カテゴリー

  • 日記・コラム・つぶやき
  • 経済・政治・国際

« 2017年11月 | トップページ | 2018年1月 »

商人道を超えて「グローバル商人道」へ: 個人的事情--社長の条件(46)

2017/12/04
商人道を超えて「グローバル商人道」へ: 個人的事情--社長の条件(46)

前回の記事の末尾に、個人的事情は別に書くと述べたので、ここにその話を書かせていただきます。
明示的には示してきませんでしたが、私の経営に関する考え方の奥底には、日本の商人道といわれる考え方が流れているようです。これは私の経営に関する強みでもありましたが、歴史的限界にひきずられる弱みでもありました。それはどこから来たものか、ざっと振り返ってみたいと思います。
おそらく、それは祖父の影響なのです。
祖父は飯箸柳剛流という武術家の次男として生まれて、「貴船」という屋号の船問屋(古風な商社)に婿に出て、破産寸前だった「貴船」の再興に成功し、順風満帆の絶頂を迎えます。このころの彼は剣をソロバンに替え、武士道を心の底にしまって石山本願寺寺内町に始まる日本の商人道をよりどころとしていました。近代簿記も駆使して在庫管理にたけていたと伝えられます。
絶頂のさなか、深く愛していた妻を突然死で失います。本人は、婿入り前から続いていた「貴船」のお家騒動のライバルに毒を盛られたかもしれないと深い疑いをいだいたようです。その妻がどんになか姿も心も美しい妻であったかを本人は後妻の息子=私の父=に何度も語っています。商人道はその妻から示唆されて学んだようです。
疑い晴れぬ状況で、「貴船」の親族から後添えを差し出されてもこれを断って、「貴船」を出て、実の姉の嫁ぎ先である安蒜忠左衛門家の財政担当になります。当時の安蒜家は当主(実姉の夫)を亡くして数百人に及ぶ使用人と小作人の管理に手を焼き、土地争いも多数抱えていました。
着任すると1-2年でこれらをことごとく整理して正常化し、安蒜忠左衛門家のお礼返しもあって、近くに数十町歩の土地を得て近代的な農業に乗り出します。養豚・養鶏も取り入れ、肥料の自給体制を整えて、東京に野菜を供給する換金農業を大規模に展開し(我が家には、当時の農業大臣から祖父がいただいた賞状が残されていました。「奈良県から初めて関東の地にスイカを移植して結実させ天皇と大臣に献上した」ようです)、たちまち大金持ちとなります。松戸の戸定邸にいた「水戸様」に収穫物を献上に上がるのを無類の喜びにしていたそうです。
一方、大酒のみで体を壊してしまいますが、本人が体を壊したころ飯箸本家の跡取りであった長男が病気で亡くなってしまいます。子供がいなかったので、祖父が跡取りになるべきでした。本人の病気を理由に返答を先延ばししているうちに数年後本人もなくなります。その後、その息子(私の父)が成人するのを待って相続会議が開かれる段取りでしたが、相続会議に当人が出席できないというハプニングが起きます。呼び出しのはがきが父の手元に届かなかったのです。父は長くこれを謀略と捉えていましたが、真実は不明です。相続会議では、「跡継ぎがいないので、、、」外戚に当たる中規模商社のご当主が土地建物を譲り受ける代わりに後始末を行うという金銭決着がはかられて本家の消滅が決められました。この家の末っ子が名字を変えて「飯箸」を名乗り、その後継者が自分が本家と語ることもあり、飯箸一族が心に思う本家(私の家)とは齟齬が生じています。
父は、理屈では「親族会議で本家の解消を決めたのだから、飯箸には本家も分家もない。もはやだれも水戸徳川家への献上事をしていないし、しなくてよい」と言いつつ、悔しい思いはなくなるまで続いていたように思います。
父は商人を嫌い、早くして逝った父(私の祖父)をいささか恨んでいたようですが、父から伝えられる祖父の「商人道」がかすかに私の脳裏にこびりついているようです。

