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「島嶼性矮性化進む日本の経営戦略が知性をつぶしている。」/Dr. Robert Cole & 新谷勝利氏: システムを考える会 --感性的研究生活(82)

2017/10/12
「島嶼性矮性化進む日本の経営戦略が知性をつぶしている。」/Dr. Robert Cole & 新谷勝利氏: システムを考える会 --感性的研究生活(82)

昨日(10/11)14:00~17:30、王子ホールディングス1号館で
「システムを考える会: Dr. Robert Cole セミナー」
が開かれた。
Dr. Robert Coleは、米カリフォルニア大学バークレー校名誉教授で、日本のIT業界の研究者として知られている。
コーディーターは、新谷 勝利さんで、元IBM、現在は(独)情報処理推進機構(IPA)ソフトウェア・エンジニアリング・センターに勤務している。
参加メンバーは以下の通り。
-----------------
1 Robert E.Cole UNIBERSITY OF CALIFORNIA Berkeley
2 新谷 勝利 新谷ITコンサルティング
3 飯箸 泰宏 株式会社 サイエンスハウス
4 大岩 元 慶應義塾大学名誉教授、(一社)協創型情報空間研究所
5 上村 務 元IBM Rational AP CTO
6 甲斐 英隆 ConfluCore日本代表取締役
7 細川 義洋 内閣官房 政府CIO補佐官
8 西住 浩樹 王子ホールディングス(株)
-----------------
Dr. Robert E.Cole氏からは「How to get the buy-in from managers and senior executives on the importance of IT professional education?(どうしたらIT専門教育に経営者や上級管理職を本気にさせることができるか)」という事前課題が出されて、それぞれが回答を持ち寄り各自10分間のプレゼンテーションを行った。議論はすべて英語で行われたが、私だけはわがままを許していただいて日本語で発言した。新谷勝利さんが日本語 to Englishの通訳をしてくださった。
私のプレゼンテーションは「島嶼性矮性化進む日本の経営戦略が知性をつぶしている。」というもので、その資料は添付画像の通りである。

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実際はこの資料の英訳版が使われたが、そちらは末尾に添付する。英訳は前日の夜、新谷さんが付けてくれた。深謝である。

