SNS中継、映像中継によるプレコングレス【人工知能の発達に対応する医学教育】第49回日本医学教育学(その1)--感性的研究生活(65)
2017/08/19
SNS中継、映像中継によるプレコングレス【人工知能の発達に対応する医学教育】第49回日本医学教育学(その1)--感性的研究生活(65)
~プレコングレスの開催、これからのAI教育など~
ミニシリーズ:
「SNS中継、映像中継によるプレコングレス【人工知能の発達に対応する医学教育】第49回日本医学教育学--感性的研究生活」--at 2017.08.17
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1. プレコングレスの開催、これからのAI教育など
2. 飯箸によるトリガースピーチ "始まったAI友の時代"
3. 飯箸による詳細説明書の紹介
4. 事前討議《1》: 中本浩之氏 "処理ロジックについて" など
5. 事前討議《2》: 伊藤昌夫氏 "チャペックの R.U.R. " など
6. ディープラーニングは人工知能の全部か/一部か
7. いわゆるヒラメキをAIが提供してくれるか?
8. AIは空気が読めるか、ジャッジは人間優先か・AI優先か
9. Dr. Akira Naito(精神科医、英国在住)との対話: "ヒトは危うい、ましてやAIは?
10. 『問答』を終えて
11. 続編1: 高橋優三名誉教授 "白い巨塔から"
12. 続編2: 週刊プレイボーイ "人間は『命に関わるAI』を使いこなせない?" "AIの暴走=ブラックボックス"
13. 続編3: 授業におけるFBなどのSNSの可能性
14. 続編4: "共感とAI"、"AI教材は何から始まる"
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もう一昨日(8月17日)のことになるが、第49回日本医学教育学全国大会(2017.08.18-19)のプレコングレスとしてこの会が企画された。主たるテーマは「人工知能の発達に対応する医学教育」というものである。
私は、このプレコングレスに医療関係者でもないのにトリガースピーチャの一人にお誘いを受け、冒頭で発言し、その後は他の参加者とともに討議の熱気の渦中に巻き込まれてゆくことになった。
企画の立案者で、中心的な推進役となったのは岐阜大学名誉教授の高橋優三先生である。事実上の企画メンバーは、高橋(優)、飯箸、淺田、米島、吉田、大西、中本だった。
当日はトリガースピーチを高橋(優)、飯箸、淺田が行い、会場スタッフとして米島、吉田、大西、中本、淺田が活躍することになった(敬称省略)。
トリガースピーチを行う3名は、「第25回 SEA 新春教育フォーラム 2017--人工知能と未来の教育」で講演したメンバーと同じなので、「阿吽の呼吸」が通ずる関係だった。
会場は、札幌会場(札幌医大)と東京会場の2か所に分かれGotoMeetingという映像配信アプリで両者をつないだ。それ以外にSNS(実はFBグループ)とGotoMeeting(受信のみ)で参加する人もいたので、全世界から参加することが可能な環境となり、イギリスからの参加者もいた。
17:00スタートだったが、各会場には15時ころから企画スタッフが集まり、事前準備を開始して16時には中継テスト(リハーサル)を実施した。当初私のマシンがネットにつながらずに冷や汗だったが中本氏のご助力で何とかなった。
トリガースピーチは制限時間3分ずつだったが、三人とも話しなれているので、パワーポイントを利用して3分半くらいずつで話を終えた。
1) 飯箸のトリガースピーチの概要(クリックすると拡大します)
2) 淺田先生のトリガースピーチの概要(クリックすると拡大します)
3) 高橋先生のトリガースピーチの概要(クリックすると拡大します)
実は、開催日2日前から、三人のトリガースピーチのパワポのスライドを画像化して討議用のFBグループにアップして書き込みを促していたので、FBグループではすでに討議が始まっていたのだが、当日の討議開始まで言いたいことをためてきた方々も少なくなかったようで、「討議を始めてください」との高橋優三先生の合図があると、各会場に作られたグループの島ごとに一斉に話し合いが開始された。
参加者の多くは大学病院の医師であり、大学で講義を受け持っている教育者たちであった。会場での話題の中心は「AI(人工知能)を導入する前に解決しておきたいこと」にあったというのが私の印象だった。
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・AI(人工知能)を導入する前に、現状のガイドライン(医療行為の)でいいのか。
・ガイドラインを変更するルールが不透明に過ぎる。
・AI(人工知能)にガイドラインを教えるのだろうか。医療の進歩にタガをはめることにならないのか。
・医師はその現場でそれぞれの瞬間ごとに創意工夫している。しかし、、AI(人工知能)にガイダンスのタガをはめたら、医療の停滞が起きてしまう。
・医師免許試験はマークシートでやっているが、そんなことでいいわけがない。しかもテスト問題を作る側には合格させる人数があらかじめ示されて、それ以下にも以上にもならないように問題を作ることが求められている。年々問題を易しくしないとそれだけの医師が確保できなくなっているので、試験はますます易しくなっている。
・期末などのテストでは、平均が70点になり、2割の学生が単位未了となる正規分布が生成する問題を作れと言われている。ようは教師としてはここまで教えておきたいという内容のテストをすることができない。教える内容を手控えておいて、試験の内容を薄くすれば、良いテストでよい教師と言われる。
・AI(人工知能)にできる教育って人間にできるものと違うのか。
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トリガースピーチの内容からはかなり外れた討議が行われたように感じたが、これはトリガースピーチを行った主催者側の事前リサーチの不足という以外にない。
この教訓は、次回のイベントの際には十分に生かすべきであると感じた。