前2つの記事は、ややもすればないがしろにしてきた「商敵」の正体を取り上げて、勝ち抜くことを呼びかけるものでした。
 「人食い企業」との付き合い方@その1: 相手から断るようにする--社長の条件(44)
 「人食い企業」との付き合い方@その2: 波に向かって直角に舵を切れ--社長の条件(45)
私が無意識によりどころにしてきた(らしい)「商人道」の寄ってきた由来をここでは書きました。これからは、意識して、この商人道を超える「グローバル商人道」に邁進しなければならないと、残り少なくなった命ではありますが、あらためて思うところです。

△次の記事: 社長の条件(47)
(準備中)
▽前の記事: 社長の条件(45)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/12/2--45-0332.html

琵琶


(補1)「鐘の声 ブログ」はリンクフリーです。ただし、「鐘の声 ブログ」の記事の一部または全部を引用または翻案して、公的に発言または発表される場合は、事前にメール等でお知らせください。[→連絡先]
(補2)この記事が含まれるシリーズの記事の一覧は下記(別サイト)のとおりです。
  社長の条件シリーズの記事一覧 (GO!)
(補3)ブログ「鐘の声」には、10個ほどのシリーズとシリーズ以外の一般記事があります。シリーズの全体構成やシリーズ別の記事一覧は下記(別サイト)にあります。
  ☆「鐘の声」の全体構成(「鐘の声 ブログ」記事マップ)☆ (GO!)

「人食い企業」との付き合い方@その2: 波に向かって直角に舵を切れ--社長の条件(45)

2017/12/03
「人食い企業」との付き合い方@その2: 波に向かって直角に舵を切れ--社長の条件(45)

1. 悪い客について、再考。振り返ると悪い客ばかり、そんなぁ~~。
前の記事では次のようなことを書いた。
 ①支払う約束を守らずにお金を払わない客
 ②ただで教えてくれと言って技術者を長時間拘束する客
 ③初回だからただにしてくれ、または半額にしてくれという客(経験上、2回目以降もまともな支払いをすることはない)
 ④別の案件で利益を保証するから今回はただまたは半額にしてくれという客(経験上、そんな別の案件が出てきたことはない)
 ⑤この仕事をやってくれよ、やってくれたら成果報酬を払うからさと言う客(経験上、仕事が完成すると理不尽な難癖をつけて支払いに応ずることはない)
 ⑥技術者の引き抜きにばかり熱心な客
 ⑦乗っ取り工作を仕掛ける客
 ⑧自社の負債を当社に転嫁しようとする客
  ・・・
悪い客の手口には枚挙にいとまがない。
実際、悪い客は意識的に切らないとどんどん溜まってゆく。悪貨は良貨を駆逐するのである。
中小零細企業もないとは言えないまでも、多くは上場企業かその子会社だった。

一つ前の記事では「悪い顧客は単純に切る」ではなく、「相手から断らせるようにしろ」という話を書いた。
これは、「悪い客は少数派である」ことを前提にしているのだが、実は、どうやら周囲はもっときな臭い。
今は、「相手から断らせるようにしろ」だけでは済まない事態を迎えていることを認めなければならない。
時代はとうの昔に変わっていて、実は見かけ上このような「悪い客」のほうがほとんどになっていることに気づかされる。

いや、「悪い客」になったのではなく、多くの客が上記の①②③、、、のようなテクニックを使うようになってきているのである。心底悪気があってやってくるのは少数だろうが、大多数の客がこれらのテクニックを百も承知の上で使うようになっているのである。テクニックなので、本人に「悪気」はない。彼らは「こんな手口に引っかかる奴が悪い」と考えているに違いない。詐欺的ビジネスと言ってしまえばその通りなのだが、「詐欺」そのものではない。違法でない限り、まさしく「引っかかったほうが悪い」のである。
特に「⑥技術者の引き抜きにばかり熱心な客」「⑦乗っ取り工作を仕掛ける客」「⑧自社の負債を当社に転嫁しようとする客」などは、組織的で手が込んでいて芸術的な手さばきを見せるのである。
あまりの鮮やかさに被害に遭った本人も何が起こったのかがわかっていないことが多い。いろいろな会社経営者から助けてほしいと呼ばれるとたいていは後の祭りなのだ。
「儲けは折半」「徳を与えて得を取れ」などの日本古来の商人道が通じない世界になっているのである。

