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政府はいかに研究開発の支援によりイノベーションを興せるか-研究・イノベーション学会 国際ワークショップ--感性的研究生活(63)

2017/07/28
政府はいかに研究開発の支援によりイノベーションを興せるか-研究・イノベーション学会 国際ワークショップ--感性的研究生活(63)

1. 国際ワークショップの概要
2017年7月27日(木)18:00~20:35の予定で、「政府はいかに研究開発の支援によりイノベーションを興せるか」というテーマで、研究・イノベーション学会が主催する国際ワークショップが開かれた。
これは実に昨夜のことである。
たまたま、ネットで会の開催を知り、参加したものだが、驚いたことに、示し合わせたわけでもないのに慶応義塾大学の大岩名誉教授が私よりやや遅れてやってきた。大岩名誉教授は学生の頃からの先輩で、現在は私が事務局長を務める一般社団法人協創型情報空間研究所の代表理事をしている。彼も驚いたらしいが、私の姿を見つけると私と同じ机の隣に座って、私と一緒にこの会の報告と皆さんの発言を聞くことになった。

20170727

この会は、私にとって大きな刺激にもなったが、日本人研究者のイノベーションに対する認識水準の低さが目立ったという残念な思いが残った。
一方、海外の事例も多数紹介されたが各国の政治経済社会の苦悩がそのまま表れていることに内心手を打つ思いだったが、それはイノベーションすべき対象がそこにあるからなのである。
主たる発言者は下記のとおりであるが、司会者が文部科学省の課長補佐の方のようだったが、名前を記録しそびれた。会場で配布された資料にも、ネット上の資料にも課長補佐の名前はない。事実上、日本の国策会議であるが、そのことがあからさまにならないように司会者は黒子に徹しているのに違いない。
・Lennart Stenberg, Vinnova(主としてスウェーデンの事例報告)
・Michael Norton, Tokyo Institute of Technology (TITECH)(主としてアメリカの事例報告)
・Patarapong Intarakumnerd, National Graduate Institute for Policy Studies (GRIPS)(ドイツ、日本、オーストラリア、台湾の比較報告)
・Satoshi Sekiguchi, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)(日本の研究・イノベーション事例の報告)
・Kumiko Miyazaki (Moderator) , Tokyo Institute of Technology (TITECH)(モデレータ)

2. 各自の報告内容と率直な感想
(1)Stenberg
スウェーデンの事例報告をした Stenbergは、「外資の導入によるリスクヘッジ」を主に取り上げた。人口が小さくて産業界の規模も大きくない国なので国内資本だけであれば特定の資本が低迷した場合、直ちに経済がアウトになるが外資が散財すればこれを補うことがあり経済の安定につながっている。外資が国内に存在することで国内企業が外資から学んでイノベーションにつながることが多いというメリットを語った。
(2)Norton
アメリカの事例報告をしたNortonは、安定した大企業とベンチャー企業の橋渡しが大事て、その役割を大学がになっていることを指摘した。情報と技術の移転だけではなくて、有力なベンチャー企業が大手企業の傘下で潤沢な資金を得て急成長することで社会的イノベーションが速算されていると述べた。
(3)Patarapong
自身はタイ出身の研究者だが、ドイツ、日本、オーストラリア、台湾の比較報告をしたPatarapongは、主として台湾の主たる公共研究機関ITRIを主に取り上げた。ドイツFraunhofer、日本AIST、オーストラリアCSIRO、台湾ITRIがそれぞれ雇用している研究者は、ドイツFraunhofer22,000人、日本AIST2,900人、オーストラリアCSIRO5,200人、台湾ITRI5,800人で、断トツのドイツを除くとその次の数となっている(日本は最低)。台湾の特徴は研究所の敷地内に各企業の研究施設が作られており、一地域に多数の先進的な研究施設が密集しているということが非常に大きな力になっている。参加している企業は大手からベンチャーまで存在するが、ベンチャーから大きな企業に成長するものもあるし、大手企業からスピンOFFして優良なベンチャーになる者もいる。と紹介した。
いずれもイノベーション(「政治革命を伴わない社会変革」)とは何と言っても産業の刷新と発展のことであるととらえている点で共通している。
(4)Sekiguchi(関口)
日本の研究・イノベーション事例の報告をしたSekiguchi(関口)は、AISTの概要説明したのち、「研究・イノベーションと言えば予算の確保が大事だ」と述べ、民間からのAISTに投資される金額がドイツのFraunhoferなどに比べるとまだ比率的に少ないので民間からの投資を計画的に増やしていただきたいと執拗に述べた。彼の頭の中にはイノベーション(政治革命を伴わない社会変革)に対する国家研究機関としての責任感というものがまるでないことがよくわかった。自分たちの研究予算を多くすることにだけ関心があり、"成果の上がらないAIST"と産業界から揶揄されていることに対する意趣返しの発言にとどまったようにしか私には聞こえなかった。
(5)Miyazaki(宮崎)
その後、バネル討論会になったが、モデレータの宮崎教授の質問もつつがなく進んだが、最後の質問がよろしくなかった。パネラ全員に対しての質問であったが「研究・イノベーションは、上からトップダウン、つまりニーズから行うべきか、ボトムアップ、つまり研究成果から行うべきか」というものだった。この質問が心地よく感ずるのは日本の堕落した研究者だけだろう。
Stenberg, Norton, Patarapongらは、あきれ顔に、口々に「我々(各国の主たる公共研究機関)の研究の目標は目先の課題を追うものではない」「もっと大きな国家的または社会的な課題 "例えば温暖化にいかに対処するか" などから導かれるものである」「目標のない研究はないので、目標のない研究からイノベーションが起こることはない」などと説明した。宮崎教授はなぜ自分があきれられたのか、まったくわからないようだった。いな、あきれられたという事実も感じなかったのかもしれない。

