2011/01/10
東京都が公立高校のストレステスト実施を発表--心理、教育、社会性の発達(84)
昨年末の仕事納めぎりぎりのタイミングで、東京都教育委員会の教育庁が、ネット上に次のような公告を掲載した。
都内公立学校の全教職員を対象としたストレス検査の実施について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr101227.htm
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東京都教育委員会は、全国に先駆けて、平成23年度から都内公立学校全教職員を対象にストレス検査を定期健康診断の項目に追加して実施しますので、お知らせします。
ストレス検査の実施は、本人にこころの病に対する自覚を促し、精神科への手遅れ受診を防ぐために行うもので、「早期自覚」「早期対処」を基本とするメンタルヘルス対策のひとつです。
今後、東京都教育委員会では、「東京都立学校職員健康管理規則」の改正等を行います。
1 ストレス検査の概要(別紙のとおり)
(1)ストレス問診票は、精神科医などの専門家を交えて東京都が独自に作成
(2)ストレス検査の結果は、本人に通知し、学校長等へは傾向分析を通知
2 対象者
東京都公立学校教職員 約6万人
3 実施時期
平成23年4月から定期健康診断で実施
4 備考
このストレス検査は、平成22年度に実施した試行結果を踏まえて本格実施するものです
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手順は、次のように示されている。
(画像をクリックすると拡大表示します)

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr101227/pr101227_1.pdf
これは、長年私が提案していたメンタルテストが本格的に導入される初めてのケースになる。
ここに至るまでが長かったようにも思うし、意外に早かったようにも感ずる。
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そして、平成21年度の終わりに、厚労省のご予算をいただいた研究会の締めくくりとして「社会的インクルージョン研究報告書」(炭谷・飯箸ほか)をその時の長妻厚生労働大臣に提出した。平成22年3月20日ころだったと記憶している。私の一貫したテーマは、「障害者の就労支援」だった。
この報告書の中に、私は「すべての職場で健康診断の際に同時にメンタルテストを行うべきである」と書いた。早期発見こそ、回復のチャンスであり、働く人々にとっての利益にかなうと述べている。4月に入って報告書作成の委員会の取りまとめ役だった炭谷氏らが長妻厚生労働大臣に説明に参上している。4月19日、長妻大臣は記者会見で「健康診断の際に同時にメンタルテストを行うよう事務方に指示した」と述べ、新聞等のマスコミが大きく取り上げた。
その後の政府の動きは早かったが、紆余曲折もないではなかった。
YOMIURI ONLINE yomiDr. ニュース
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うつ病 健診でチェック…政府方針、11年度から
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=23768
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企業指導も強化
政府は職場でのストレスなどを原因としたうつ病など精神疾患の広がりに対処するため、企業や事業所が実施する健康診断に精神疾患を早期に発見するための項目を盛り込む方針を固めた。
また、企業などのメンタルヘルス(精神衛生)対策を指導する国の専門職員の研修時間を2倍以上に増やすなど、精神疾患対策に本格的に取り組む。
対策は、厚生労働省の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」が今月中にもまとめる提言に盛り込まれる予定で、政府は総合的な自殺防止対策の一環として2011年度からの実施を目指す。
企業の健康診断は、労働安全衛生法で実施が義務付けられており、身長や体重の測定、血糖検査、尿検査など実施すべき項目を労働安全衛生規則で定めている。政府は同規則などを改正して、精神疾患のチェックを項目として盛り込む考えだ。長妻厚生労働相は19日、都内の労働基準監督署などを視察後、「何週間も何日も眠れないなど、そういった項目を医師が聞いて、うつ病をチェックできないか検討したい」と述べた。
また、企業などの精神衛生対策を指導するため、都道府県労働局や労基署に配置されている、国の専門職員「労働衛生専門官」の研修プログラムの改定は今年6月から実施する。これまで年1回4時間半だった精神衛生関係の講義を10時間半に増やす。
厚労省によると、仕事のストレスが原因でうつ病などになったとして労災認定を受けた人は、2008年度に過去最多の269人を記録、5年前の108人に比べて約2・5倍となった。
(2010年4月20日 読売新聞)
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厚労省のメンタルヘルス対策検討会(座長・相澤好治北里大学副学長)は6回開かれたが、一部のオブザーパらの発言で後半の議論は難航した。
第1回 職場におけるメンタルヘルス対策検討会(5月31日)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/05/s0531-10.html
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/05/txt/s0531-22.txt
第2回 職場におけるメンタルヘルス対策検討会(6月7日)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/s0607-6.html
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/txt/s0607-8.txt
第3回 職場におけるメンタルヘルス対策検討会(6月15日)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/s0615-5.html
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/txt/s0615-7.txt