2. 波に向かって直角に舵を切れ
たいていの場合、大海で波にのまれたら生きてゆけないが、経済活動でも同じである。経済活動という海に漕ぎ出た以上は、その波の上を行かなければ生きてゆけない。
社長たるものは、今来ている波と次に来る波を見極めて、それぞれの波に直角に立ち向かうように会社という船の舵を切り、波を乗り越えなければ難破してしまう。ただ逃げようとしても次から次に押し寄せる波からは逃れようがない。下手に逃げようとすれば横波を受けて船は転覆してしまう。
波が嫌いだと言っていたら、経済活動はできない。

3. 友人Aさんの受難
友人Aさんは、某システムハウスの経営者である。彼は、友人たちと一緒に会社を作ったのだが、裏切られてひどい目に遭ったそうである。
----------------------------
(友人AさんはAさんの)友人の会社の営業に同行して数ヶ月後にその営業先から直接連絡がありまして「Aさんが開発しているのに何故動かないのか?お金を早く支払えと言われたので10日前に支払ったのに納品されない。あなたの顧問先の会社に連絡しても相手にしてくれない」と?これは青天の霹靂でした。
----------------------------
つまり、Aさんはその友人の取り込み詐欺の片棒を担がせられたようだ。
Aさんによると、その友人は、警官と小学校の先生の子供だったが、「自分がより良く生きる為に他を犠牲にするのは必要だ」とある時期話した事があるそうだ。
「自分がより良く生きる為に他を犠牲にするのは必要だと・・・」これが極端になると反社会性人格障害といわれることになるが、かつて日本では目立つことのない処世術だ。しかし、近年の日本では××義氏や××××ンに代表される処世術として隆盛を見せるようになっている。

4. 日本の商人道
日本の伝統においては、安土桃山時代に始まる近世商業資本の成立以降、商売人は「徳(利益)は与えていただくもの」「利益は折半(取引相手にも利益の半分は渡すものである)」「利益はぼちぼち(自分の取り分はそこそこにする)」「贅沢と華美なるを慎め」・・・という考えが主流だった。石山本願寺(のちの大阪城)の寺内町に市をなし財をなした商人たちが家訓として伝えたものが日本の「商人道」の始まりとされている。のちのビューリタニズムと酷似しており、日本からの伝播かといわれることもある。実は、ビューリタニズムもイギリスにおける近世商業資本の成立に伴うものですから、歴史的な必然性がそこにはあるものと思われる。地上の別々の場所で別々に生まれてなおよく似ているというのは興味深い。ビューリタニズムにはカナリア諸島で活躍していた海洋商人(バスク民族の祖先)の影響の痕跡も感じる。当時のカナリア諸島の民は、日本人などの源流の源流になった南セムの末裔であり、ヨーロッパからインドに広がるインドヨーロッパアーリアンとは異なる遺伝子を持っている。
日本の商人道は、本願寺が信長よって滅ぼされると近江商人、滋賀商人などに細々と受け継がれてゆくが、江戸の元禄バブルのころはいったん影を潜める。
元禄景気が終わると鎖国が強化され海外貿易ができなくなった。日本の商人が活躍できるのは国内市場だけになり、商人同士の無用な争いは商人社会の滅亡につながりかねないことが自明となった。そのため、秩序ある商業活動が見直され、近江商人らを迂回して伝えられた商人道が見直され、各商家ごとの家訓が次々に構築され、「徳(利益)は与えていただくもの」「利益は折半(取引相手にも利益の半分は渡すものである)」「利益はぼちぼち(自分の取り分はそこそこにする)」「贅沢と華美なるを慎め」・・・が再び隆盛になる。「家族仲良く」「健康第一」「火の用心」などが加わったのはこの時期と思われる。江戸中期から後期にかけては儒教や朱子学の影響もみられるようになった。
元禄後の江戸の商人道は、主眼は同一商圏内の客や商人同士が利益を分け合って生きてゆくための自己防衛的な処世術だったので、同一商圏外に対しては排外的な様相も帯びていた。明治期に来日したイギリス商人などは日本の商人に対しては激しい侮蔑の言葉(日本の商人は武士の気高さに比べて、外国人には不当な取引を持ち掛ける卑しい連中、、、)を残してもいる。
ピューリタニズムはキリスト教と合体して新派をなしたが、日本の商人道が仏教(浄土真宗=仏教の一分派)と親密に結びついて成立しているのにもかかわらず仏教分派を形成しなかったのは当該商人たちのよりどころであった石山本願寺が信長によって滅ぼされてしまったことに原因がありそうである。