他の方の英語は半分も聞き取れなかったが、どうやら、最後のほうで発言した私の意見に皆さんのご意見が収束したようである。
私のプレゼンの趣旨は、次のとおりである。
1.教育について
日米のシステム教育には内容に大きな違いがある。たとえばデータサイエンスでいうと、日本ではSTATAやR言語のオペレーションの勉強になってしまうが、アメリカでは混沌としたデータから意味を取り出す考え方を統計学として学ぶ。アメリカのシステム教育はクリエイティブ・プログラマを育成し、デザイン・シンキングを徹底的に訓練する。日本では、もっぱら従順なオペーレータになることを学生に要求し、モノを考える誰かから要求された通りにオペレーションする態度を学ぶのである。日本では、クリエイティブ・プログラマを育成しないし、デザイン・シンキングを学ばない。
2. 産業界からシステム技術者に対する要求
<アメリカの場合>
・仕様書通りにコードを書くこともできる
・仕様書に書かれていないことを見抜く
・創造的な提案ができる
・知恵は社内に蓄積することが必要なので、知的人材は社内におく。
・生み出す価値に見合う対価を払う
<日本の場合>
・仕様書通りにコードが書ける
・仕様書を超えてはいけない
・従順で奴隷のように黙々と働ける
・知的人材は文句が多いので、社内に置かず、必要に応じて外注する
・できるだけ安い労働力であること
実は、折しも、日本経済新聞は中田喜文同志社大学教授による「ソフトウエアの価値創造と日本」が連載されていた。中田教授はCole氏と親しく、共著もある関係である。中田教授も私と類似の問題を指摘していたが、その原因は日米の給与差であると断じている。今回の「システムを考える会」の前日、その連載の5回目(ソフトウエアの価値創造と日本(5) 中田喜文 同志社大学教授 SE給与、米国は5~7割高く 2017/10/9 2:30日本経済新聞 電子版)で、これを主張していた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21974070W7A001C1SHE000/
私は、これで済ませるのは不満であることを表明した。なぜ賃金格差が生じてしまうのかを明らかにしないと解決の糸口はえられない。なぜ日本の経営者はシステム技術者を大切にしないかの理由を明らかにしようとその場で呼びかけた。
3. 日米の経営戦略の違い
<アメリカの場合>
アメリカ企業の経営戦略は基本的に「グローバル」ビジネスに向いている。この点が日本とは違う。
敵は国内だけではないので、すべてをつぶすことはできない。世界のどこからライバルが現れようと迎え撃って勝てるよう一歩でも前に進むことを戦略の基本に置いている。つまり「イノベーションなしに生存なし」というスタンスである。世界のどこかからライバルが現れたら、戦うにやぶさかならずというのがアメリカの企業戦略の基本である。そのためには自社のイノベーションの助けになりそうなベンチャを支援して取り込み、自分たちの力にしようとするのが当たり前である。また、ノウハウと知恵を社内に蓄えて自分たちの戦力にしたいがゆえにシステム要員は社外ではなく社内に抱えるのである。
・原則 ライバルをつぶして生き残る
    イノベーションは会社を救う
・派生1 ライバル社に取られる前に有望なベンチャは取り込んでおく
・派生2 経営のイノベーションのために知的人材は大事にする
<日本の場合>
日本企業の経営戦略は基本的に「鎖国」ビジネスにしがみついているのである。かつては言葉の壁に守られて日本の市場は日本企業だけのモノであった。日本の市場で生き残るのは、国内にいるライバルをつぶすことで成功した。市場が国内に限定されていたので逃げ場がないために競争は熾烈化を極めていた。島嶼的矮性化が進行して、身を守るには、イノベーションを繰り返して進化するよりは、他社の足を引っ張り、省エネ・エコ経営で、直接生産に関係しないIT部門は切り捨てて矮性化してゆくことを選んでいるのである。
また、日本の経営者にとっては同業他社ばかりが敵ではない。ベンチャも力があると見たらつぶしておかねばならない。いつライバルに成長するかわからないし、他社がそれを利用して対抗してくるかもしれない。ベンチャを育てるなんてとんでもないことで、何としても引き付けて赤字を押し付けてつぶしておかねばならない。という戦略が採られるのである。
それだけではない。経営者は社内のライバルもつぶさなければならない。いつ寝首が搔かれるか分かったものではない。ライバルのミスを見つけて大げさに宣伝してやるのが優先である。新規事業の提案なんてことをすれば失敗のリスクは高まる。ミスを犯せばたちまち自分は転落してしまう。口が裂けても提案などできやしない。
システム屋も [数値をあれこれ分析して] 経営方針にやかましいことをいろいろ言うので、自分の社内権威が汚れて仕方がない。システム屋は決して増長しないように勉強させないし、増やさない。必要があれば外注すればいい。外注は言うことを聞かなければいつでも取り換えることができる。社内にシステム屋を雇ったら、そう簡単にクビにはできないので、長い間、彼らの「理屈」に付き合わされる。まったくうんざりだ。というわけである。
・原則 ライバルをつぶして生き残る
    イノベーションより生き残り
・派生1 将来ライバルになりそうなベンチャはつぶす
・派生2 自己の社内的権威を脅かす知的人材は根絶やしにする
4.日本の経営者に教えたいこと
(1)いまさらだが、ビジネスは国際化している。
 国内のライバルをつぶしても、ダークホースは世界のどこから出現するかわからない。
 社内の知恵者をつぶしても、世界の知恵者を全員つぶすことはできない。
(2)イノベーションこそ生き残りの道である。
 世界の敵をすべてつぶすことはできない。敵は見えないところにいると覚悟せよ。
 だれよりも先に行くことしか生き残りの道はない。
(3)ベンチャと知恵者は怖くない。
 ベンチャは敵ではない。味方にして戦力にすべきだ。
 社内の知恵者とは友達になって、味方を増やそう。
 経営者よ、イノベーションの旗手になろう。

事後、風邪気味という Cole さんを除いて、時間の許すメンバー5名はすぐ近くのカレー専門店「ナイル」に移動して、会食・歓談した。「ナイル」はずいぶん久しぶりだが、お任せコースをたっぷり堪能することができた。
これだけの論客の中で、一定の存在価値を示すことはできたことに満足した一日だった。

補足1
島嶼化とは、進化生物学など使われる用語だが、移動が制限された地域で同種の生物の生存競争が激化して、その結果、遺伝的変化が起こって身体が小さくなるなどの傾向が生まれる。条件によっては大きくなる現象もあるが例外的である。
島嶼化・・・island rule
島嶼矮化・・・Island dwarfing (Insular dwarfism)
Wikipedia「島嶼化」
https://ja.wikipedia.org/wiki/島嶼化

補足2
英文化した資料(新谷勝利氏に感謝する)

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△次の記事: 感性的研究生活(83)
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琵琶

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