第4回 職場におけるメンタルヘルス対策検討会(6月21日)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/s0621-7.html
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/txt/s0621-8.txt
第5回 職場におけるメンタルヘルス対策検討会(7月8日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000c1bl.html
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000j44b.html
第6回 職場におけるメンタルヘルス対策検討会(7月14日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000c0nq.html
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000l8bn.html
その結果、7月には断念するという報道も一部に流れた。
平成22年9月7日「厚生労働省労働基準局」は、上記検討委員会の結果に踏まえて、次のような報告書を提出した。
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「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」の報告書取りまとめ
~プライバシーに配慮しつつ、職場環境の改善につながる新たな枠組みを提言~
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000q72m.html
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メンタルヘルステストは、「プライバシーに配慮しつつ」を条件に実施する方向が明確に打ち出されたのである。
この提言の本体となる付属文書は以下のとおりである。
◦(別紙1)職場におけるメンタルヘルス対策検討会報告書概要(PDF:435KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000q72m-img/2r9852000000qn8i.pdf
◦(別紙2)(参考)一般定期健康診断のしくみ(PDF:164KB)
◦(別添)職場におけるメンタルヘルス対策検討会報告書(PDF:397KB)
これらの動きに併行して、東京都の教育委員会の議論も進んだものと推測される。
ところで、私のいう「メンタルテスト」と、この影響で生まれた教育委員会がいう「ストレステスト」は、大変近いが少しばかり違うところもある。
長妻大臣への提言の後、省庁内でも心理学系の学会のいくつかでも精神医学系学会のいくつかでもいろいろな議論が起こった。なかなかきわどい議論で、私の提言を嫌う人もいたようだった。しかし、時代は待ってはくれない、精神疾患は企業も教育界も行政も蝕んでいるのである。とりあえずは罹患率が一番高い「うつ病」に焦点が絞られてきた。その結果が「ストレステスト」というものになったのだと思う。それはそれで意味は大きい。鬱から自殺へと一直線に進む人たちも少なくない。無益な死をせき止めるのは急務である。私は、この論点に賛成である。
しかし、上記の記事の中にも書いたように、教員も企業の労働者も行政の職員も精神を病むのは「うつ病」ばかりではない。「統合失調」「躁病」「躁鬱病」「離人症」「自閉症」などの精神疾患、反社会性人格障害や「アスペルガー」「学習障害」などの障害、記憶障害なども少なくない。知的障害は学校教育の段階でかなり選別されていると思う人もいるかもしれないが、「学習権」を主張して、小中高大のいずれも「権利闘争」の末に卒業して社会に出てくる方もいるのである。これらの方々が、合わない仕事に就いた場合には、副次的な障害を蒙ったり、いっそう重篤になってしまう危険性が存在している。せっかく残されていた能力も失ってしまう。本人の人生にとって取り返しのつかないことになる。特に教師は健全な精神で子供たちに接しないと子供たちに被害が及ぶ危険性がある。
「うつ」は重大事だが、「うつ」に気を取られていると他の精神疾患によって本人にも職場にも思わぬ事態が起こりかねないのである。「うつ対策」に限定されない「精神疾患対策」をしてほしいという願いを込めて、私は「メンタルテスト」という言葉を選んだのである。
東京都教育委員会の施策は不足しているが、重要な第一歩である。「ストレステスト」が改良と改善を重ねて「メンタルテスト」に成長することを期待する。
もうひとつ付言するが、「精神疾患についても病名告知すべきである」と申しあげたい。現在、精神科の医師の2-4割程度しか本人に対しては病名告知をしていないという現実がある。つまり、6-8割の患者が自分の正しい病名を知らずにただ薬をもらっていることになる。これでは、よくなる病気もよくはならない。ガンなどの重篤な病気と同じで、「自覚なくして病気の回復はない」ということを申し上げたい。精神疾患はとくに自覚の上に自分の病気に取り組まなければ病気は治らない。その昔、「ガンなど不可逆的病気は告知しないほうが本人のため」といわれて病名告知などとんでもないことのように言われた時代があった。しかし、ガンについては、今や「病名告知」は必須とさえなった。回復することなく亡くなる患者さんも少なくない中、残された人生を充実したものにできる「病名告知」は社会的常識となっている。患者の基本的な知る権利の一つでもあると思う。おそらく、数年もすれば精神疾患においても「病名告知」は当たり前のことになるだろう。とはいえ、今は、告知しない、できない、本人も家族もよく知らない、の状態で「おかしい、おかしい」と悶々としている患者が多いのである。病名告知しないというのは患者やその家族を馬鹿にすることであり、患者の人権を著しく阻害する行為であると思うのである。
私は、このブログでも取り上げたが、あいさつ代わりに自己病名を常に大声で言い合う人たちの集団を視察したことがある。高い回復率(社会復帰率)を誇る「ベテルの家」での実践である。彼らの実践を見ても「病名告知」は怖くないことがはっきりとわかるのである。患者の皆さん同士ばかりか、健常者と患者の間でも、もっとわかりあえるための大切な情報開示である。
そして、本人が急速に回復してゆく原動力となっているのである。
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琵琶
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