5. 勝ち続けた民族と負け続けた民族
自分がより良く生きる為に他を犠牲にするのは必要」は、モンゴロイドに比べればアーリアン(と漢民族)の性質というべきである。海外に出る日本企業が最初に直面するのは海外企業の「裏をかく技術」「人を食う技術」との格闘である。東芝がWHにしてやられたり、日産子会社のカルソニックが1500億ものの借財を負わせられたりするのは、彼らの性格そのものである。
日本で、大々的に「裏をかく技術」「人を食う技術」を駆使して大資本にのし上がったのは孫××氏であるが、その門前の小僧だったホ××××が孫××さんほど巧みではなく言動の稚拙さゆえに有名になった。
しかし、よく見れば、戦後の経済復興を通じて「裏をかく技術」「人を食う技術」は海外貿易をおこなう日本の大手企業にもまたまだとは言え、ある程度は浸透してきているようである。私が「悪い客」として分類したのは「裏をかく技術」「人を食う技術」にたけた客ということにもなる。「裏をかく技術」「人を食う技術」を駆使する中小零細企業は多くない。
人類史的に見るとユーラシア大陸ではモンゴロイドが北方と西域でアーリアンに「裏をかく技術」「人を食う技術」と残忍な武力で一方的に負け続けた時代を通じて、そのフロンティアでは一部の混血が進み、文化的影響も受けて新モンゴロイド(新モンゴロイド誕生の時期は大きく見ると3波あり、最後の波で誕生したものが漢民族=nearly=で前第1波、第2波で現れて散り散りになっていた新モンゴロイドの各部族がこれに合流する)が生まれて、「裏をかく技術」「人を食う技術」を駆使できる大漢民族が成立する。これらの技術に疎い古モンゴロイド(長江文明を作ったミァオ族=猫族)は第二派のあたりで負けてしまうのである。
南セムの流れをくむコーカソイド、バスク族やベルベル人、ドラヴィダ族などはいずれも北セム系のアーリアンに負けてしまう。日本人やオーストロネシア人、アボリジニ、アメリカインディアンなどの古モンゴロイドも源流は南セムなので、負けてしまう側にいるのである。

6. 彼らは違法か
彼らを罵倒するだけではこれからの日本人は生きてゆけない。
彼らが作った法律もこれを模倣した日本の法律も彼らのやり方を違法とするものはない。違法でなければ理屈で止めるわけにはゆかない。彼らは違法ではないのだから。
彼らのやり方はこうだ。まず、ルールを認めさせて我々が納得したら、その通りに実行して、それに従わない君ら(我々)が悪いというのである。ルールは抽象的で、いろいろな場合を含んでいるだろう。まさか、こんなことはしないだろうと思うのは間違いである。まさかと思うことを必ずやってくるのである。まさかと思われることがあったらあらかじめ出口をふさいでおくべきである。ルールに条件を付けて「・・・の場合は契約を解除する」などの付帯事項をつけるべきである。この付帯事項の提案を躊躇してはならない。言い出す前に押し切ろうとするだろうから、「弁護士に相談してから回答する」などと間合いを確保することが大事である。
彼らのやることにアンテナを建て、先回りしてその手順を見抜き、「まさかのこと」を予防するには、相当な労力とひらめきと決断力と瞬発力が必要である。彼らは大学院MBAコースなどで専門的に「裏をかく技術」「人を食う技術」を勉強してくるのである。
日本の中にも「裏をかく技術」「人を食う技術」(MBA流)を駆使する "新モンゴロイド" が生まれている。アメリカに負けて、アメリカの文化を受け入れたためである。日本の "新モンゴロイド" にも我々古モンゴロイドは負けないようにしなければならないのである。
私は自分の会社の経営を、言ってみれば、日本の伝統文化の「商人道」で押し通してきた(*)が、これからは、「裏をかく技術」「人を食う技術」に対抗しうる(乗り越えられる)精神と技術を確立しなければなるまい。まことに気が重いことだ。何よりも、年齢を思うと私にはもう無理かもしれない。
私に続く、皆さんは、気力体力のある限り、「裏をかく技術」「人を食う技術」の荒波が押し寄せてもこれに耐え、波に向かって直角に切り込んでこれを乗り越える力を蓄えてほしい。
それができる人だけがこれからの社長にふさわしいだろう。

