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「人食い企業」との付き合い方@その1: 相手から断るようにする--社長の条件(44)

2017/12/02
「人食い企業」との付き合い方@その1: 相手から断るようにする--社長の条件(44)

1. 悪い客、あれこれ
少し反省もこめて、今回の記事は書くことにする。
私以外の営業担当者がいたころ、営業担当者にいつも飛ばしていた檄は
「お客様には徹底的に親切丁寧に。悪い客は悪いほうから順次切れ、良いお客様は決して逃がすな。新規客を2社確保したら、悪い客1社は切れ」
だった。
当時は100社から200社程度の仕事を抱えていたので、その中の5%ほどの客は常に悪い客の中でもかなり悪い客だった。この顧客は社員の心を腐らせ、経営をひどく圧迫していた。
実際、悪い客は意識的に切らないとどんどん溜まってゆく。悪貨は良貨を駆逐するのである。
 ①支払う約束を守らずにお金を払わない客
 ②ただで教えてくれと言って技術者を長時間拘束する客
 ③初回だからただにしてくれ、または半額にしてくれという客(経験上、2回目以降もまともな支払いをすることはない)
 ④別の案件で利益を保証するから今回はただまたは半額にしてくれという客(経験上、そんな別の案件が出てきたことはない)
 ⑤この仕事をやってくれよ、やってくれたら成果報酬を払うからさと言う客(経験上、仕事が完成すると理不尽な難癖をつけて支払いに応ずることはない)
 ⑥技術者の引き抜きにばかり熱心な客
 ⑦乗っ取り工作を仕掛ける客
 ⑧自社の負債を当社に転嫁しようとする客
  ・・・
悪い客の手口には枚挙にいとまがない。
中小零細企業もないとは言えないまでも、多くは上場企業かその子会社だった。
「悪い客」が減ると社員の負担が改善され、経営も救われる。
あくまでも丁寧に、「御社のような立派な会社ならば、仕事を請ける会社はたくさんいらっしゃるでしょうから、私たちはご遠慮させていただきます」とお断りする。
この方針は大成功で、かなりの悪い客を撃退することに成功した。一時的には経営も悪化を免れ、追い詰められるばかりの担当技術者も営業担当も安どの胸を下した。

2. 悪貨駆逐の副作用
この方針は大成功だったのだが、じわじわと顧客が減る原因にもなっていった。
顧客たちは、「取引相手に損をさせないと自分たちが得をした気にならない」という、私から見ればきわめて不思議な性格を持っていた。
私も私の部下の営業マンたちも、正直なので、原価ギリギリがどのあたりにあるのかを明示して、顧客と交渉に臨もうとしていた。顧客は原価割れにならない限り満足しなかった。私たちの仕事の成果が顧客にもたらす利益の一部をいただければありがたいという我々の願いは聞き入れられることが少なかった。
「悪い客」をお断りすると同系列の企業には、警戒感が広がり、1社断ると3-4社が顧客リストから姿を消すありさまだった。
良い方針ではあったのだが、他方よくない結果も伴っていたのである。

3. ITスポットサービスの成功
ところで、ある時期、「②ただで教えてくれと言って技術者を長時間拘束する客」が立て続けに現れて、正常業務が著しく阻害される事態となったことがある。大学の教員が数名ととある民間企業の一員だった。社員らも渋々彼らにセキュリティソフトの使い方を教えたりマシン移行のお手伝いをする羽目になった。とある民間企業の一員は電子カメラの使い方や撮影方法(スタジオの設営方法)などの相談に現れていた。そのうち、スタジオの設営方法は聞いているだけではわからないから、私の会社の事務所で実際に設営をやって見せてくれ、設営だけではなくて(「ちょこちょこっとなのだから」という理由で)数千点の写真撮影も続けてやらせてくれ(実際はやってくれ)というように要求がエスカレートしていっていた。図々しいにもほどがあるというものだが、担当者の手に負えなくなったので、対応は私の元にゆだねられることになった。
私は「お知らせ、この度、お客様のためのITスポットサービスを開始することにいたしました。技術者の拘束、事務所の占有使用も安価にご提供いたします」というあいさつ文を作成して、営業マンに持たせて客先に配って歩いてもらった。ホームページにも掲載した。
このサービスは、好感をもって広く迎えられることになった。ユニークで良いサービスとしてマスコミにも取り上げられたことがある。
現在もこのサービスは継続している。
http://www.sciencehouse.jp/works/service.html
価格を見ればわかる通り、きわめて安価である。出張料金は、電気屋さんの出張サービスの半額程度に設定されているので、歓迎されたのである。
しかし、「②ただで教えてくれと言って技術者を長時間拘束する客」はこれで青くなり、たかり大学教員は近寄らなくなり、件の民間企業の一員は血相を変えて抗議に現れた。「ちょこちょこっとなら、大変お安く済みますよ」というのが私からの説明でした。対するその客は「まとめて3万円」と主張するので、「ちょこちょこっとなら3万円かからないかもしれないので、時間の従量制で対応させてください。私はちょっちょこっとでは済まないかもしれないと思っていますから、このお値段では受けられません。やってみなければ分かりませんから、実際にかかった時間でカウントしましょう」と言い張って、譲りませんでした。商取引は条件と値決めですから、あの手この手で自分に有利にしようと言葉巧みなお誘いがあって当然で、それを丁重に当方の理由で主張を曲げないのはまことに正常なことです。最後はご自身から辞めると言ってこの無理難題は終結した。
これで営業妨害事案は解消し、世間からの評判も勝ち得るという一石二鳥を勝ち取ったことになる。
ITスポットサービスのその後は、今でも評判は悪くありません。時々、「システムが固まってしまったから助けて」「データが取り出せなくなった」「ネットがつながらない」「メールがおかしくなった」などで、お客様からはしばしばお電話やメールをいただいてスタッフが駆けつけて感謝されている。