3. 「イノベーション」について
もっとも日本人以外の研究者は「研究によるイノベーション(研究による政治革命を伴わない社会変革)」を取り上げていたのに対して、日本人は二人とも「社会変革のない研究費拡大」を取り上げていたように思われる。
「イノベーション」という言葉の意味が日本人研究者にはそもそもわかっていないように感じた。
少し古い記事だが、下記を参考にされたい。
"イノベーション" は "テクニカル・イノベーション"か 「イノベーションと独創力(1)」--独創力の創り方(20)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2009/08/--20-d42b.html
「イノベーション」とは、もともとはオーストリア出身の経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターが定義したものであるが、多くの経済学者・社会学者・哲学者に影響を与えた。ヨーゼフ・シュンペーターは経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合することと定義した。イノベーションによって、「新しい財貨すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産」「新しい生産方法の導入」「新しい販路の開拓」「原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得」「新しい組織の実現」などがあるとした。文明評論家とも評される分析哲学者バートランド・ラッセルは、この言葉を世界に広げた人物だが、彼にによれば「政治革命を伴わない社会改革」のことであり、「技術革新」を意味していない。
日本人以外の3名は、それらの意味を十分踏まえていることが感じられるが、日本人2名はあくまでも「研究拡大」のことと勘違いしている。
この学会は、国際会議を初めて開いたようだが、もっと諸外国の皆さんから学ぶべきである。昨日の会議がさらに充実し「求められる社会改革を実現する研究はいかにあるべきか」という議論に高められることを切に祈るものである。

会が終わったのが21時、大岩先生が「まだ夕飯を食べてないんだよ」とのたまうので、会場の近くを散策してみると赤い看板、黄色い看板、、、といろいろあって、目移りしたが、「目利きの銀次」にした。学生たちとときどきは行くことがあったチェーン店だが、安いなりにおいしく食べさせて飲ませてくれる。ここで、イカゲソのから揚げとイワシのワタ焼きをつまみに大岩先生は焼酎を二杯召し上がってからまぐろと納豆ととろろのどんぶり、私は車の運転が控えているのでウーロン茶とまぐろ2種盛をいただいた。おなかはいっぱいになったが、店は賑やかで大岩先生には少しお辛かったかもしれない。少し静かな喫茶店を所望されたので、心当たりを2軒、いずれも閉店直前で入店できず、駅の反対側に回ってルノアールを見つけた。ルノアールはたいてい23時までやっているので、やれやれである。23じぎりぎりまで話し込んでお開きとなった。


当日の公開プログラム配下のとおりである。

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△次の記事: 感性的研究生活(64)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/08/-25sea--64-bba2.html
▽前の記事: 感性的研究生活(62)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/07/--132--62-d66e.html

琵琶

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