(*)私の個人的事情については、別の記事として掲載する。

△次の記事: 社長の条件(46)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/12/--46-db1b.html
▽前の記事: 社長の条件(44)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/12/--43-425e.html

琵琶


(補1)「鐘の声 ブログ」はリンクフリーです。ただし、「鐘の声 ブログ」の記事の一部または全部を引用または翻案して、公的に発言または発表される場合は、事前にメール等でお知らせください。[→連絡先]
(補2)この記事が含まれるシリーズの記事の一覧は下記(別サイト)のとおりです。
  社長の条件シリーズの記事一覧 (GO!)
(補3)ブログ「鐘の声」には、10個ほどのシリーズとシリーズ以外の一般記事があります。シリーズの全体構成やシリーズ別の記事一覧は下記(別サイト)にあります。
  ☆「鐘の声」の全体構成(「鐘の声 ブログ」記事マップ)☆ (GO!)

「人食い企業」との付き合い方@その1: 相手から断るようにする--社長の条件(44)

2017/12/02
「人食い企業」との付き合い方@その1: 相手から断るようにする--社長の条件(44)

1. 悪い客、あれこれ
少し反省もこめて、今回の記事は書くことにする。
私以外の営業担当者がいたころ、営業担当者にいつも飛ばしていた檄は
「お客様には徹底的に親切丁寧に。悪い客は悪いほうから順次切れ、良いお客様は決して逃がすな。新規客を2社確保したら、悪い客1社は切れ」
だった。
当時は100社から200社程度の仕事を抱えていたので、その中の5%ほどの客は常に悪い客の中でもかなり悪い客だった。この顧客は社員の心を腐らせ、経営をひどく圧迫していた。
実際、悪い客は意識的に切らないとどんどん溜まってゆく。悪貨は良貨を駆逐するのである。
 ①支払う約束を守らずにお金を払わない客
 ②ただで教えてくれと言って技術者を長時間拘束する客
 ③初回だからただにしてくれ、または半額にしてくれという客(経験上、2回目以降もまともな支払いをすることはない)
 ④別の案件で利益を保証するから今回はただまたは半額にしてくれという客(経験上、そんな別の案件が出てきたことはない)
 ⑤この仕事をやってくれよ、やってくれたら成果報酬を払うからさと言う客(経験上、仕事が完成すると理不尽な難癖をつけて支払いに応ずることはない)
 ⑥技術者の引き抜きにばかり熱心な客
 ⑦乗っ取り工作を仕掛ける客
 ⑧自社の負債を当社に転嫁しようとする客
  ・・・
悪い客の手口には枚挙にいとまがない。
中小零細企業もないとは言えないまでも、多くは上場企業かその子会社だった。
「悪い客」が減ると社員の負担が改善され、経営も救われる。
あくまでも丁寧に、「御社のような立派な会社ならば、仕事を請ける会社はたくさんいらっしゃるでしょうから、私たちはご遠慮させていただきます」とお断りする。
この方針は大成功で、かなりの悪い客を撃退することに成功した。一時的には経営も悪化を免れ、追い詰められるばかりの担当技術者も営業担当も安どの胸を下した。