4. 何か良くて、何が悪いか
2項のように単に断るのと、3項のように値付けしてしまうのとでは、何が違うのか。

実は、最近(11月22日)、ツイナビに、面白い記事が出ていて、話題になっていた。
https://twinavi.jp/topics/tidbits/5a154d5a-cde0-4301-ad60-09c4ac133a21?ref=tweet
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フリーランスで荒稼ぎしてる先輩「やりたくない仕事は断るな、次の仕事が来なくなる。そのかわり…
ツイッター 2017年11月22日 19時08分
@rootport
フリーランスで荒稼ぎしている先輩が「やりたくない仕事は断るな、次の仕事が来なくなる。高い金額を提示して向こうに断らさせろ」って言ってた。
@rootport
返信先: @rootportさん
「でも、高い金額を提示したのにクライアントが断ってくれなかったらどうするの?」
「やるんだよ」
「やりたくない仕事なのに?」
「もちろんです、プロですから」
@rootport
「クライアントがめちゃくちゃな〆切設定してくるよう!今日中に再提出とか無理だよう!」
「そんな暴君顧客にお悩みのあなた!特急料金を設定しておこう!!」
「とっきゅう…?」
「たとえば〆切までの1週間に満たない1日につき●千円くださいと事前に決めておくんだ!」
「効果は?」
「てきめん」
@rootport
返信先: @rootportさん
「『〆切がキツいと対応できませんからね』とあらかじめ言っておいても、『そこを何とか!』とねじ込まれてしまう」
「あるある」
「不思議なもので『〆切がキツくても対応しますがかなり高くつきますよ?』と言っておくほうが、炎上への抑止力があるんだ!!」
「へー」
「草の根行動経済学なのだ」
@rootport
返信先: @rootportさん
「ポイントは、クライアントが『払ったら大損だなあ……』と感じるくらい高めの特急料金にしておくこと」
「安いとどうなるの?」
「カネさえ払えばいくらでもキツいスケジュールを振っていいと判断される」
「うわぁ…」
「行動経済学でいうモラルハザードってやつである」
@rootport
返信先: @rootportさん
「高額の特急料金をクライアントが認めてくれるかな…?」
「大丈夫だ!スケジュール設定の時点ではみんな上手くいくと信じてる。特急料金なんて発生しないと思い込んでいる」
「ホントに?」
「むしろ、そこで言い淀む顧客なら要注意。スケジュール管理が甘くて、炎上を頻発させている可能性が高い」
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まさしくこれだったのである。
こちらから断ると2度と仕事は頼まれないが、相手から断るように仕向けると被害は最小になるということである。
ITスポットサービスは、ただ乗りしたくてのしかかってくるお調子者をはねのけることに成功して、なお、良いサービスという評判も得たヒット作だった。
社長はこんなことも考えて対応しなければならないのだ。いつも成功するとは限らない。この例では成功したということである。やってみて、うまくゆかなければ考え直す、の連続で、正しい答えにたどり着くのが商い(あきずにやるから商いなのだそうだ)というものである。

本日の記事は、この問題にはもっと奥の深い重い問題があることに触れていない。
奥の深い重い問題については、次回に譲る。

△次の記事: 社長の条件(45)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/12/2--45-0332.html
▽前の記事: 社長の条件(43)
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琵琶


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