参加者から「AIからかなり外れた話が多くなってますが、いいんですかね」という質問を受けたので、私は次のようにお答えした。
「どの時代でも新しい技術を業務に取り入れようとする際は、現状のやり方のまま移行すべきなのかどうせ新しい技術にするのであれば業務内容を一新するのかという議論が起こります。それはごく自然なことで、その議論には、現状の業務に対する不満を解消するきわめて良い機会と受け止める意欲的な人たちの熱い思いが込められていると思います。皆さんのお話も前向きで素晴らしいと思います」
また、「AI(人工知能)にできる教育って人間にできるものと違うのか。」については、次のようにお答えした。
「新しい技術に盛られる新しいテーマの初めのうちは、古いテーマの焼き直しであることが多い。なぜかというと、ヒトは存在していないものについては想像力が少ししか働きません。しかし、古い時代に望まれて実現できなかったり不十分にしか実現できなかったテーマは強い印象が人々の間に残っていますから、新しい技術で"(出来なかった)あれ"は実現できるかと強い関心がもたれるようになります。今回のAI第三次ブームで取り組みが望まれていて、取り組めば確実に成果を上げられそうなものは次の二つでしょう。
①プログラム学習教材(ビデオによる)--学習者のつまづきに応じて分岐先を変更して必要な理解を積んでから元に戻るなどの双六型の教材のこと。1960年代に紙ベースで作られました(書籍)が、使用されれば使用されるほど修正が頻繁に必要なことからコスト割れして市場から敗退しました。1980年代にパソコンのアプリとして再登場しましたが、ストーリを作れる教師が圧倒的に不足していて、飯箸チームが撤退してからは後続作品が作れなくなって市場から消滅しました。今は、システム化すれば膨大な学習履歴が採集できることからディープラーニングにかけて自動的にストーリの最適化が進められる可能性が出来たので、実用化の可能性が高まっています。
②シミュレーション教材--『実験』と言う名で学習にはシミュレーションが取り入れられてきましたが、教員の理科離れで『実験』が次第に行われなくなってきています。事前の準備や後始末で必然となる時間外勤務が負担となっていることも原因の一つです。それ以外に現実問題として実施が困難なものもあります。(生命の危険を排除できない)人体実験やコストが高くて安定性の掛ける模擬患者よるシミュレーションもその範疇にあります。1980年代理科や数学のシミュレーション教材をパソコン炙りとしてOEM製造していた飯箸チームが撤退すると他のチームではコストが1桁高くなるなどの理由で市場からは姿を消してしまいました。今は、AI搭載によって、数式モデルや心理モデル、患者の病理モデルなどを比較的簡単に投入することができるようになることが予想され、修正も自動的に学んで自律的にさせることもできることから期待が高まっている領域です。疲れや飽きを知らない模擬患者などは医学教育の現場では大変な魅力なのではないでしょうか。」
私が東京会場で参加したグループには、現役の麻酔科の医師で大学の教授、健康相談サイトの経営者、児童医療サイトの運営者がいて、終始、実にレベルの高い議論が展開されて、十分心が満たされる時間となった。
企画の発案者と会場スタッフを引き受けてくださった皆さん、会場に参加された大勢の皆さん、それ以上に広い範囲から参加されたFBによる参加の皆さんに心から御礼を申し上げます。
─────────── 開 催 要 領 ──────────
プレコングレス【人工知能の発達に対応する医学教育】第49回日本医学教育学会
人工知能が医療を変えます。そして医師の役割も変わります。では、その時代に活躍する医師を現在育成する医学教育は? などについて参加者の議論を通して理解を深めます。
今回は札幌と東京を繋ぎつつ、SNSを使った能動的なワークショップを目指しています。
(開催概要)
■ 日時:2017年8月17日(木)17:00〜18:30
■ 会場
1)札幌会場:札幌医科大学 B会場(教育南棟 3階 南第四講義室)
地図: http://web.sapmed.ac.jp/jp/info/access.html
建物図: http://web.sapmed.ac.jp/jp/info/map.html
2)東京会場:キャンパスイノベーションセンター東京(田町)
5階 509
地図: http://www.cictokyo.jp/access.html
■ 参加費:無料
■ 参加申込 画面上部写真の右下にある青いボタン「登録する」をクリックまたは、「https://goo.gl/Riqkwr」にアクセスして申し込みフォームに必要事項を記入して送信してください。
■ 参加申込締切:8月15日(火)
■ 当日のワークショップの進め方
トリガースピーチ(3本を予定)を参考に、参加者は小グループ(4~5名程度)で議論をし、それをFacebookに投稿しつつ、参加者全体での意見交換を行います。
札幌会場と東京会場は、「Web会議」で中継接続します。
申し込みをされた方に手順について改めてご連絡します。
■ 持参して欲しいもの
Facebookにアクセスできる端末(スマホまたはiPad、PCなど)
必須ではありませんが会場で、意見交換に使用します。
■ Facebookグループ:
https://www.facebook.com/groups/igakukyouikuAIgroup/
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私の発表資料(トリガー)や私の発言に関連する質疑等については、次からの記事に譲る。
△次の記事: 感性的研究生活(66)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/08/sns492--66-24ec.html
▽前の記事: 感性的研究生活(64)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/08/-25sea--64-bba2.html
琵琶
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