2. 悪貨駆逐の副作用
この方針は大成功だったのだが、じわじわと顧客が減る原因にもなっていった。
顧客たちは、「取引相手に損をさせないと自分たちが得をした気にならない」という、私から見ればきわめて不思議な性格を持っていた。
私も私の部下の営業マンたちも、正直なので、原価ギリギリがどのあたりにあるのかを明示して、顧客と交渉に臨もうとしていた。顧客は原価割れにならない限り満足しなかった。私たちの仕事の成果が顧客にもたらす利益の一部をいただければありがたいという我々の願いは聞き入れられることが少なかった。
「悪い客」をお断りすると同系列の企業には、警戒感が広がり、1社断ると3-4社が顧客リストから姿を消すありさまだった。
良い方針ではあったのだが、他方よくない結果も伴っていたのである。

3. ITスポットサービスの成功
ところで、ある時期、「②ただで教えてくれと言って技術者を長時間拘束する客」が立て続けに現れて、正常業務が著しく阻害される事態となったことがある。大学の教員が数名ととある民間企業の一員だった。社員らも渋々彼らにセキュリティソフトの使い方を教えたりマシン移行のお手伝いをする羽目になった。とある民間企業の一員は電子カメラの使い方や撮影方法(スタジオの設営方法)などの相談に現れていた。そのうち、スタジオの設営方法は聞いているだけではわからないから、私の会社の事務所で実際に設営をやって見せてくれ、設営だけではなくて(「ちょこちょこっとなのだから」という理由で)数千点の写真撮影も続けてやらせてくれ(実際はやってくれ)というように要求がエスカレートしていっていた。図々しいにもほどがあるというものだが、担当者の手に負えなくなったので、対応は私の元にゆだねられることになった。
私は「お知らせ、この度、お客様のためのITスポットサービスを開始することにいたしました。技術者の拘束、事務所の占有使用も安価にご提供いたします」というあいさつ文を作成して、営業マンに持たせて客先に配って歩いてもらった。ホームページにも掲載した。
このサービスは、好感をもって広く迎えられることになった。ユニークで良いサービスとしてマスコミにも取り上げられたことがある。
現在もこのサービスは継続している。
http://www.sciencehouse.jp/works/service.html
価格を見ればわかる通り、きわめて安価である。出張料金は、電気屋さんの出張サービスの半額程度に設定されているので、歓迎されたのである。
しかし、「②ただで教えてくれと言って技術者を長時間拘束する客」はこれで青くなり、たかり大学教員は近寄らなくなり、件の民間企業の一員は血相を変えて抗議に現れた。「ちょこちょこっとなら、大変お安く済みますよ」というのが私からの説明でした。対するその客は「まとめて3万円」と主張するので、「ちょこちょこっとなら3万円かからないかもしれないので、時間の従量制で対応させてください。私はちょっちょこっとでは済まないかもしれないと思っていますから、このお値段では受けられません。やってみなければ分かりませんから、実際にかかった時間でカウントしましょう」と言い張って、譲りませんでした。商取引は条件と値決めですから、あの手この手で自分に有利にしようと言葉巧みなお誘いがあって当然で、それを丁重に当方の理由で主張を曲げないのはまことに正常なことです。最後はご自身から辞めると言ってこの無理難題は終結した。
これで営業妨害事案は解消し、世間からの評判も勝ち得るという一石二鳥を勝ち取ったことになる。
ITスポットサービスのその後は、今でも評判は悪くありません。時々、「システムが固まってしまったから助けて」「データが取り出せなくなった」「ネットがつながらない」「メールがおかしくなった」などで、お客様からはしばしばお電話やメールをいただいてスタッフが駆けつけて感謝されている。

