びるが、一人を除くと残りのすべてが手柄が立てられないような会社は、たちまち市場の競争に破れて市場から退場を余儀なくされる。

社長の条件として、もうひとつ、はっきりと付け加えることにしよう。
「(本人の能力も高いことが前提だが)手柄を立てる人より、立てさせる人であること」である。
本当にすぐれた人は、自分が輝いているだけではなく、そばにいる人もその光を浴びて輝くのである。
周りの人を誰一人輝かすことができないという本人は、どんなに威張ってもがんばっても他人を照らせない安手の金メッキにしか見えないのである。
当社のスタッフたちは、今、互いに手柄を立てさせようと頑張っている。少しではあるが当人たちの輝きが見える。一人の輝きが他の人をわずかながら照らし出している。これは楽しみである。

△次の記事: 社長の条件(42)
(準備中)
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琵琶


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