4. 何か良くて、何が悪いか
2項のように単に断るのと、3項のように値付けしてしまうのとでは、何が違うのか。

実は、最近(11月22日)、ツイナビに、面白い記事が出ていて、話題になっていた。
https://twinavi.jp/topics/tidbits/5a154d5a-cde0-4301-ad60-09c4ac133a21?ref=tweet
----------------------------
フリーランスで荒稼ぎしてる先輩「やりたくない仕事は断るな、次の仕事が来なくなる。そのかわり…
ツイッター 2017年11月22日 19時08分
@rootport
フリーランスで荒稼ぎしている先輩が「やりたくない仕事は断るな、次の仕事が来なくなる。高い金額を提示して向こうに断らさせろ」って言ってた。
@rootport
返信先: @rootportさん
「でも、高い金額を提示したのにクライアントが断ってくれなかったらどうするの?」
「やるんだよ」
「やりたくない仕事なのに?」
「もちろんです、プロですから」
@rootport
「クライアントがめちゃくちゃな〆切設定してくるよう!今日中に再提出とか無理だよう!」
「そんな暴君顧客にお悩みのあなた!特急料金を設定しておこう!!」
「とっきゅう…?」
「たとえば〆切までの1週間に満たない1日につき●千円くださいと事前に決めておくんだ!」
「効果は?」
「てきめん」
@rootport
返信先: @rootportさん
「『〆切がキツいと対応できませんからね』とあらかじめ言っておいても、『そこを何とか!』とねじ込まれてしまう」
「あるある」
「不思議なもので『〆切がキツくても対応しますがかなり高くつきますよ?』と言っておくほうが、炎上への抑止力があるんだ!!」
「へー」
「草の根行動経済学なのだ」
@rootport
返信先: @rootportさん
「ポイントは、クライアントが『払ったら大損だなあ……』と感じるくらい高めの特急料金にしておくこと」
「安いとどうなるの?」
「カネさえ払えばいくらでもキツいスケジュールを振っていいと判断される」
「うわぁ…」
「行動経済学でいうモラルハザードってやつである」
@rootport
返信先: @rootportさん
「高額の特急料金をクライアントが認めてくれるかな…?」
「大丈夫だ!スケジュール設定の時点ではみんな上手くいくと信じてる。特急料金なんて発生しないと思い込んでいる」
「ホントに?」
「むしろ、そこで言い淀む顧客なら要注意。スケジュール管理が甘くて、炎上を頻発させている可能性が高い」
----------------------------
まさしくこれだったのである。
こちらから断ると2度と仕事は頼まれないが、相手から断るように仕向けると被害は最小になるということである。
ITスポットサービスは、ただ乗りしたくてのしかかってくるお調子者をはねのけることに成功して、なお、良いサービスという評判も得たヒット作だった。
社長はこんなことも考えて対応しなければならないのだ。いつも成功するとは限らない。この例では成功したということである。やってみて、うまくゆかなければ考え直す、の連続で、正しい答えにたどり着くのが商い(あきずにやるから商いなのだそうだ)というものである。

本日の記事は、この問題にはもっと奥の深い重い問題があることに触れていない。
奥の深い重い問題については、次回に譲る。

△次の記事: 社長の条件(45)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/12/2--45-0332.html
▽前の記事: 社長の条件(43)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/12/--43-fa5a.html

琵琶


(補1)「鐘の声 ブログ」はリンクフリーです。ただし、「鐘の声 ブログ」の記事の一部または全部を引用または翻案して、公的に発言または発表される場合は、事前にメール等でお知らせください。[→連絡先]
(補2)この記事が含まれるシリーズの記事の一覧は下記(別サイト)のとおりです。
  社長の条件シリーズの記事一覧 (GO!)
(補3)ブログ「鐘の声」には、10個ほどのシリーズとシリーズ以外の一般記事があります。シリーズの全体構成やシリーズ別の記事一覧は下記(別サイト)にあります。
  ☆「鐘の声」の全体構成(「鐘の声 ブログ」記事マップ)☆ (GO!)

兼務社長時代を終えて--社長の条件(43)

2017/12/02
兼務社長時代を終えて--社長の条件(43)

一つ前の記事「突然ですが、兼務社長になりました--社長の条件(42)」が2010年2月24日なので、あれから7年と9か月以上が経過している。
雇われ社長となった会社では、社長とは思えない薄給のまま命がけの奮戦努力し、最悪事態からの経営改善は進んだが、自分の会社はその人柱となりボロボロになり救われなかったという猛省がある。
兼務社長時代の思い出については、おいおい書くことにしよう。

今、私は、元の会社に戻って、その再建に取り組みながら、各種のボランティア団体のお世話がかりをしている。
大学の職は3月で70歳定年を迎えて、すべての大学から離れた。
また、我が家族が、今年5月、我が家の土地にグループホームを建設し、知的障がい者支援団体(社会福祉団体)に賃貸しする事業も始めた。家族の経営も陰に陽に支援することとなったが、ボランティアである。

変化は加齢とともに過酷に進んでいる。
これも運命である。自社の再建がなれば、次の社長へとバトンタッチすることには変わりない。
自分の残された時間との競争である。

△次の記事: 社長の条件(44)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/12/--43-425e.html
▽前の記事: 社長の条件(42)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2010/02/--42-3951.html

琵琶


(補1)「鐘の声 ブログ」はリンクフリーです。ただし、「鐘の声 ブログ」の記事の一部または全部を引用または翻案して、公的に発言または発表される場合は、事前にメール等でお知らせください。[→連絡先]
(補2)この記事が含まれるシリーズの記事の一覧は下記(別サイト)のとおりです。
  社長の条件シリーズの記事一覧 (GO!)
(補3)ブログ「鐘の声」には、10個ほどのシリーズとシリーズ以外の一般記事があります。シリーズの全体構成やシリーズ別の記事一覧は下記(別サイト)にあります。
  ☆「鐘の声」の全体構成(「鐘の声 ブログ」記事マップ)☆ (GO!)

平安の 女御(にょご)のごとくや 白花(しろばな)の 水仙の花--人生に詩歌あり(31)

2017/12/01
平安の 女御(にょご)のごとくや 白花(しろばな)の 水仙の花--人生に詩歌あり(31)

わが庭に、この時期には珍しく水仙の花を見つけました。早朝に雨が降ったようで、花には水滴がついています。

白花水仙(しろばなすいせん)全形・・・クリックすると拡大します。
Img_0648_2

白花水仙(しろばなすいせん)拡大・・・クリックすると拡大します。
Img_0647

この庭にはもう咲くことがないだろうと長くあきらめていた白い水仙です。
飾ることなく汚れなく天使のように優しい、小さな水仙の花です。
二十数年ぶりに見かけて感激しました。
また帰ってきたんだね。お帰り。
素朴で清らかでどこか芯がしっかりしているように見えるお花です。

ペーパーホワイト(和名 白花水仙=しろばなすいせん)といわれる種類で、平安時代に渡来したものということです。花の時期は12月~1月。他の水仙よりも早く咲きます。

平安の 昔しのばる 白花(しろばな)の 早足に咲く 重き雪の前に(琵琶)

平安の 女御(にょご)のごとくや 白花(しろばな)の 水仙の花 いだきたきなり (琵琶)

琵琶

△次の記事: 人生に詩歌あり(32)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2018/01/--32-f2cc.html
▽前の記事: 人生に詩歌あり(30)
http://shyosei.cocolog-nifty.com/shyoseilog/2017/11/--30-6c03.html


(補1)「鐘の声 ブログ」はリンクフリーです。ただし、「鐘の声 ブログ」の記事の一部または全部を引用または翻案して、公的に発言または発表される場合は、事前にメール等でお知らせください。[→連絡先]
(補2)この記事が含まれるシリーズの記事の一覧は下記(別サイト)のとおりです。
  人生に詩歌ありシリーズの記事一覧 (GO!)
(補3)ブログ「鐘の声」には、10個ほどのシリーズとシリーズ以外の一般記事があります。シリーズの全体構成やシリーズ別の記事一覧は下記(別サイト)にあります。
  ☆「鐘の声」の全体構成(「鐘の声 ブログ」記事マップ)☆ (GO!)

« 2017年11月 | トップページ | 2018年1月 »